『人生最悪の出来事だった』と俺は豪語する。後も先も、あれ以上に最悪な出来事は無いだろう。
クッソくだらねぇ俺という人間を、一方的に徹底的にぶっ壊して痛めつけて嬲って殺し尽くして、そんで残った馬鹿みたいにボロボロになった俺の胸倉を掴んで「よぉ、随分イイ男になったじゃねぇか」とか頭可笑しいんじゃねぇかって台詞を吐いて。

「気に入った。このあたしと地獄にでも行こうか」

マジでイカれてやがる。満身創痍の俺は最後の力を振り絞って拳を握るも、其奴はべろりと舌を嘗めずり華奢なくせに鍛え抜かれた脚が鳩尾に突き刺さった。「が…ッ」身体が浮いて息が止まる。くそ死ぬ、マジで地獄行きだ。「あたしと同じくせに、弱っちいなお前」ハァ?何、言って

この女、呪力を一切使っていない?否、同じと言ったか?
呪力が一切、無い?

「ごほッ…天与、呪縛…っ?」
「そうそれ、ダセェよなあ。何だよ呪縛って。あたしを誰が縛るってんだ?天から与えられた?神様ってか?馬鹿馬鹿しい。それ以上に馬鹿馬鹿しいのは『そんなものを持ってる奴はクズだ』とか言ってる奴だ。なぁ憶えあんだろ?」

「禪院家に非ずんば呪術師に非ず 呪術師に非ずんば人に非ず」禪院のクソ共が口を揃えて言う言葉だ。呪力を一切持たない俺は、あそこでは人間扱いすらされなかった。出来損ない、ゴミ、クズ。ちがう。呪力が無くても呪霊は殺せる。
使えない人間だァ?クズクズ猿、てめぇらの方がよっぽど、

「てめぇの価値を他人に決めさせてるんじゃねーよ」
「ぐ、ぅ」

地面に転がされた俺の身体に女の脚がめり込む。

「あたしと同じのが、そりゃあもうグレてクズ人間になってるって聞いて勿体ねぇなって思って来てみたんだが、期待ハズレもいいところだったな。『クズの俺よりクズな連中』だって?底辺同士で争うんじゃねえよ。ちげえだろ」

違うだろ。

「それは刷り込みだ。てめえが言う言葉は違う」

俺は、

「クズじゃ、ねぇ。要らない人間なんかじゃない」
「そうだ」

肯定。あっさりとその女は「そうだ」と言った。一言、ただその一言で胸の内にあった黒い靄が晴れる。
くっそ、全身が死ぬほど痛いのに気分は晴れやかだ。知らない小娘にフルボッコにされて、何やってんだか。笑いがこみ上げてきた。折れた肋骨痛ェ。

「クソガキ」
「誰がクソガキだ。哀川潤だ」
「哀川」
「あたしのことを名字で呼ぶな。あたしを名字で呼ぶのは敵だけだ」
「…潤、てめえ何モンだ?」

よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに哀川潤と名乗ったガキはシニカルな笑みを浮かべ、

「哀川潤、なぁにただの人類最強だ」

人類最強。なんだそれ。くくく、また笑えてきた。まぁ、そうだな。納得だ。人類最強、いいんじゃねえの。

「ガキ臭すぎてダッセェ」

この後顔面殴られて気絶した。

これが俺の『人生最悪の出来事』である。
禪院甚爾18歳、哀川潤13歳の時の事である。





◆◆◆




哀川さん。あ、いえ潤さんですか。どんな人間、と聞かれても見た通りの人としか言いようがないです。良い人ですよ。あんなのが悪人なわけないでしょう。え、真正面から殴られて骨折られた?ぼくは初対面で蹴られましたよ。パンプスのつま先がぼくの腹にヒット。倒れたぼくの背中を何度も踏みつけて。え?良い人です。そんな不思議そうな顔されてもぼくが困る。
とある人の言葉を借りれば『英雄的存在』『推理小説における名探偵』『怪獣映画における怪獣』ってイメージらしいですよ。大凡合ってます。
?えっと、なんだったかな。ぼく少し物覚えが良くないんです。《赤き征裁》《死色の真紅》《疾風怒濤》《砂漠の鷹》だったかな。しっくり来るのは《人類最強》《人類最強の請負人》ですね。その界隈じゃ有名ですよ。…なんですかその苦虫を噛み潰したような顔は。似たような人間を知っている?潤さんみたいなのがもう一人いるとかぞっとしますね。こんな言い方してますけど潤さんのことは好きですよ。
さて、ぼくはそろそろ用事があるので。…ぼくの名前?人前で名乗らないことにしてるんで。《戯言遣い》とでも呼んでください。
それじゃあ縁があったらまた会いましょう。





