【とある一日】
*同棲開始から1ヶ月くらい
*腐女子が鳴りを潜めている(隠しきれてはいない)
朝6時0分
自分のスマホのアラームが鳴る。手を伸ばしてアラームを切ってさて起き上がろうとしてぐぐぐ、と身体に回っている腕に力が入るのが分かった。「めぐみくーん、私は起きるから離してよぉ」ぎゅうぎゅうと背中に顔を押し当てているであろう恵くんに声を掛ける。少しだけ力が緩み、その隙きを突いて恵くんの腕から逃れようとするがぐいっと腕を引っ張られぐるりと半回転。気づけば恵くんの顔が目の前にあった。じぃ、っと目が合う。「恵くんおはよ」う、までは続かずそのまま、あぐ、と口を食われる。もぐもぐ、と甘噛よりさらに優しい甘噛。うーん、恵くんすごい寝ぼけてるなぁ。1分くらいそんな感じでもぐもぐされ、最後にぺろりと唇を舐められる。そして
「…すー…」
「あ、相変わらず朝に弱い…」
恵くんが寝落ちる。この頃には腕は完全に私から離れているので私はようやくここで起きることが出来る。いつもと変わらない朝だ。
起き上がって洗面所に向かう。顔を洗って「よし、今日も一日がんばるぞい!」と気合を入れる。リビングのカーテンを開け放ち全身に朝日を浴びる。それから自分の部屋に行って制服に着替える。ちなみに恵くんとは各個人の部屋とは別の寝室で2人で一緒に寝ている。着替え終わったらキッチンへ向かう。壁のフックにぶら下がっているエプロンを着てお弁当の準備を始める。まぁそんなに時間ないし冷凍食品ばっかりなんだけどね!あとは昨日の内に作っておいたおかずを詰めていく。
6時40分
ベーコンと卵をフライパンに乗せじゅーっと焼いていると背後からゆらり、気配がした。そのままぎゅっと背中から抱きしめられる。ぐりぐりと後頭部に恵くんの顔が押し付けられる。
「…はいばら」
「おはよう恵くん」
「かってにいなくなるな」
「おはようって言ったよ。それにお弁当と朝ごはんの用意しなきゃだもん」
「かえばいいだろ」
「毎日は駄目だよ」
「そっちのがらくだろ」
「お、お嫁さんになる修行だよ」
「……」
「…嫁」と恵くんが呟いて数秒、ここでようやく未覚醒だった恵くんが完全に起きる。「…悪い、完全に寝ぼけてた」知ってるよー!「顔洗ってらっしゃい!」「…おう」のそのそと恵くんが洗面所へ向かう。
このやり取り、ここ毎日やっている。未だにお嫁さんになる発言はどもってしまうけど。はー、頬にひんやりとした手を押し当てる。ちなみに寝ぼけてる恵くんにはうっすらとした記憶しかないらしい。ベッドの中でのもぐもぐタイムも覚えていないようで…恥ずかしいの私だけじゃん…。って、わわ!ベーコンと目玉焼きが!半熟にしたかった目玉焼きは普通に火の通しすぎで固くなってしまった…うぅ。悲しみながらベーコンと目玉焼きを皿に乗せる。サラダを乗せて、別のお皿にはトースターで焼いた食パンを乗せて、冷蔵庫からマーガリンを出す。…よしオッケー!エプロンを脱いでフックに掛ける。顔を洗い終わった恵くんが戻ってきて、真正面からまたぎゅーっと抱きつく。恵くん引っ付き過ぎでは?「おはよう灰原」ようやく恵くんからの挨拶を聞く。「おはよう恵くん」本日3度目のおはようである。
「朝ごはんたべよ」
「ああ」
それはそうと、恵くん寝癖すごいよ。
7時0分
パパっと洗い物を片付ける。恵くんは着替えと自分の寝癖と格闘中。
