No.05
クザンの部屋の大きなソファーに、膝を抱え込んで座っていた。
クザンは向かいのソファーに座り片肘を肘掛に預け、頬をポリポリと掻いている。
「クザン。」
「んー?」
「あのオバサン、以前私の他にも日本人がこの世界に来たって……。」
「ああ。言ってたね。」
「その人たち、どこにいるの?」
「あー……もういない。」
「なんで?」
「死んだんだよ。ある人は老衰、ある人は事故、ある人は病気。みんな記録が残ってる。」
「……。」
「まぁ、元気だしなさいや。さっきまでのナツちゃんの方がお前さんらしい。」
「……くそぉ……。」
「……え?」
色々考えた。
なんでこんな事になったのか。
私がこんな変な状況になったのは誰のせいか。
そりゃ……やっぱり……
「あの鳩のせいだ!!あの鳩が私を連れてこなけりゃこんな事にならなかったのに!!」
「ちょ……ちょっとちょっと落ち着いて。はいはい、いい子だから座って……ね。」
急に激昂してビョンビョンとソファーの上を飛び始めた私をクザンが慌てて立ち上がり、押さえつけた。
胃の辺りにムカムカと沸いてくる怒りを、ハァハァと荒い息で静めながら、私を抑えているクザンの腕を掴んだ。
「クザン……。」
「なあに。」
「あの鳩に会わせて……。」
「えっ?!」
「あの鳩の事知ってるんでしょ!会わせてよ!!」
「だって、ナツちゃん、その勢いだと首絞めて殺しかねないじゃん。」
「殺さないよ!責任とって貰うの!私を此処に連れてきたんだからあっちに帰してもらうの!!」
クザンの黄色いネクタイを掴んでガクガクと揺すった。
「わっ……わかったわかった……会わせる!会わせるから……ネクタイ離し……ゲェホッ!」
苦しそうにむせたクザンが私を軽く突き飛ばした。
彼の軽い力でもあっけなくボスンッとソファーの端に飛んだ私は、飛ばされた形で横たわったまま、手の平で顔を覆った。
私が泣いたと思ったらしいクザンが「ごめん」と言って大きな手で頭を撫でてきた。
手の平をどかし、笑ってクザンを見上げる。
「泣いてないじゃないの。」
クザンもホっとしたように笑いながら、私の頭を小突いた。
涙が、出たわけじゃない。
……でも、出そうになったのは確かだ。
潤んだ目も、眉の下がった情けない顔も他人に見られたくなくて慌てて隠した。
……まだ、泣かない。
泣くのは、鳩に会って、元の世界に戻ってからだ。
「ねえ、クザン!!」
元気良く起き上がり、目の前の親切な大男の名前を呼んだ。
ん?と見下ろした彼に、親切ついでに自分の欲求を伝えることにした。
「あのね、喉渇いた。」
「ああ、はいはい。すぐ何か持ってこさせるよ。」
「うん、あと、すっごくお腹も空いてるし、お風呂にも入りたい。」
開き直ったように遠慮なく口を開く私に、彼は少し呆れた苦笑を向けた。
「急に元気になっちゃったね。」
「お願い。お兄さん。」
「あらら、こりゃまた。まあ、待ってなさい。お嬢ちゃん。」
クスリと笑いながら私の頭を乱暴に撫で、要望に応えるためにクザンは部屋を出て行った。
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