サイカク(1/10)

「ははっ、どんな料理が来るんだろう? ワクワクするなぁ」

「ガウリイ、一人でガツガツ食べんじゃないわよ?」

「お前こそ、オレの分残しとけよな?」



───湖のほとりにある、とある街。

その街の食堂にて、彼女達は意気揚々と料理が来るのを待ちかねていた。

なんでもここのメニューに、リナさん曰く『究極かつ至高、幻の高級珍味と言われるキング・オブ・ディナー』なる『ドラゴン料理』があるのだとか。

食に関して煩いリナさんがコレを見のがすはずがない。

早速食堂に入るなり、お金に糸目をつけずフルコースを頼み、その料理が来るのを今か今かと待っているのである。

因みに、私は隣のテーブルでメニューに目を通しているところで、何となく決めかねて、目の前に座る彼に問いかけた。



「うーん、ゼロスさんは何頼みます?」

「僕はホットミルクで」

「食べないんですか?」

「まぁ、必要ないですから」

「……は?」

「いえ、こちらの話です」



そんなやり取りをしていると、アメリアさんがコチラを振り返り、笑顔で言う。



「ユウさん、ゼロスさん。こっち来て一緒に食べませんか?」



そのお誘いに、私は目の前に座っているゼロスと顔を見合わせた。

一瞬沈黙し、私が苦笑したのを見てとったからなのか、それとも元々そのつもりが無かったからなのか。

彼は片手を上げ「お構い無く」と一言で断る。



「……でも」

「放っとけ」



ゼルガディスさんにそう言われるも、納得できないアメリアさん。

その彼女に対し、私は微笑みながら述べた。



「大丈夫ですよ。私達は私達で美味しいものをいただきますから。アメリアさんはドラゴン料理を堪能してください」

「そうですか? それなら良いんですけど……」



まぁ……本音を言うと、リナさん達と相席したくないから、コチラの席に避難しているのだが。

あの食事風景には大分なれたとは言え、嗜好の料理を目の前にした彼女達についていける自信は無い。



そうこうしている内にもリナさん達のテーブルにはドラゴン料理が並べられ、彼女達の歓声が食堂に響き渡った。

店中の視線がリナさん達に降り注がれるが、勿論彼女達が気にするはずもなく。



『いっただっきまーす!』



声高らかに述べ、リナさん達はドラゴン料理を口へと運ぶ。

常であるならそこから争奪戦が始まる食事風景。

けれど、今回は違った。

先程まで嬉々としていたリナさんの手から、ナイフとフォークが滑り落ちたのだ。



「どうした? リナ」



不思議に思ったゼルガディスさんは問い掛けつつ料理を口に運ぶ───が、しかし。



「何だこりゃ……不味くて食えたもんじゃないぞ」

「そっかぁ? 食えるぜ、コレ」

「スープも香辛料でそうとう誤魔化しています! とても宮廷料理とは思えませんっ!」

「こんなものを客に食べさせるなんて」

「これは絶対に悪ですっ!」



次々に文句を連ねるリナさん達。

そんな中、ガウリイさんだけは料理を食べ続けている。

……うーん、記憶だけじゃなく味覚も危ないんだろうか?

そう思いつつ、彼から視線を外し───ふと、料理を持ってきたウェイターを見ると、何故か逃げ腰だった。

リナさんはそんな彼をぐいっと腕を伸ばし引き留めると、睨み付ける。



「厨房まで案内なさい」

「ひぃ〜っ」



リナさんに恐れおののいたウェイターは、彼女の要求に逆らう事も出来ず、案内と言う名の連行のもと、アメリアさんとゼルガディスさん共々連れていかれた。



「おい、リナ。残すのか? 雨でも降んなきゃ良いけど」



その様子を見ていたガウリイさんは、ここぞとばかりに残った料理を掻き込んでいる。

それに対し私はガックリと項垂れながら呟いた。



「面倒がなければ良いけど……」



───と。

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