□月△日
彩君と共に暮らしてもう一ヶ月は過ぎた。
その間分かったことは沢山ある。その中で1番印象的だったのは不思議なことに彼の身体的特徴に関することだった。

あの子はやはり、とても綺麗な目をしている子だ。
猫のような毛質に合わせてきたかのようなつり上がった目の形、可愛げのあるまつ毛。
眼鏡越しでも分かるくらい、透き通った紫の素直そうな瞳だから私はついつい見つめてしまう。けれど彩君は恥ずかしがり屋だから、いつも視線を逸らし顔を俯かせる。
その度私は我に返ってらしくない。こうして人の顔をじろじろと見るのは良くない。と反省する日々だった。
何故こうも彼は私の関心を引くのだろうと真面目に考えた時がある。
結論は「恐らく私も一人暮らしで寂しかった」からだと言うことに行き着いた。
確かに彼が来てからとても毎日が楽しい。彩君はどことなく私に似ているから余計居心地の良さを感じた。

けれども彼の人生は私とは異なるものだった。全ては聞けていないが推測する限りきっと彼は用意されたレールの上を無理矢理走らされていたのだろう、それに耐えきれずに家を出たのかもしれない。
本当に辛かったのだろう。しかしこうして自分を守るための行動ができた彩君はとても凄いと私は思う。

その点私なんか、彼より三つ違いと言えど歳上だのに。
彼のような決断ができるのだろうか?
その時にならないと分からないがきっと出来ない。

そうした尊敬もあって、彩君と一緒に居ると楽しい。
…いや、待てよ。私は彼の純粋さに惹かれて、尊敬の念を抱いて、それが誰かに汚されたくないからこうして囲ってるのではないか……?
違う。違う違う。何を考えているのだろう。
そんな邪というか、バカな考えあるわけない。

ただ彩君と一目合った時気になって、境遇が可哀想で家に招いた。そして馬があったから彼の気の済むまま好きなだけいて欲しいと思った。
たったそれだけの事だ。それ以外の事なんて何も無い。

そうだ。何もあるわけがないんだ。

孔雀草と一輪のばら
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