「ははっ、どんな料理が来るんだろう? ワクワクするなぁ」
「ガウリイ、一人でガツガツ食べんじゃないわよ?」
「お前こそ、オレの分残しとけよな?」
───湖のほとりにある、とある街。
その街の食堂にて、彼女達は意気揚々と料理が来るのを待ちかねていた。
なんでもここのメニューに、リナさん曰く『究極かつ至高、幻の高級珍味と言われるキング・オブ・ディナー』なる『ドラゴン料理』があるのだとか。
食に関して煩いリナさんがコレを見のがすはずがない。
早速食堂に入るなり、お金に糸目をつけずフルコースを頼み、その料理が来るのを今か今かと待っているのである。
因みに、私は隣のテーブルでメニューに目を通しているところで、何となく決めかねて、目の前に座る彼に問いかけた。
「うーん、ゼロスさんは何頼みます?」
「僕はホットミルクで」
「食べないんですか?」
「まぁ、必要ないですから」
「……は?」
「いえ、こちらの話です」
そんなやり取りをしていると、アメリアさんがコチラを振り返り、笑顔で言う。
「ユウさん、ゼロスさん。こっち来て一緒に食べませんか?」
そのお誘いに、私は目の前に座っているゼロスと顔を見合わせた。
一瞬沈黙し、私が苦笑したのを見てとったからなのか、それとも元々そのつもりが無かったからなのか。
彼は片手を上げ「お構い無く」と一言で断る。
「……でも」
「放っとけ」
ゼルガディスさんにそう言われるも、納得できないアメリアさん。
その彼女に対し、私は微笑みながら述べた。
「大丈夫ですよ。私達は私達で美味しいものをいただきますから。アメリアさんはドラゴン料理を堪能してください」
「そうですか? それなら良いんですけど……」
まぁ……本音を言うと、リナさん達と相席したくないから、コチラの席に避難しているのだが。
あの食事風景には大分なれたとは言え、嗜好の料理を目の前にした彼女達についていける自信は無い。
そうこうしている内にもリナさん達のテーブルにはドラゴン料理が並べられ、彼女達の歓声が食堂に響き渡った。
店中の視線がリナさん達に降り注がれるが、勿論彼女達が気にするはずもなく。
『いっただっきまーす!』
声高らかに述べ、リナさん達はドラゴン料理を口へと運ぶ。
常であるならそこから争奪戦が始まる食事風景。
けれど、今回は違った。
先程まで嬉々としていたリナさんの手から、ナイフとフォークが滑り落ちたのだ。
「どうした? リナ」
不思議に思ったゼルガディスさんは問い掛けつつ料理を口に運ぶ───が、しかし。
「何だこりゃ……不味くて食えたもんじゃないぞ」
「そっかぁ? 食えるぜ、コレ」
「スープも香辛料でそうとう誤魔化しています! とても宮廷料理とは思えませんっ!」
「こんなものを客に食べさせるなんて」
「これは絶対に悪ですっ!」
次々に文句を連ねるリナさん達。
そんな中、ガウリイさんだけは料理を食べ続けている。
……うーん、記憶だけじゃなく味覚も危ないんだろうか?
そう思いつつ、彼から視線を外し───ふと、料理を持ってきたウェイターを見ると、何故か逃げ腰だった。
リナさんはそんな彼をぐいっと腕を伸ばし引き留めると、睨み付ける。
「厨房まで案内なさい」
「ひぃ〜っ」
リナさんに恐れおののいたウェイターは、彼女の要求に逆らう事も出来ず、案内と言う名の連行のもと、アメリアさんとゼルガディスさん共々連れていかれた。
「おい、リナ。残すのか? 雨でも降んなきゃ良いけど」
その様子を見ていたガウリイさんは、ここぞとばかりに残った料理を掻き込んでいる。
それに対し私はガックリと項垂れながら呟いた。
「面倒がなければ良いけど……」
───と。
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