やっぱりちょっと時間が早いよねぇ…朝に弱い恵くんが6時台に起きるんだもん。ただ学校に行くだけならもっと遅くても問題ないんだけど、そこには色々と訳がある。恵くんが私を学校まで送るということを、断固として決めているのだ。私の通う学校はここから電車と徒歩で15分くらい。恵くん達が通う学校は真逆方向で更にそこから30分ちょっと掛かる。あんまりゆっくりしてると私は全然平気なんだけど恵くんが遅刻しちゃうんだよね。「別に遅刻したって構わない」と平然に言った恵くんに私とたまたま遭遇した五条先生が頭を抱えた。「いやほんとね、不登校児だったんだよ恵…それ考えたら登校するだけすごい進歩なんだけど…でもこのままだと留年するよ恵」私はぎょっとした。あんな真面目だった恵くんが今世では留年!?それはいけない!ということでちょっと早起きすることにした。恵くんにも早起きして頑張ってもらおう。
7時15分
恵くんと家を出る…前に玄関でぎゅうっと抱きしめられそのまま唇同士が重なる。毎日毎日やっているがやっぱりちょっと緊張する。大体前世では本当にごくたまにしかキスしてなかったのに今世再会してから毎日必ず3回以上はキスするんだもん。今朝のベッドでも然り、夜寝る前も然り。なんかもう、当たり前の行動みたいな感じ。後1週間もしたらキスすることが当たり前みたいになっちゃいそう。慣れって怖い。
…実際、1週間もすればキスなんて挨拶だレベルにまで慣れてしまうのである。ついでに一緒にお風呂も違和感なくなってしまうからほんと慣れって怖い。
唇が離れ、もう一回抱きしめられてから「行くか」と恵くんが微笑む。「うん」と返事をして二人手をつないで玄関のドアを開ける。
7時30分過ぎ
電車を降りて少し歩く。そうすると私の通う学校に到着する。流石に他人の目があるので抱きしめられたりはしないけど数分、校門前で手をにぎにぎされる。もう全面に「離れたくない」オーラが出ている。ちらほら登校する生徒たちに生暖かい視線を向けられてちょっと居心地が悪い。そして名残惜しそうに手を離す恵くんが「帰り、迎えに来るから1人で帰るなよ」と念を押すように言い「わかってるよ」と頷く。
「じゃあまた帰りに」
「ああ」
私が校舎に入るまで恵くんはそこから動かないので早々と校舎へ向かう。下駄箱に到着して靴を履き替えて教室へと向かう。途中「朝からアツアツだねー椛ー」友達がからかうように声を掛けてきた。
「おはよう。…ばっちり見てた?」
「見てた見てた。毎日恒例バカップルって有名だよ」
「やーめーてー!恥ずかしい」
「じゃああんなところでいちゃつくのやめなよ…って言いたいところだけど」
「だけど?」
「椛の彼氏くん、情緒不安定だな?」
大正解〜!よく分かったね。「まぁ椛は気づかないだろうけどさ」そっと友達は視線を下へ向け、少し言いづらそうに口をもごもごとさせ、うん、と頷いて
「椛が校舎に入って視界から居なくなった瞬間この世の終わりのような顔してるんだよ」
それは…知らなかったです。思わず顔を覆う。朝から引っ付き虫、別れる直前まで手を繋いでもまだ不安になるんだね恵くん…逆にくっつきすぎで駄目なのでは?ちょっと距離を置こうとか言ってみようかな「やめなよBAD ENDルートだよ」なにそれこわい。
「彼氏ヤンデレでしょ」
「う、うーん…」
YESだけど頷けない。堂々と「私の彼氏はヤンデレです」なんて言えない。
それに今のところ実害は無いのだ。ヤンデレって言ったらお兄ちゃんが心配したような監禁とか、他の人と喋ったら「オマエには俺だけだろう」みたいなアレだと思ったんだけど、取り敢えずその兆しは無し。虎杖くんや野薔薇ちゃん、五条先生は勿論大丈夫で夏油お兄ちゃんと話してても特にこれといった反応は無かった。
もしやヤンデレではなく愛が重いだけの性格なのでは?
