「と、言うわけで新入生の吉野順平君でーす!本来は2年に入るところを、つい最近まで呪術のじゅの字も知らなかったド素人なので1年生になりましたー!交流会も飛び入り参加でぇーっす!拍手拍手ぅ!」
「うざ…」
ぼそりと釘崎の零した悪態に、京都校含めた全員が頷いた。謎のデカイ箱の上に体育座り、虚無の顔で台車で運ばれてきた吉野順平とかいうやつも、五条先生の事を「何だコイツ」みたいな表情で見つめていた。「さらにさらにぃ〜?」とにこにこ顔の五条先生に禪院先輩が「ほんっとうぜえからぶん殴るか」と拳を握りしめた。
「故人の虎杖悠仁君でぇーっす!!」
「はい!!おっぱっぴー!!」
オマエそのタイミングで、しかもそんなアホな感じでてくんの?
箱から勢いよく飛び出した虎杖に場が凍った。妙な空気感に「え…え…?」みたいな解せぬって表情やめろ。生存明かすったってもっとやり方有っただろ。…いや、五条先生の差し金か。残念なことこの上ない。
釘崎の顔見てみろよ。なんとも説明のしようがない表情。俺もオマエの生存知らなかったら同じ顔してた。
「宿儺の器!?」
一番反応を示したのが京都校の楽巌寺学長っていうのがまた…。「いやー良かった良かった。びっくりして死んじゃったらどうしようかと心配しましたよ」なんてすごい楽しそうに笑う五条先生。良い感じに使われてんな虎杖…。「糞餓鬼が」と殺気を放つ楽巌寺学長に「マジそれな」「しゃけしゃけ」パンダ先輩と狗巻先輩が頷いた。人望無いにも程がある。
「おい」
「あ、はい」
「なにか言うことあんだろ」
「え」
あ、釘崎が泣いた。
「黙っててすんませんでした…」
虎杖合流。
「ていうかアンタあんまり驚いてないわね」
「…びっくりしすぎて声が出なかった」
「嘘つけや!さてはオメー知ってたな!あ!アンタあの時には既に虎杖生きてたの知ってたんでしょ!?通りで平気そうな顔してたわけね!!この野郎!!」
「悪かった。俺も半信半疑だった」
「許さんマジ許さん」
「悪かった」
「…今度私に隠し事したら、絶対許さないんだから」
「おう」
割と破ることになる約束である。守ってほしかったらちゃんと縛りを設けろという話だ。「オマエ人のこと言えないクズだな?」なんて親父に言われた。うるせえ一緒にするな。
東京校サイドミーティング
「えっと、改めまして吉野順平、式神使いです。よろしく…お願いします?」
「なんだその疑問符」
「…よく、分からない内に保護されて、いきなり呪術高専に連れてこられて」
「説明一切無し?」
「『君、今日から呪術高専に通ってもらうから、ハイ決定事項〜』でした…」
あんのクソ野郎…とキレる禪院先輩を尻目に「順平高専に来れて良かったな!」「良かった…のかな?」「これから頑張ってこうな…アイツをぶっ飛ばす為に」「ッうん…!」虎杖と吉野はそんな会話をしていた。虎杖関連かよ、死んでた間になにやってたんだコイツは。
釘崎はそんな二人の様子に置いてきぼりを食らい「しらねー間になんか友情育んでますよ?私達なんてクラスメイトが死んだっていうのに、どう思いますぅ?伏黒君」イラッとした様子で俺に話しかけてきた。何キャラだそれ。遺影フレーム渡して「しばらくそうしてろ故人」と、中々にハードなイジメを行う始末。南無。
「吉野は流石に見学か。まぁ最近まで一般人だったらしいし、流石に交流会に放り込むのは酷だしな」
「うわ…パンダが喋った…パンダ…?」
「しゃけしゃけ」
「なんて?」
困惑二人組に説明。
「とりあえずパンダがパンダ先輩で狗巻先輩がおにぎり語ね、完全に理解した!」
グッ!と親指を立てる虎杖とやはり困惑気味の吉野。吉野の反応が正しい。
「で、メンバー増えちまったが作戦変更か?時間ねぇぞ」
「そりゃ悠仁次第だろ。何ができるんだ?」
「殴る蹴る」
「そういうの間に合ってんだよなぁ…」
まぁ禪院先輩は言わずもがな、パンダ先輩も肉体派。ここに虎杖じゃ前衛過剰だろうな。しかし、
「東京校・京都校全員呪力なしで闘い合ったら虎杖が勝ちます」
あのゴリラ親父が「あのガキは見どころあんな」なんて随分愉快そうに言ってたから、まあそういうことなんだろう。何気に気に入られているが一体俺がぶっ倒れてた時何してたんだ。
「面白ぇ」
なるほど、こういうタイプの人間に好かれる奴か。
2年が散らばって、さて俺たちも行くかと思った時虎杖に手を掴まれた。「あのさ、この前の出来事なんだけど!」という言葉で察した。俺が倒れた原因のそれか。
「俺、伏黒の父ちゃんに助けられてさ!直接助けられたのは順平なんだけど」
「あ、そう言えば俺ちゃんとお礼言えてない」
「聞いた。勝手やっただけだ。お礼とかもいらねぇ」
「でも俺伏黒の父ちゃんに酒貢ぐって約束してるし」
…おい。おい!何やってんだクソ親父!虎杖にまで酒たかるとかどういう神経してんだ!思わず額に手を当てた。成程、虎杖のことを気に入ってた理由はこれか。「酒はいらない…」と言うと脳内に「てめえなに勝手に言ってやがる!」と怒鳴るクソ親父の声が響いた。うるせえ!!未成年に酒を要求するな!!
