No.11-side:BOY




飛び込むように親父の酒場に入る。

あの海賊達以外の客は帰ったようだ。
親父は、今夜が悪夢になると諦めたのか、カウンターの中で座り、俯いている。


「おい、坊主。言った酒はあったか。」

「まさか、手ぶらで帰ってきたわけじゃねえよなぁ?」


おれを見つけた海賊達が、ガハハハと笑いながら、声を掛けた。
つかつかと、奴等のテーブルに近づき、トン、とテーブルに酒瓶を置く。
無言で置かれた酒を見て、男達が驚いた顔をした。


「……これは……。」

「なんだ!手に入るんじゃねえか!!あの酒屋、ホラ吹きやがったな!!」

「おい、坊主、これはうちのお頭に持っていく酒だ。俺らの酒はどうした。」

「そうだ、俺らも上等な酒出せっつったよな?もちろん、一緒に買ってきたんだろうな?」

「そんな!あんたらが、その酒を買って来いって言ったんじゃないか!!」


思わず叫ぶと「うるせえっ!!」と男の一人が立ち上がった。


「その前に注文してただろうが!!てめえは、飲み屋だろ。注文の品をだせ!!」

「坊主、調子に乗るんじゃねえぞ?俺らはこんな店、今すぐ潰してやる事だってできるんだぜ?」


そう言って、もう一人立ち、他の客が去った後のテーブルを倒した。
乗せられたままだった皿が床に落ちて割れ、派手な音を立てた。


「おいおい、穏やかじゃねえなぁ。」


落ち着いた、低い声が聞こえた。
聞き覚えのある声に驚き入り口を振り返る。


「キャプテン・ロー……。」

「やれやれ、店の中めちゃくちゃじゃねえか。」


キャプテン・ローが眉を顰めて店を見渡す。


「あーあー、あの料理旨いのに、床に投げるとはもったいねえ。」


キャスケットさんが首を振りながら口を開く。


「なんにしろ、食事のマナーがなっていなさすぎるな。」


腕を組んだペンギンさんが、キャスケットさんの言葉に頷きながら続けた。

眉を顰めながら店に入ってきた彼らを見て、海賊達が僅かに焦った顔をした。
が、すぐに表情を戻し、立ち上がる。


「へえー、北の海のハートの海賊団じゃねえか。まさか、こんなシケた所でお目にかかれるとはなぁ。」

「あん……?誰だ?おめえら。」


顎髭の男が声を掛けると、キャプテン・ローが眉を顰めたまま少し首を傾げた。
男が怒りを浮かべ、髑髏の刺青が彫られた腕を向けた。


「このマークを見てもわかんねえか?」

「さぁな。知ってるか?ペンギン。」


眉を上げ、肩を竦めたキャプテン・ローがペンギンさんに振る。
ペンギンさんが、初めて見たというように首を振って返した。


「いいえ。知りませんね。船長の懸賞金が1億2千万ぽっちの海賊なんか。」

「てめえ!!絶対知ってるだろうが!!!」


ペンギンさんの言葉にいきり立った男達が武器を構え、ハートの海賊団に向けた。
キャプテン・ローが、再度やれやれと首を振った。


「だから、野蛮な野郎は嫌なんだ。ここを何処だと思ってる。飲食店は清潔第一だろ?」

「てめえ、何言ってやがる!!」


返した顎鬚の男を見て、キャプテン・ローが不敵に笑い両手を掲げた。
一瞬、店の中が透明な膜に包まれたように見えて、思わず目を擦る。


「仕方ねえな。そんなに言うなら相手してやらねえこともない。……ただ、てめえらの血で汚さねえようにしねえとな。」

「ははは!よく分かってんじゃねえか、トラファルガーロー。そうだ、血を流すのはお前ぇだからな!!」


海賊がキャプテン・ローの言葉に笑い、銃を撃った。
入り口の扉に弾が当たり、ドアベルがカランカランと音を立てて揺れた。


「そう、焦るなよ。……まぁ、気を楽にしてろ。すぐに終わる。」


そう言い、緩やかな動きで長い刀を抜いたキャプテン・ローが空中で刀を振った。
瞬時に体がバラバラになった男達に驚き、腰が抜けそうになる。
慌てて、近くの椅子につかまり支えにしていると、キャプテン・ローが刀を仕舞い、此方を向いた。


「でかい麻袋とかないか?……飯を食う場所で殺すのは気分が悪い。詰めて海に捨ててくる。」


そういって、何事もなかったかのように店の奥へ入り、唯一綺麗な状態だったテーブルの席についた。


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