「いいや、アレは大切なものに害するものすべてを排除するタイプのヤンデレよ」
「言い切るねぇ」
「なんか事件とかない?ご近所で闇討ちに遭ったヤンキーが居たとか」
「ないよ」
「ないかー」
あ、でも先週…。私は表情を曇らせた。
「先週?」
「うん…電車乗ってたら…痴漢にあった」
「聞いてない」
「わざわざ…言わなくてもいっかなーって」
「よくない!もう…大丈夫だった?」
「大丈夫!恵くんがね秒で捕まえてくれて、駅員さんにも引き渡したし。あれ以降電車では必ず恵くんが壁になるようになってくれて、安心してる」
「グッジョブ彼氏!…ん、先週…?」
友達が何かを思い出したように首をひねった。そして真顔になる。なに、どうしたの?「う、うーん…」唸って顔を顰めて、そうして私の顔を見た。
「…先週って、水曜日あたり?」
「え、うんそうだよ。水曜日」
「…はー、そっかぁ…そっか」
「どうしたの?」
「んや、なんでもない!気の所為だった!」
?へんなの。「あ、私今日飲み物買ってなかった。ちょっと自販機いってくるね!」と友達は駆け足で行ってしまった。
「先週の木曜って××線で飛び込み事故あったよねー。誰かに押されたわけでもないから自殺じゃないか、ってテレビで言ってたけど…。椛の痴漢遭遇の翌日…しかも××線って椛が乗ってる電車じゃなかったっけ。もしかしてもしかする?憶測だけど。うわーでもこれ予想通りだったら怖っ、椛の彼氏怖っ!そしてこれ言ったら私も消されるパターンでは?全部想像だけど!なんかもうそうとしか考えられなくなっちゃった…なーんて妄想強すぎかな?鶴ぅー!主を守ってくれー!なんちゃって」
「灰原の友達になにかするわけないだろ」
でも灰原になにかしようものなら、誰であろうと全力でブッ潰すけどな。
しにたくない、しにたくない!と無様に泣いて詫びる男を思い出す。知ったことか、オマエがだいじな大事な灰原に、そのクソ汚い手で触れたんだろう。腕を切り落としてやりたかった。[[rb:今 > ・]]玉犬が居れば食わせてやったのにな。いくらなんでも玉犬が可哀想か?いいや、俺の式神[[rb:だった > ・・・]]玉犬なら喜んで食らいつく。
らくにしぬか、くるしんでしぬか、えらばせてやるよ。
結局あの男は、死にたくないと笑いながらホームに入ってくる電車目掛けて飛び込んだ。即死だろう。楽に死ねて良かったなクソ野郎。
お陰で俺は遅刻…というか面倒だったからそのままバックレた。後で虎杖と釘崎に怒られた。
この事を知っているのは勘付いた五条先生だけだ。「あはは、狂い方ヤバイよ恵」五条先生は笑っていた。
「灰原を害するモノなんて、この世界に不要でしょう?」
こっわ!と五条先生が笑って俺も笑った。
12時30分
『弁当、うまい』
と恵くんから写真付きメッセが届く。写真には2つのピース。虎杖くんと野薔薇ちゃんの手かな?仲良くご飯を食べているようで安心する。私と再会してから恵くんは入学から不登校だった学校に行くようになった。これには五条先生もにっこり。にっこりどころか両手掴まれて「本当にありがとう!!」と頭を下げられた。むしろここまで病ませてしまった私が頭を下げるべきなのでは?ちなみに恵くんは蔑んだ目で五条先生を見ていた。いやいや、恵くんがそんな目で見ちゃいけないからね?