「でも久しぶりに爺ちゃん絶賛のつまみも作りたいし。やっぱお礼したいし。…伏黒の父ちゃんめっちゃ良い人だよな」
「オマエ気は確かか?良い人の定義を言ってみろ」
「そこまで言う?そりゃあ滲み出る駄目人間臭はしたけど」
「滲み出るどころが全面に出てるぞアイツ」
「いや〜でも父ちゃん!って感じしたよ。いいな、ああいう父親」
「おい頭大丈夫か」
「伏黒、父ちゃんのこと嫌い?」
好きとか嫌いとかの次元ではない。
というか虎杖、オマエまさか気付いていないのか?吉野を見ると、複雑な顔をしていた。こっちは気付いてるな。「悠仁、あのさ」と吉野が口を開いてーー
「伏黒…くん、のお父さんて呪れ」
「伏黒の父親…?」
今まで随分と静かだった釘崎の、ドスの利いた声がその場の温度を5℃ほど下げた。「ひっ」と吉野が悲鳴を上げる。
「伏黒の父親…あのクソ野郎か」
「釘崎も会ったことあるんだ?」
「ねぇよ!クズヒモクソ野郎なんか!」
「人の父ちゃんそんなボロクソ言っちゃ…」
「伏黒捨てて再婚相手と蒸発したクソはクズヒモクソ野郎で十分」
「……え」
マジ?と虎杖にぎょっとした目で見つめられた。吉野も身体が固まっていた。
「つーか伏黒ォ、クソ野郎がのうのうと生きてるなんて聞いてねえぞ」
(訳:伏黒くん、お父さんと会ってるなんて聞いてないですよ?蒸発したんですよね?)
「隠し事は許さねえって言ったよな?」
…のうのうとは生きてない、死んでる。死んでいる体で話してなかったからまだ何処かで津美紀の母とよろしくしてると思っていたのだろう。安心はできないけど死んでるから安心しろ釘崎。
「あー…小学生の時に(呪霊になった)親父一人で戻ってきて」
「はァー?」
「五条先生に引き取られてからも…まぁ俺のところ(影)に入り浸ってる」
「アンタがヒモ養ってやる必要ないでしょ!何やってんだ伏黒ォ!クズは殺せ!!」
殺意が高い。「流石に血の繋がった親は殺せないってことね…いいわ、私が殺る」金槌を手の中で遊ばせる釘崎は本気だ。死んでるけど呪霊にも当然効くんだよな…「おーい、オマエなんか変なこと考えてねえか?」たまには痛い目見ろよクソ親父。
「複雑ナ家庭ノヨウデスネ」
「なんでカタコト」
「そんな事情があるって知らんかったし…ていうか釘崎の殺意はなんなん?」
「俺が聞きたい」
自称保護者(非公認)。
「お前らいつまで喋ってんだ!!始まんぞ!!!」
いつまで経っても出てこない俺たちにしびれを切らした禪院先輩が怒鳴りに来た。「やべ、行くぞ!順平いってきます!!」虎杖の声と共に建物を飛び出した。
◆◆◆
「東堂は確実に直で私達を潰しにくる。真依も私狙いで便乗してくるかもな。東堂は化物だ。全員で相手にして全滅するのが最悪のパターン。だから足止めとして一人だけパンダか恵を置いてくつもりだったが…虎杖、オマエに任せる。勝たなくていい、できるだけ粘って時間を潰せ」
「ぶっちゃけオマエは予定外の戦力だからリタイアしてもあまり困らん」
「ひっでぇ」
「悪ィな恵。オマエ東堂とやりたかったろ」
「いいえまったく。またあの会話が発生するかもしれないんで」
『どんな女がタイプだ』事件からの『オマエに愛というものを説いてやる』事件再来は非常に嫌だ。あの後も無理矢理肩を組まれ「好きな女を作れ、いいぞ。愛するということは〜ちなみに高田ちゃんは〜」という会話が30分以上続き、最終的には禪院先輩たちに引き剥がしてもらったのだ。がっちりと肩に回された腕を引き剥がすのにはとても苦労したと先輩談。俺はその間只管無の境地、親父は爆笑してた。
ちなみに釘崎はあっちの禪院さんとひたすら口論してた。
