No.59




「ルルさん!タイルストンさん!」


1番ドッグの扉を開けるとすぐに、タイルストンの大きな背中を見つける。
彼の隣には盛大な寝癖を尖らせたルルも居て、二人で大声を出して船大工達に指示を出していた。
私が声を掛けると、ルルが気づき此方に視線を向ける。


「ああ、ナツか。どうした?」

「今度の発注分の資料をお持ちしたんです。」

「ああ、そうか。ありがとう。」


腕の中から1冊抜いてルルに渡す。
彼は受け取ってすぐにそれをパラパラと捲り、礼を述べた。
タイルストンは私が掛けた声より大きな声を出しているからか、全く私の存在に気づかない。


「え……っと。タイルストンさ……  「オイ!!まっすぐじゃねえだろ!周りもちゃんとみてやれ!」


私の声は部下に怒鳴りつける彼自身の声にかき消されてしまった。


「……俺が貰っておこう。」

「すみません。」


様子を見ていたルルが片手を差し出したので、少しホッとして、もう一部の資料を彼に預けた。
彼にペコリと小さく頭を下げてから、次の目的地を探しぐるりと周りを見渡す。

大きな木材を肩に担いで歩いている者。
頭の上でカウボーイよろしく縄を振り回したかと思ったら、作りかけの船のマストに引っ掛け登っていく者。
とてもじゃないが危なくて真ん中を堂々と歩けたものではない。

ルルの横で広い1番ドッグを見渡し、船の横で部下達と設計図を覗き込み話しこんでいるカクを見つける。
しかし、カクにはダリアが持っていくから必要ない。
カクから目線を上に上げると、細いマストの上を大股でズカズカ移動する金髪を見つけた。

うわー。あんな所に。
休憩時間にすればよかっただろうか。
しかし、来てしまったのだから仕方が無い。

意を決し、なるべく作業する皆の邪魔にならないように端から回り込み船の下まで走った。


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