16時15分
『悪い、担任に捕まった』と恵くんから連絡が入る。うーん、どうしよっかな。スタバの新作飲みたいから1人で行っちゃおうかな。『学校にいろ』というメッセージが送られたと同時に「一番近くのスタバで待ってるね」と送る。『まて』『俺が行くまで行くな』『学校にいろ』『おい』『はいばら』『返事』と連続で送られてくるメッセージをそのまま既読スルーした。よぉし!スタバ行くぞー!
そうして少し歩いた場所にあるスタバ、目の前はもう店だというのに私の目には違うものが映っていた。
「…え、ええ?ほ、ほんとに?」
2度見3度見をしてやっぱりそこに居る人物に目を丸くする。視線に気づいたらしいその人と私の目が合う。あちらも、私を見て目を丸くする。
「…オマエは」
「お、お久しぶりです宿儺さま」
あ、宿儺さまって呼んじゃった。取り敢えず頭を下げる。前世じゃないけど少しでも機嫌を損ねたらどうなるかわかったもんじゃない。若干嫌われてた節があるし。理由はなんとなく分かってる。うん、恵くんガチ勢。そしてその彼女だった[[rb:私 > 雑魚]]。とってもとっても地雷臭がします。そりゃあ宿儺さまにとって私は目障りだっただろう。漫画からも分かる、宿儺さまの伏黒くんに対する好意。
宿伏も良いよね…とか思ってないですハイ。虎伏が一番だよ!
16時25分
何故かスタバで宿儺さまとフラペを飲む私。あ、宿儺さまはブラックコーヒーです。何故か奢ってもらいました怖いです。じぃっと私を見つめる宿儺さま。虎杖くんにそっくりな顔なはずなのにすごくかっこいい。あ、虎杖くんがかっこよくないってわけじゃなくてね?とにかく顔が良い。取り敢えず拝もう。拝んだらなんか呆れられた。宿儺さまはコーヒーに口を付け一口。そして口を開く。
「小娘も転生していたか」
「[[rb:も > ・]]ってことは宿儺さま他の人に会ったことが?」
「俺の会社と元呪術師共の会社はライバル関係だからなァ。五条の餓鬼とは会ったな」
というか小娘、何故俺を様付けしているんだ。という宿儺さまの言葉は右から左へとすり抜けた。
俺の会社?五条先生は確かどこぞの大企業の御曹司だって聞いたけどそことライバル関係?オレノカイシャ??社長?宿儺代表取締役社長?字面がとても強い。
「というか宿儺代表取締役社長様も人間に転生って…どんな世界なのここ」
「アホらしい呼び方はやめろ」
「えぇ…宿儺さま」
「貴様ら呪術師は宿儺と呼んでただろう。何故今更様付けなぞしている」
「…ノリ?」
「はー、小娘はやはり頭が弱いな」
なに私頭弱いって思われてたの?しれっとひどい。「じゃあ宿儺さんで」というと「それでいい」と宿儺さんはまたコーヒーを飲んだ。なんか凄く丸くなってない。鏖殺!って言ってた宿儺さまはどこへ…。きょとんとしていると宿儺さんは「なんだキサマ、憶えていないのか?」と首を傾げ「何を?」と私も首を傾げる。
「自分が死んだ時のことだ」
「私が、死んだとき」
目の前には血塗れの恵くんが倒れていた。少し離れた場所で暴れている大きな式神と、逃げ回る呪詛師。あれ、多分魔虚羅だ。ふらり、膝をつき恵くんに腕を伸ばす。めぐみくん。身体を揺らすが反応は無かった。やだ、やだよめぐみくん。死んじゃやだよ。
「助けてやろうか」
「…りょうめん、すくな」
「どちらにしても伏黒恵をここで死なせるわけにはいかないからな」
両面宿儺は反転術式を使える、らしい。心臓を抜き取られた虎杖くんが生き返ったのも両面宿儺の力があったからって聞いた。なら、きっと両面宿儺は恵くんを助けることができる。でも、
