No.09




ペンギンと名乗った彼は、すごくクールな感じで少しトラファルガー・ローに似ているかもと思った。

そんなクールな雰囲気に似合わず、彼のかぶっている帽子は可愛かった。
耳当てが付いて、頭の天辺には大きなポンポンが付いている。


「帽子……可愛い。」

「……ぶっっ!!」


思わず呟くとキャスケットが吹き出した。


「ペンギンさんはクールな感じなので、帽子が可愛いくらいが丁度いいんでしょうかね。」

「……お前、ほんとに面白いな。」


思ったままのことを言うと、横に座っているトラファルガー・ローは感心したように私を見た。

当のペンギンは横のキャスケットの頭をガンと殴ると、無表情のままカップの中身を啜った。


「帽子が、流行ってるんですね。」


ベポ以外3人とも帽子を被っている状況に気づいて言った。


「別にそういうわけじゃねぇよ」


私の言葉にキャスケットが返す。


「ベポは被らないの?」

「俺?俺の頭に入る帽子なんてないよ。」

「そうねぇ……なら、ニット帽とかは?」

「ニット帽かぁ……うーん。」

「ベポは白熊だぞ。そんな防寒具必要ねぇ」

「あ、そっか。」

「馬鹿か。お前。」


私の提案に本気で悩み始めたベポを見てトラファルガー・ローが口を挟んだ。

確かに、ベポにはニット帽は暑すぎるかもしれない。
ニットなら伸びるからピッタリとおもったんだけどな。

自分の帽子から派生した会話を静かに見守っていたペンギンがトラファルガー・ローに話しかけた。


「船長。ハルは怪我が治ったらどうするんですか。」

「ああ、そうだな。どうしようか。考えてなかった。」


トラファルガー・ローが首を傾げながら私を見た。
横からベポが私を覗き込む。


「ねぇ、ハルは、前居た島に戻るの?」

「……そうね。家族が居るわけじゃないから別にあの島に拘りはないけど、家にお金や生活道具を全部置いてきてしまったから戻るでしょうね。」


ベポの問いに考えてから答えた。


「じゃあ、お前に金をやる」

「はぁっ?!」


トラファルガー・ローが唐突におかしなことを言うもんだから素っ頓狂な声を出してしまった。

しかし彼は私の様子などお構いなしに続けた。


「生活道具も揃えてやろう。と、言ったら、お前はこの船に残るのか?」

「……は?……仰る意味が……。」

「お前、船に残れ。」

「私が……この船に?」

「そうだ。」

「2億の賞金首のトラファルガー・ローが率いるハートの海賊団に?」

「そうだ。」

「戦いに参加してたわけじゃないのに、勝手に撃たれて怪我をしてしまう私が?」

「……ククッ。そうだ。」

「じょ、冗談……ですよね?」

「本気だ。」

「えと、なぜ?」

「お前を気に入ったから。」

「ええっ!!」


思わぬ言葉に頬がカァッと熱くなる。
その様子を見てトラファルガー・ローは愉快そうに口角を上げた。


「お前は面白ぇ女だ。このままあのつまんねぇ島に帰すにはもったいない」

「面白い……??」

「この船で木苺のジャム作れよ」

「キャスケットに聞いたんですか?」

「ベポにニット帽、編んでやれ。ニットでもこいつに市販は無理だ。」

「白熊には必要無いって、たった今あなたが言ったんじゃないですか。」

「……この船のクルーは、皆強い奴らばかりだ。仕事も出来る。……ただ一つ難があるとすれば、こいつらは全員生活力がなさすぎる。掃除をさせても何処か詰めが甘いし、洗濯もペンギンが言わなきゃ洗わねぇで溜め込んどく奴らばかりだ。食事に関してはお前もよくわかっただろ。」


軽口の応酬を急にやめて、ふと真剣な顔を見せたトラファルガー・ローの言葉に、私も口を噤む。


「それを補う人間が欲しい。ペンギンだけじゃ限界だ。こいつは他にやるべき仕事が山積みにある。」

「確かに一人暮らしだったので普通に家事は出来ますが、でも私……コックさんみたいにプロのお料理はつくれません。」

「それでかまわねぇよ。」

「島に置いてきたものは、どうするんですか?」

「それ以上のものを揃えてやるよ。待ってる人間も居ないんだろ?」

「私、戦えないですし……。」

「俺らが守ってやる。」

「っ絶対……、また勝手に巻き込まれて怪我しますよ。」

「安心しろ。いくらでも治療してやる。俺は医者だ。」

「あなた、さっきどうるするか考えてないって言ったじゃないですか……。」

「今考えた。」

「……なんて無茶苦茶なの。」

「海賊なんてそんなもんだ。」


私はあまりの話の展開にトラファルガー・ローを見つめたまま言葉を失った。
私を見つめ返していたトラファルガー・ローの笑みが深くなる。


「「やったーーーーー!!」」


私の沈黙を肯定と見做したのか、ベポとキャスケットが飛び上がって叫んだ。


「おい、みんな!ハルが仲間になったぞ!!!」


キャスケットが興奮したように続けると、ラウンジは割れんばかりの歓声に包まれた。
その歓声に押し切られるように、私はハートの海賊団の一員となった。


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