◆◆◆









「げぇ!!」

伏黒に「五条先生」と呼ばれた人はすごい声を上げた。なんかあった?俺10秒で戻ってきたよね?と五条サンを見て首を傾げ、五条サンの視線の先…目隠しで何処見てるかよくわかんないけど多分俺の背後かな、と後ろを振り向いたら燃え上がる赤が居た。

「なんで居るの?意味分かんないんだけど?はあ?」

なんでか心底嫌そうな声を上げる五条サンを尻目に、俺は久しぶりに会ったその人に嬉しくなってその人物に駆け寄る。

「潤姉じゃん!久しぶり!」
「ハァ!?潤姉!?君コレの知り合い!?」
「おぅ潤姉さんだ。なんか面白そうなことになってんじゃねえの。なぁ悠仁」

ぐしゃぐしゃと乱暴に俺の頭を撫でる。俺これ好きなんだよね。なんて思ってたらミシッ…と頭から嫌な音がした。頭を、鷲掴みにされている。あ、やべ。これ潤姉おこだわ、激おこだわ。ゆっくりと潤姉と目を合わせる。

にーーっこり

怖い、笑顔が怖い。

「悠仁、何した?」
「おおおおおおおああああ!えっと、えーっと」
「そいつ、特級呪物の両面宿儺の指食ったんですよ」
「お、恵チャン久しぶり」

伏黒も知り合い?伏黒を方を見るとチベットスナギツネ顔をしていた。なにその表情。どういう関係よ潤姉と。「甚爾まだ暫く借りるぜ」と話す潤姉に更に疑問符が浮かぶ。甚爾って誰だろ。むっとしていたら潤姉の腕が首に回る。うわ、密着やばい!なんて顔を赤らめる前にヘッドロックかまされた。赤くなるどころか青くなるわ。やめてしぬ。

「特級呪物を食ったあ?悠仁そんなにひもじかったのか…オマエ、そこまで切羽詰まってるんなら連絡しろよ。飯ぐらい奢ってやるっつーの」
「違うて!ていうか首!首死ぬ!!」
「食ったってことは…腹パンしたら吐き出せるよな?」
「待って待って、潤。無理だから、もう宿儺受肉しちゃったから腹パンしても無理だから」
「あたしに不可能は無い」
「やめたげて」

なんとか腹パン回避した。





「しっかし潤の知り合い、しかも結構仲よさげってヤバいなぁ…どうする恵」
「知りません。俺は親父を生贄に関わらないようにしてるんで知りません。先生どうにかしてください」
「そういう頼り方卑怯だよ?まぁ上に報告するとき『両面宿儺の器が哀川潤の知り合いで、しかも親しげでした〜』なんて言ったらどんな顔するか、観物だけどさ…楽しみだけどさぁ…」








哀川潤
人類最強の請負人。これ以上の説明いるかい?
天与呪縛の呪力無し。伏黒甚爾の遥か上を行くフィジカルゴリラ。


禪院甚爾→伏黒甚爾
幼女潤にフルボッコされた。クズヒモ回避。
婿入りしたとき潤からご祝儀10億もらった。潤に頭が上がらない。
現在潤の使いっぱしり。給料は出る。


虎杖悠仁
幼少期から潤に可愛がられている。
潤に初恋捧げて今も片思い中。多方面から「正気か?」と言われる。なんで??


五条悟
「ぼく最強の称号いらないや」
学生時代に仕事中の潤と遭遇。「天与呪縛ウケる、超雑魚じゃん?」言ったが最後フルボッコにされた。無限?貫通に決まってるじゃないか。
心底潤が苦手。


夏油傑
某村にて潤と遭遇。「猿は皆殺しにする」と言ったところ「それは駄目だろ」と真正面からぶん殴られて骨バキバキに折られた。気絶してたら村人全員フルボッコにされてて「いっそ殺してやれよ」と遠い目をした。猿を皆殺し=潤を敵に回すということなので色々諦めた。高専の先生やってる。


伏黒恵
父親を生贄に心の平穏を手に入れた。


腐ったみかん
「哀川潤こわい」ぴえん


ぼく
戯言遣い。
夏油傑と会話してた。

 
ALICE+