「あなたに借りを作るのは、絶対良くない」
「――ほぉ?」
「私があなたに慈悲を乞いて、私が両面宿儺に借りを作るのならまだ良い。でもあなたは私に一切興味がない、そもそも目障りだと思っている。そして弱い私には返せるものがない。ならあなたは、恵くんを助けるという借りを恵くんに課すでしょう?」
「馬鹿ではないようだな。しかしオマエに伏黒恵を救う手段はないだろう?見殺しにするか?」
「見殺しには、しない」
私は恵くんを死なせない。じりじりと身体が熱くなる。両面宿儺が目を見開いた。
「オマエのそれは」
「ねがいを、かなえてくれるの」
「キサマは死ぬぞ」
「しってる」
祈りを、さすれば叶えよう。
私にだけ見えるそれは、そう言った。なんでも願いを叶えてやると。
「めぐみくんをたすけて■■」
16時35分
呆れ顔の宿儺さんが私を見ていた。
「大体どこでそんなものを拾ってきたんだ小娘」
「お兄ちゃんの遺体に。普通こういうのって祓った人間に憑いていきそうなんですけどね。あれを祓ったのは五条先生だって聞いたけど…」
「大方無下限に阻まれたんだろう」
「あ、成程」
だからお兄ちゃんの遺体に憑いてたのか。納得納得。ずずずー、とフラペを啜る。
「伏黒恵と小娘の命を天秤で量れば、間違いなく伏黒恵に価値がある。人間、自分の命は惜しいものだと思っているがキサマは迷うこと無く伏黒恵にその命を差し出した。まぁ少しくらいは敬意というものを払っても良いかと思ってな、伏黒恵が起きる前に小娘の死体を灰になるまで燃やそうと思ったんだが」
「敬意とは?弔い方雑すぎる…」
「キサマは存在そのものをアレの贄とし、調伏の儀を無かったことにした。身体が消失していくさまを見て流石の俺も驚いたものだ。矮小な存在が、そこまでのものを成すとはな」
私が呪術廻戦の漫画に描かれていない原因それかぁ。そんなこと知らなかったから驚きの事実だよ。びっくりしすぎて頭が回らなくなってきた。
「今世、オマエは伏黒恵に会ったか?」
「あ、ハイ会いました」
「そうかそうか。なら多少はマシにはなったか?生まれ変わりの伏黒恵を見て俺は心底がっかりした。なんだあの死んだ目は。俺が目の前に居るというのに何の反応も示さぬ。殺しに来るかと思って愉しみにしていたのに。たかが小娘1人、しかもこんなちんちくりんのどこが良いのか」
それな。宿儺さん同意です。私なんかよりめっちゃ包容力ある善の塊みたいな虎杖くんが良いと思います。むにーと何故か宿儺さんは私の頬を抓って引っ張る。地味に痛い。
「ッ灰原!」
叫ぶような声に店内の全員の目が向いた。私と宿儺さんも聞き覚えのある声に目を向ける。走ってきたのだろうか、汗で少し濡れた恵くんが居た。いや、早くない?恵くんの学校ここから30分以上掛かるよね、どうやって来た?ズカズカと恵くんがこちらに向かってくる。私の目の前まで来てハァと息を吐きそのまま私を抱きしめた。
「なんでオマエが灰原と居るんだ…宿儺ッ」
「中々良い表情をするようになったなァ伏黒恵」
恵くんに抱きしめられ、視界が塞がれているので何も見えない。が、宿儺さんの声が弾んでいるのがわかる。愉しそうで何よりです。それより恵くん、汗の匂いなんてまったくせずむしろいい匂いなんですけど、どういうことなんですかね。
「やぁ宿儺」
「ハッ、五条か」
「まったく…恵が慌てて連絡してくるから何かと思ったけど」
