No.04




−サァァァー…………


シャワーの水音で目が覚めた。
ベッドから出てみると、ソファーテーブルの上に封が開いたワインボトルが置いてある。
近くにグラスが見当たらないので、ここで飲んだのではないのだろう。持ち帰ってきたのだろうか。

珍しい。
彼が数あるアルコールの中でワインを選ぶ事も、酒場からボトルを持ち帰ることもだ。
ワインボトルを持ち上げ、ラベルのブドウ畑の絵を眺める。


「キャア!!」


急に首筋に冷たいものが当たって飛び上がる。


「お前はこっちにしておけ。」


驚いて振り向くと、水のペットボトルを持ったキャプテンが立っていた。
悪戯そうな笑みを浮かべる彼に笑いながらペットボトルを受け取った。


「おかえりなさい。」

「ああ。ただいま。」


額に軽くキスをして、私の手からワインボトルを受け取った彼は、それを開けることなく酒の棚に仕舞った。


「飲まないんですか?」

「ああ……今日はいい。」


私の肩を抱いてソファーに座った彼は、私の手から水を取り上げ一気に3分の2程を飲んだ。
ずいぶん軽くなったペットボトルをまた私に渡し、ずる……とずり下がって私の肩に顔を寄せ、目を瞑った。


「あいつ。見てきた。」

「……あいつ?」

「お前の気に入りの少年だ。」


やっと、誰のことを言ってるのか気づいた。


「ああ!昼間の……。別にお気に入りってわけじゃ……。」

「なんだ。違うのか。てっきり若い奴が好みなのかと。」

「若すぎますよ!というか、キャプテンも……私も若いつもりでいるんですが。」

「へえ。」


キャプテンが目を閉じたままククク。と笑った。


「……で、見てきて……どうでした?」

「なんだ。気になるのか?……やっぱ気に入ってんじゃねえか。」

「もう……。何言ってんですか……。じゃあ、もういいです。」

「親の酒場で働いてた。」

「……へえ。」

「あいつは……だめだな。若すぎる。」

「……確かに若いけど……でも、もう12歳って……。」

「ハル。」


目を閉じたまま話していたキャプテンが少し上目遣いに目を開け、彼の顔を覗き込んでる私と目を合わせた。


「あいつは、お前の弟とは違えよ。」

「……そんなつもりじゃ。」

「それに、海賊になるのと海兵になるのじゃ違いすぎる。」

「……だから……ヴィスナーと重ねてるわけじゃ……」

「じゃあ、なんで“もう12歳”って言える?お前は弟の例があるからだろ?世間じゃ立派にまだ子供だ。」


返す言葉をなくし、彼を見つめる。
キャプテンが、一瞬眉を歪めてから手を伸ばして私の首筋に顔を埋めた。


「今日のお前は、昼からその顔ばっかりだな。」


顔を押し付けながら喋るのでキャプテンの声が少しくぐもって聞き取りにくい。


「私、そんなに変な顔してます?」

「ああ。俺が一番気に入らねえのは、あのガキの為にお前が泣きそうな顔をすることだ。」


そう言って起き上がり、啄む様なキスを降らし、お腹をくすぐるキャプテンに、大袈裟に笑い転げてみせた。

……私は、あの子は此処のクルーになる人だと、見た瞬間思った。
何の根拠も無い、ただの直感だけど……。

私はキャプテンの恋人という立場をなくしたら、この船では一番下っ端のクルーでしかない。
これ以上首や口を突っ込んで良い立場ではないのだ。


何もできない自分が歯がゆい。


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