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 ――青城は二十点台に乗った、もう後は無い
 自分の集中が今この試合で一番高まっているとわかる

 サーブ、スパイク――来い
 俺に来い

「っ!」

 全部拾ってやる!

「大地さんナイスレシーブ!」

 ――すぐ其処に見えてる様で、青城の背中は遥か遠く。
 連続得点で点を詰めなければ烏野は負けを待つだけ。

「……」

 東峰を始めスパイカーの打点が疲れで下がってきている様子を見ていた鶫は青葉城西側のコートを僅かに注視し、たった今ボールを拾い上げた国見を見つめた。終盤でもあれだけ動ける国見の理由を鶫は知っているが、それに驚いている影山は僅かに目を見開いている。

 そんな中でも烏野は着実に点を重ね、それを見ていた日向に烏養はブロードを止める必要はないとアドバイスをしていた。

「拾われる可能性があるのはどの攻撃も同じ。ブロックが無いってことはリスクが無いってことだ」

 迷わず行け。

「ハイ!」

「月島!」
「ナイスキー!」

 月島の得点でローテーションが動き、西谷と入れ替わりで日向が入る。その次のローテーションで直ぐにその得点は獲り返され、20-23。その点差に澤村が直ぐに声を飛ばした。

「落ち着いて目の前の一点確実に獲る!」
「オス!」
「目の前のボールが全部だぞ!」
「オス!」

 それから青葉城西側のサーブミスで烏野に得点が入り、連続でもう一点という所で松川のスパイクを影山が拾い上げた。それに直ぐにカバーに入った西谷が田中へトスを上げ、田中はレフト側へ跳びスパイクを打つ。しかし二枚のブロックに阻まれてボールは弾き返され、その瞬間に田中は着地とほぼ同時に右足でボールを拾い上げた。

「っ!」

 自分のスパイクのカバーを行った田中のボールはギリギリの所で日向が繋ぎ、青葉城西側のコートへ返す。球速はなかったもののネットを越えたボールは青葉城西側の床へと転がった。

「うおっしゃあああああ!」
「ブレイク!」

 もう一点。

「影山一本ナイッサー!」
「ッサアー!」

 もう一点……!

 その思いを込めて打った影山のサーブは拾われ及川のスパイクに繋げられたものの真正面で澤村がそのサーブを受け止め、田中のスパイクは岩泉に拾われ更にラリーは続く。

 負けてたまるかという思い、それは烏野だけではない相手も同じなのだと再認識させられた時、目の前で届きかけていた背中が僅かに遠のくスパイクを青葉城西側が決めた。

「青城これでマッチポイント!」
「あと一点!」

 いよいよ後がなくなった烏野側が重い緊張感に包まれた時、コートの後方に居た小さく頼もしい守護神が息を目いっぱいに吸い込む。

「野郎共ビビるなァーっ!」
「!」
「前のめりでいくぜ」

 西谷の頼もしい言葉に烏野側の緊張はほど良く緩み、次のラリーへ。西谷がレシーブを上げたボールは影山へと繋げられ東峰がスパイクを決め、得点は23-24。この途方もなく高い一点の場面でサーブを打つ田中は今まで以上に頭を回していた。

「……」

 ……このサーブをミスれば即試合終了。
 綺麗に拾われてマトモに攻撃決められても終わり。

 そのプレッシャーの中で打ったサーブは青葉城西側に入ったもののリベロに拾われ、綺麗にセッター位置へと返る。速攻が来ると田中は慌てて前に出ると金田一のスパイクを拾い上げた。しかしボールはネットを越える起動を描き、ダイレクトで叩かれると滝ノ上が声を上げた時、ボールを落とす為に跳んだ及川の正面に影山が躍り出た。

 右手がボールに触れ、ワンハンドトスのボールは影山の真後ろ――既に跳んでいた日向へと繋げられた。及川は既に重力に引っ張られ落下していく。

 ――目の前で遠のいた背中が

「!」

 日向のスパイクが沈んだことによりその背中に手が届いた。

 

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