なんとか恵くんの腕から顔の向きを変えると、隣に五条先生が座っていた。「あ、これ新作じゃん。一口貰っていい?」なんて緊張感の欠片もない五条先生。私は頷いた。
「あんがとね、あ、これウマっ。僕も頼んでこよ〜」
「なにアンタ灰原と間接キスしてんだ」
「も〜恵ってば子供みたいなこと言うんだからー。あ、子供か」
「殺す」
いや、そこの2人で喧嘩しないでよ。宿儺さんも呆れ顔。
「いやーもーびっくりだよ。突然恵から電話が来たかと思えば『スタバまで車飛ばしてください!』だよ?どんだけスタバ飲みたいの恵!って笑っちゃった。って冗談はさておき…宿儺、椛に何しようとした?」
「さァてな」
別にちょっと話をしてただけなんだけどな。前世のこともあって随分警戒されてるなぁ宿儺さん。ちょっと不憫な気がする。恵くんの身体が離れ、恵くんが膝をついた。目線が合う。
「灰原、宿儺に何された」
「……フラペを、奢ってもらいました」
は?と恵くんと五条先生の声が重なって、ケヒヒと宿儺さんが笑った。
17時0分
宿儺さんとの別れ際、恵くんが私の手をしっかりと握り「灰原に何かしたら、俺はオマエを絶対殺す」と殺意マシマシで殺人予告をしていた。「ケヒヒヒヒ!やってみろ伏黒恵!」愉しそうな宿儺さん。そんな宿儺さんの方に手を置き「いや、マジでやるからな。今の恵マジでやるから気をつけろよ?」と真顔で助言する五条先生。すごいなこの絵面。引き摺られるように恵くんに腕を引っ張られ、五条先生の車に押し込められる。
「宿儺…殺す、今度こそ…殺す…」
「私何もされてないよ恵くん」
「触られてただろ」
触られたってほっぺ抓られたくらいなんだけどね。ぎゅうぎゅうと抱きしめて離さない恵くんに「安定の情緒不安定〜取り敢えず二人の愛の巣へGOー!」と五条先生は車を発進させた。
そして家に着く。抱きしめられたまま家の中へ。「僕は帰るけどなんかあったら電話してね。ほんと、取り返しかつかなくなる前にね。手枷足枷とか付けられないように気をつけてね本当に」五条先生に念を押された。心配性だなぁ先生は。流石に大丈夫だよ…だよね?
リビングのソファーに押し倒される。強く抱きしめては「はいばら、生きてる…いきてる」と譫言のようにつぶやく。思ったよりSAN値ピンチです。「生きてるよ―」と恵くんの頭を撫でればぐずぐずと涙を流し始める。
「灰原が消えたと言ったのは宿儺だ」
ぽつりぽつりと、恵くんは語った。私が死んだ後の、私が知らない話だ。
「俺を蘇生したのは灰原だと言った。そんなわけあるか、灰原は反転術式の使い手じゃない。そんな事できない。この時点で、俺は察してた。でも否定したかった、そんな事あるはずないって。でも灰原は自分の命を使って俺を生かしたんだって。随分と良い手駒だったな、なんて宿儺が言っ、あ、あ。…殺したかった、巫山戯たことを言う宿儺を。それ以上に自分を、殺したくて仕方なかった。」
恵くんをひどく苦しめてしまって、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。でもごめん、後悔はしてない。ごめんね恵くん。生き地獄でも、生きていてほしかったんだよ。私なんか忘れて、幸せになってくれればよかったのに。
「俺は、灰原が居ないと生きた心地がしない。また一緒に居られるんだ。今度は絶対に」
「しあわせになろうね」
「…ああ、お前と2人で」
18時
「…飯作るの、面倒だろ。なんか頼むか」
「え、作るよ?」
「…お前、包丁持ってる時抱きしめたら怒るだろ」
