No.33-side:GALLEY-LA
すう……
ぷぁ……はぁ……
あー、美味え。
水路に架かる橋の上で葉巻に火を付け、深く吸い込んだ。
橋の欄干に背中を預け、空に向けて息を吐けば、藍色に染まった空に白い煙が散った。
口から吐く息がなくなると、嗅ぎ慣れた少し甘い香りの煙が、最後に鼻を通り抜けた。
ギャンブルに勝った後の葉巻の味は一味違う。
しかし、今日の俺はツいていた。
丁度今抱えている借金がチャラになるくらいは稼いだだろう。
しかし、この金をあっさり借金の返済に回してしまうのはもったいねえ。
どうせ返すなら、もう少し増やしてからだ。
借金がなくなったって、結局手元に残らなきゃつまらねえからな。
さて、何で増やそうか。
スロットか。ルーレットか。ポーカーか。
ヤガラレースに行ってみるのも良いかも知れない。
「ん?」
ぼんやり橋から見える景色を眺めていると、良く知る店が目に入った。
行きつけのその店から灯りが漏れている。
あれ?今日は日曜だ。定休日じゃなかったか?
定休日の曜日を変えたのだろうか。
それとも不景気で、休日返上で営業する事にしたのだろうか。
なんにしろ、あの店が開いているなら丁度いい。
どうせ、何処かに寄って何か食って帰ろうと思っていたところだ。
短くなった葉巻を橋の下に投げると、気の良いマスターが待っているであろう行きつけの店に向けて歩き出した。
−−
葉巻を咥え、ぷかぷかと煙で輪を作って遊びながら、ぶらぶらと歩く。
店の手前まで来て足を止めた。
看板に掛かる「CLOSED」の札。
おいおい、此処まで来てそりゃねえぜ。
こっちはもう、ここで飯を済ますつもりで来てんだからよ。
入り口から店の中を覗いてみる。
カウンターの中ではブルーノがフライパンを煽り、テーブルには客が一組飲んでいるのが見えた。
……なんだ、やっぱり営業してんじゃねえか。
少し安心して、店の扉を開けた。
「おい、ブルーノ。看板がクローズになったままだぜ。」
はずし忘れであろう「CLOSED」の札を指摘しながら店に入る。
フライパンの料理を皿に移していたブルーノが此方を向いた。
「クローズで良いんじゃよ。今日はワシらが貸切にしとるんじゃ。」
俺の言葉に返したのはブルーノではない。
これまた聞きなれた声に、テーブルを振り返る。
其処には思ったとおりの良く知る顔が3つ。
「なんだ、おめーらか。飲むなら俺にも声掛けろよ。」
「毎回金を払わないくせに人一倍飲む奴が偉そうにするんじゃないっポー。」
「ははっ。ルッチ、お生憎様だな。今日はあるぜ、金。」
相変わらずの腹話術でむかつく事をほざく変態野郎に鼻で笑って返した。
いつもの俺なら、この時点で声を荒げて返しただろう。
懐の余裕は心の余裕だ。
そういえば、ルッチの肩にいつもの鳩が見あたらない。
オイオイ。あれが居てこその腹話術だろうが。
辺りを目で探すと、女の手元で砕いたコーンチップスを突付いている鳩を見つけた。
ハットリがルッチの腹話術に応えずに他人の所に居るのなんか初めて見た。
ルッチも、良く許したな。こんな状況。
……というか、誰だ、この女?
[*prev] [next#]
|