No.52




はぁはぁ、とお互いの荒い呼吸の音が静かな室内に響く。
寒いはずの海底の一室で、湿気の籠った熱気が室内を満たしているように思えた。

ぎしりとスプリングの音を立てて、キャプテンがぐったりと力の抜けた私の身体を抱きながら横たわった。


「……やっとだな。」


キャプテンが熱くなった私の頬に掌を当てる。


「……やっと?」

「やっとお前を手に入れた。」


汗でこめかみに張り付いている私の髪をどかし、頬を撫でた。


「ずっと、お前にキスしたくて、触れたくて、仕方がなかったんだよ。」


にやりと笑って言うキャプテンに、少し口を尖らせた。


「前から、キャプテンは触るしキスするじゃないですか。」

「あんなんキスのうちに入らねえだろ?」


尖らせた私の唇にちゅ、と軽いキスをした。
ちゅ、ちゅ、と小鳥が啄むようなキスを、唇の端に、鼻の頭に、頬に、目の横に、ちょんちょんと落としていく。
可愛いキスがくすぐったくてクスクスと笑うと、微笑んだキャプテンが私の耳に口を近づけた。


「愛してる……。」


囁かれた言葉に思わず笑うのを止めて、彼の顔を見る。
目が合うとどちらともなく、引き寄せられるかのように唇を合わせ、何回か角度を変えながらお互いの唇を求めた。


「おかえり。」


お互いの息が混じり合う距離でキャプテンが呟いた。


「…………ただいま。……キャプテン。」


私も呟きながらキャプテンの首に手を掛ける。
にやりと笑って私の下唇を舐めたキャプテンの舌が私の唇を割って入り、再度深く口付けた。


すっかり海に沈んだ潜水艦の丸い窓の外は、

相変わらず、一瞬も同じ景色を繰り返さない美しい青の世界が広がっていた。


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