「そりゃあ動きづらいし危ないからね!」
「今日は、離れたくない」
本日の夕食はデリバリーに決定した。
食べてる間もずっと抱きしめられてた。食べづらくないのか恵くん。「灰原の頭に零したりしねえよ」なんて言われたけど、そうじゃないんだよ恵くん。
20時
抱きしめられながらテレビをみたり、今日はすごいまったりしてる。恵くんもだいぶ落ち着いたようで安心した。お風呂の掃除でもしてこようかと立ち上がろうと恵くんの腕をぺしぺしと叩く。立ち上がろうとしてぐいっと腰を引っ張られた。
「どこ行くんだ」
「お風呂の掃除に」
「俺がやる」
「え、ありがとう」
「だからこっから一歩も動くな」
絶対だぞ、と念押しされる。まぁ、10分そこらじっとしてるのは何の問題もないから良いんだけど。恵くんの背中を見送り、私はぼーっとテレビを見た。
「もう湯張っていいか?」
「ちょっと…早いけどいっか」
「今日はゆっくり風呂に浸かろうな」
…うん?ちょっと不穏な気配を察知。
そして嫌な予感は当たるものだ。
「何度か一緒に入ってるだろ」
「流されてね!でもやっぱり恥ずかしいよ!」
「タオル巻いて良いから」
「タオルが譲歩みたいなのやめてよ!」
「脱がすぞ」
「さも普通に服に手を掛けないで!」
普通に全部脱がされた。ああああと唸りながら顔を手で覆う。「髪洗うからそのまま目をつぶってろ」そのために顔隠したわけじゃないんだよ!ざばーとお湯が掛けられる。わしゃわしゃと頭を洗われる…うん、すごい気持ちいい。シャワーを頭に、泡を流していく。綺麗に流し終えたら、今度は丁寧にリンスを揉み込まれる。美容師さんかな?しばらくしてそれも終わる。
「身体、洗うぞ」
「自分でやる。自分でやらせてくださいお願いします」
「全部俺がやりたい」
「恥ずかしすぎていっぱいいっぱいだよ!」
「…別に、セックスするわけじゃなんだからいいだろ」
「よくないよ!しれっと何言ってるの!」
「まぁ、いいか。嫌がる灰原に無理やりはしたくないからな」
どの口が言うんだ。
なお、結局恵くんに言いくるめられ一ヶ月後には身体の隅々まで恵くんに洗われても動じない私が出来上がるのだが、今の私には知る由も無い。慣れって怖いね。
人はそれを洗脳という。
湯船に浸かる。背中には恵くん。無心だ私、何も考えるな私…いや、逆に考えろ。この場にいるのは私ではなく虎杖くんだったとしてだね。
するり、首元に恵くんの指が這った。
「うー!むり、そんな妄想すらできない!恵くんの馬鹿ぁ!」
「え、悪い」
「そんな簡単に謝るな―!というか全然悪いだなんて思ってないでしょ!わかるんだからね!」
「うなじにキスしていいか?」
「人の話聞きなよ恵くん」
「ゆでダコになる…」
お風呂に上がってから髪を丁寧にドライヤーで乾かされる。ツヤツヤになった髪をひと撫でして満足そうに微笑む恵くん。もう…好きにして。ぐでん、とベッドに転がった。
「もう寝るか?」
「寝ないよ…お風呂入るだけで疲れる…」
「寝るか」
「まだ9時だよ!あ、ドラマ始まる!」
22時
「今週も楽しかった…良いなあのシチュ…これを虎伏で…」
「…灰原」
「ドラマパロ…」
「はいばら」
「………」
「聞こえてないか」
22時30分
「ハッ」
「戻ってきた」
「ん、え、あ、ごめん。自分の世界に完全に入ってた」
気づいたら恵くんが私の膝に頭を預けていた。ぜんっぜん気づかなかった。わしゃわしゃと恵くんの頭を撫でると気持ちよさそうに目を細めた。う、かわいい。でもお風呂の出来事はゆるさないからな(1ヶ月後にはどうでもよくなってる)。