「ある意味時間つぶしに恵は有効か…?」
「勘弁してください」
本当に勘弁してくれ。
「伏黒何があったん?」
「思い出させるな」
以上作戦会議での会話である。
禪院先輩の目論見通り、東堂が単騎で突っ込んできた。虎杖が東堂の顔面に膝を入る。「散れ!!」の合図で虎杖以外が散らばる。結構モロに入ったように見えたが、倒れないところを見ると、それほどダメージは食らってなさそうだ。化物かやっぱり。数十メートル離れ、遠くから「伏黒恵ィ!会ったらまた愛について語ろう!」とか聞こえた。やめろ、本当にやめろ。「あんなムキムキ男と愛を語り合うとかどんな拷問だよ」と心底嫌そうな顔をする禪院先輩に「死んだほうがマシな気がします」と返して笑われた。笑い事じゃない。
「来たな」
「……」
虎杖を餌に京都組全員が釣れた。いや、可笑しい。全員が虎杖狙い?確かに目の前に餌があれば全員で掛かるのは有効だろう。だが、
「禪院先輩」
「あんだよ」
「あいつら」
虎杖を殺すつもりじゃないですか?
楽巌寺学長の指示か。加茂さんも居るし頭固いクソばかりだ。両面宿儺の器が高専に居ることを良しとはしないだろう。交流会に便乗して殺したところで、いくらでももみ消しができる。虎杖が死んだ、任務のように。
「チッ、助けに行くか」
「それは大丈夫です」
「は?」
「東堂が多分、それを許さない」
「…あはは!言えてらぁ。よし、諦めて散らばった瞬間をやるぞ」
「はい」
東堂を信用はしてるが信頼はしない。「誰やる?」「じゃあ加茂さんを」どうせ楽巌寺学長に同調しただろうし。思い切り行かせてもらう。仲間は殺させない。
もう、
ゆらり、影が歪んだ。
「やっぱ上層部も御三家もクズばっかだな」
「…恵、今喋ったか?」
「俺は、喋ってないです」
親父、言いたい気持ちは分かるがうっかり呪力を纏って喋らないでくれ。他人に聞かれる。
目論見通り東堂が虎杖を庇ったことにより、京都校は散り散りになる。とりあえず空の監視を潰す。鵺を出して西宮を墜とす。位置的にはパンダ班の方に墜ちるな。「憲紀と斜め前髪がこっちくるな」斜め前髪…確か三輪サンか。予定通り俺が加茂さんを相手することになった。
「どうしてもって時は俺を使え」
「使えるわけねえだろ。相手は加茂だぞ、アンタを見られるわけにはいかない」
「殺せば問題ねえ」
「問題しかねえよ」
大体殺しは禁止だ。「でも、相手はこっちの仲間を殺そうとしている。そうだろ?」ハァ…呪いみたいなことを言うな。ゆらりゆらりと影が揺らぐ。ああ、呪いみたい、じゃなくて呪いそのものだったな。
ゆらり
影が濃くなる
「加茂さん、アンタら虎杖殺すつもりですか?」
「その通りだ…と言ったら?」
「失敗したんですね。虎杖がこの短時間でやられるわけがない」
「殺す理由がない」
「あるでしょ。上や御三家ならいくらでも」
そうだな
万が一のことがあれば、俺も手段を選ばないことにするか。
[newpage]
まアそりゃあ自分の目の前でダチが心臓えぐり取られたら、ちっとは過保護にもなるわな。俺の息子のくせして、なんでお人好しばっかりが恵の周りに集まるんだかな。人徳か?どうせ俺には持ち合わせてねえもんだよ。俺は育ちが悪いからな。
虎杖とかいうガキは底抜けの善人だ。しかもとんでもねえタチの悪い善人、何でも救おうとする馬鹿。ツギハギ呪霊の件でよく分かった。死に急ぎ野郎。自分がどうなろうとお構いなし。
そういうのは恵にとって地雷だ。
悪人が許せない。善人を蔑ろにする人間が許せない。
ぐるりぐるり
呪力が渦巻く。地雷を踏んだ京都連中に、恵は感情を抑えない。おーおー、良い感じに育ってんじゃねえの。そのまま殺っちまえ。にやにやと影の中から加茂のガキとの戦闘を見ていた。
