No.09-side:BOY
正直、ハートの海賊団に入ることは、諦めようと思う。
キャプテンローに言われた事は、おれには覚悟出来ないことだった。
親父を苦しませるのはもちろん嫌だが、おれが海賊になると言い出した時に、もしかして一切の悲しみを見せないんじゃないか……。
その考えが頭から離れず、親父に海賊になりたいなどと口に出す勇気を持てなかった。
親父にしてみたら、もしかしたら、おれは母さんの面影を映す道具。あるいは、ただの酒場の働き手。それくらいなのかもしれない。
でもおれは、親父に引き取られてから、血のつながりも無い男を親父と呼び、親父と思い、過ごしてきた。
憧れのトラファルガーロー。
彼の一団に入るチャンスはおそらくこれが、最初で最後だ。
4日後、彼の船が出港した時は、きっとこれ以上ないほどの後悔の念に駆られるかもしれない。
でも、おれには、親父が俺をどう思っているかを知る事の方が、こわい。
「おい、カリタス。角のニーナのトコ行って、頼んでた野菜貰ってきてくれ。」
「はいよ。」
店の買い出し用の財布を受け取り、店を出る。
海賊なんて夢物語。
……そう、これがおれの日常なんだ。
それで良いんだろうと思う。
「ニーナ!」
「あら、カリタス。お疲れ様!そこの袋よ。」
「ありがとう。いくら?」
「ちょっと待って。今伝票もって来るわ。」
「うん。」
ニーナがレジカウンターへ伝票を取りに行った。
袋を開けて、中を確認する。
「おまたせ。そのトマト、おまけよ。少し傷があるの。」
「有難う。……じゃあ、はい。これで。」
ニーナが伝票をおれに渡し、袋の一番上に乗っていたトマトを指差した。
礼を言い、伝票の金額をみて、金を出す。
ニーナが、お釣りのコインをおれの手に返した。
「最近、仕入れが多いわね。お店流行ってるの?」
「いや、最近海賊が多いからね。今だけだよ。」
金を仕舞い、野菜の入った袋を手にすると、ニーナが袋を見ながら聞いてきた。
それに返すとニーナが心配そうな顔をする。
「そうだわ、海賊よ。気をつけて。今、性質の悪いのが来てるみたいなの。
こないだも酒屋のボブが、かなり珍しいお酒を注文されたんだけど、相当脅されたみたい。
運良くそのお酒は、ノースに居た親戚が探して送ってくれたらしんだけどね。」
「へえ……。気をつけるよ。」
どこかで聞いたような話だ。と一瞬思うが、深く考えず、ニーナに挨拶をして店を後にした。
−−
「3800ベリーです。……あ、今お釣りを。」
「いや、いいよ。チップだ。」
「あ、ありがとうございます。またよろしくどうぞ。」
「おい、坊主。ビールお代わり持ってきてくれ。」
「はい!ただいま!」
開店して、かなり時間が経った。
ハートの海賊団は来ていない。
昨日と一昨日二日連続で来たのだし、今日は違う店に行ったのかもしれない。
少し残念と思いながらも、ほっとしている気持ちのほうが大きかった。
−カランカラン
「いらっしゃいませ。」
「おい。とりあえず酒持ってこい。一番上等な奴だ。」
「はっ、はい!!」
ガタイが大きい男たちが数人入ってきた。
乱暴な物言い。髭を生やし、趣味の悪い光物を身につけ、お世辞にも綺麗とは言い難い格好をしている。
一瞬にして海賊と分かる。
……キャプテン・ローとはえらい違いだ……。
しかし、これも客。
「よし。」
小さく呟き、気合を入れて、海賊の一団へ酒を届けにカウンターを出た。
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