「ねるか」
「うん、ってうわ」
上体を起こしたと思えば、私は恵くんに抱きかかえられる。そのまま寝室に連れてかれる。自分で歩けるんだけどなぁ、なんて思いながらされるがままになる。寝室に着いてゆっくりベッドに身体を降ろされる。そんでもってぎゅーっと抱きしめられる。
「今日も一日お疲れ様」
「ん」
唇と唇を合わせる。薄く口を開くと舌を捩じ込まれる。甘く噛まれたり、吸い付いたり。はぁ、と漏れる息。くるしい。息だけじゃなくて、胸も。供給過多だなぁ、しあわせの。
「だいすきだよ、めぐみくん」
「おれも、だいすきだ」
二人ベッドに倒れ込んで幸せそうに笑った。
「おやスヤァ…」
「…いや、寝付き良すぎだろ」
腕の中で早々に夢へと旅立った椛。「もみじ」と呼んでみるが無反応、完全に寝てるな。
ほんの少し、魔が差す。椛のパジャマのボタンを2つほど外す。白い肌が顕になってごくり、唾を飲み込んだ。そのまま首に吸い付く。甘く噛んだり、舐めたり。痕が付かないほど弱くあまく。
「はぁ、あまい」
オマエが簡単に俺を受け入れるから、ただ一緒にいるだけで良かったのに、どんどん欲が大きくなるんだ。
俺は灰原が居ないと、生きていけない。灰原も俺が居なきゃ生きていけないようになればいいんだ。どろどろと甘やかして、逃げられないように雁字搦めにして。
「あいしてる」
[newpage]
【メモ】
・恵くんの主人公の名前の呼び方
同棲1年(高2夏)くらいまで:灰原呼び
それ以降:椛呼び
たまに呼び方変えてましたが明確には書いてなかったのでご説明。
前世ではずっと灰原呼びでした。
【前世で椛が使った力】
・■■
五条悟に祓われたはずの■■■が転じたもの。ずっと椛にだけ見えていた。
お兄ちゃん殺しちゃってごめんね〜。でも元々信仰心を忘れた人間が悪いんだから仕方ないよね、堕ちたの人間のせいだし。でもちょっぴり悪いと思ってるから代償ありきで助けてあ げ る ♡トラウマ生成装置再来。オマエ邪■か?灰原家ある意味■■に好かれてる。いい迷惑。
椛の命を代償に恵を助ける。更に存在を喰って魔虚羅との調伏の儀を無かったことにした。
■■は往々にして人間に優しくない。
【書きたいネタ】
・夏五本を作ろう!
ゲトーさんが白目剥く話。そんでもって恵に「浮気だ!」って言われる話。
まったくわけがわからないよ。
・七灰(雄)とお姉ちゃん
まだ再会してないんですよね七海と灰原。再会話が書きたい。なお二人の間には友情しかないです。
聞いてるかお姉ちゃん。拝むな泣くな尊いって言うな。
・「呪術廻戦」を読む宿儺様
「宿儺さん、漫画って読んだりしますか」「俗物的なものは好かん」「でも気に入りますよ」その人にそれを勧めますか椛さん。読んで大笑いする宿儺。
今回の話のおまけで書けばよかったなと後悔。.
イチャイチャが書きたかったんだ。当初はただイチャイチャするだけの話だったはずなんだ…。宿儺を出したいって思ったら何故かこうなった。最後はちゃんといちゃいちゃさせた。
ところでふしめぐのヤンデレ感が薄いな?もっとこう…ヤンデレ感を出したい。ヤンデレってなんだっけ。洗脳はしている。
1話投稿の時点で続くとは思ってなかったので、ちょっと矛盾が生じてたりしてますが目をつぶってやってください!
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