「俺はオマエの犬だからな、イイ子に『待て』に従ってやるよ」
でもあんまりにもクソ連中が図に乗るようだったら、俺が喉元食い千切ってやるよ。犬は犬でも愛玩動物なんかじゃねえんだ。
ぐるる、喉が鳴った。
「って、楽しみにしてたんだが、ゴミ共に邪魔されるとはな」
この気配あのツギハギ野郎じゃねえか。邪魔しかしねえな連中。呪霊だから当然か。
[newpage]
随分と調子が良い。ドーピングした加茂さん相手に一切遅れを取らない。普段だったら多分押し負けている。ぐるぐると身体を巡る呪力が心地よい。呪力を乗せた武器を撃ち込む。あっさりと吹き飛ばされる加茂さんに、思わず笑う。
「…すごいな。近接戦でここまで立ち回れる式神使いは貴重だよ。成長したね、嬉しいよ」
「ちょいちょい出してくる仲間意識なんなんですか?」
「共感さ。君はゆくゆく御三家を支える人間になる」
勝手に共感するな。その無駄にしゃべる口を閉じろ。俺は伏黒だ。禪院なんて関係ない、御三家なんて知ったことか。興味はない、それどころか嫌悪すら有る。
そう、嫌悪。
親父は昔、軽口で禪院での生活を語った。ただの愚痴のような口調で、今となってはもう過ぎた話だと笑い飛ばしてさえいた。嘘つけ、アンタはずっと恨んでるだろう。そう言うと親父は笑った、げらげらと笑って「禪院に興味ねえよ」と言った。酷い扱いを、綺麗サッパリ忘れられたっていうのか。「オマエも大概善人だよな」と笑う親父を俺自身が否定した。
大切なものを傷つけるものは、全部無くなってしまえばいいのに。
ぐるりぐるり、呪力が渦巻く。
「君と私は同類だ」
「気味悪いこと言わないでください」
自分が一番正しいとは思わない。それでも俺は俺の良心を信じる。
虎杖の生は正しい。だからそれを否定する連中を呪う。分かり合えないのなら
「呪い合うしかないですよね」
満象、と唱えた。次いで鵺。既に出しておいた蝦蟇で加茂さんを拘束し、満象が高質量の水を吐き出す。鵺で追撃。当然反撃の余地は与えない。攻めろ、力で捻じ伏せろ。
「鵺、落とせ」
鵺が加茂さんを地面に叩きつける。死んではいない、もうリタイアするだろう。そう思ったのにボロボロになりながらも加茂さんは立ち上がった。「トドメさしちまえよ」ぞわり、親父が声が脳を刺激した。背中を押されるように、ダンッ、3階から飛び降り、武器を構える。
「私は…ッ負けるわけにはいかないのだ!!」
ドンッ
大きな樹木が天を貫いた。.
伏黒恵
ツンツンうにうに殺意マシマシ少年。
原作よりポテンシャルが高い。そりゃあ甚爾がとんでもない呪力を持っていくから基礎呪力は大きくなるよね。蝦蟇と鵺召喚しながら満象も出せちゃう。加茂さんフルボッコ。虎杖殺すだの御三家がどうのだの、地雷の上でタップダンスするほうが悪い。
体術を甚爾に教わって極めようと思ったけど、そもそも甚爾出しながら動けないから諦めた。五条先生に手ほどきしてもらったが、転がされながらも「親父の方が強いんだろうな」とか思ってた。
伏黒甚爾
恵の犬。狂犬。躾はちゃんとできてますよ?でもご主人一筋だからなんかあったら噛み付く。
ガチで加茂のガキ殺っちまえばいいのにって思ってる。上層部と御三家はクソ。まぁ五条はマシか。真希は同族だから気に入ってる。
ちょっとブチギレてる恵ににっこり。もっと欲望に忠実になれよ。でも調子乗ると俺と五条の二の舞になりそうだな、ってちょっと心配してる。
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