「狙うはレイクドラゴン! この湖に棲む最高の食材ッ!!」
料理長であるアシュフォードさんの言葉を聞きながら、私は一人やるせなさに苛まれていた。
リナさん達が厨房へ入っていくと、この料理長さんが出てきて彼女達への非礼を詫びてくれたらしい。
何でも、リナさん達に出されたのはドラゴンの肉ではなく、オークやナメクジラだったとの事。
そこでお詫びも兼ね、ドラゴン料理を作ってくれると約束してくれたのだとか。
───まぁ、そこまでは良い。
が、しかし。
「まずはこの対ドラゴン用ネットで勝負!」
何ゆえ、料理に使うドラゴンを私達が仕止めなければならないのか?
何ゆえ、なし崩しに私まで船に乗っているのか?
と言うか……リナさん達に出された料理うんぬんの事実を知らされたのが、船に乗ってからだったのだ。
勿論私は引き返そうとした。
「面倒事はごめんです」
そう主張もした。
しかし、引き返そうとした時には既に陸からかなり離れていたのだ。
まぁ、ここは海ではなく湖なので陸が遥か彼方……と言う程ではないが、さすがドラゴンが棲んでいるだけあってそれなりに大きい。
浮遊等の術を使えば戻ることは出来るだろうが、疲れる事は目に見えている。
そこで私は仕方無くこの場に留まり、ドラゴンを仕止めるのを見ていることにしたのだけれど……。
「対ドラゴン用って……何か仕掛けでもあるの?」
「もちろん! 対ドラゴン用にデカくなっておる!」
『……え゛』
胸を張って答えたアシュフォードさんの言葉に、私達は声をハモらせ固まった。
ドラゴンに対してネットのみって……。
何かとてつもなく嫌な予感がするのだけれど……。
やはりここは多少の疲れは目を瞑り、岸に戻ろうか。
そんな事を考えていると、料理長さんは嬉しそうに指示を出した。
「よーし、ここいらに網を仕掛ける! 錨を降ろせぇ!」
……いかり?
そんな物この船で見掛けただろうか?
帰るのを一旦保留にし、私は皆とキョロキョロと辺りを見回す───が、しかし。
『そんな物ありませーん』
またも揃う一同の声。
「し、しまった……対ドラゴン用武器ばかりでその事すっかり忘れとった」
「忘れないで下さいよ、そういう大切なことは……」
「大丈夫なのか……おい……」
「しゃーない……いかりの代わりになるものは……と」
呆れる私達をよそに、リナさんは再度辺りをキョロキョロと見渡し、ふと何か閃いたのだろう。
ゼルガディスさんに視線をやると、はたと一瞬動きを止めた。
「ん?」
「ゼル、あんた体重どんぐらい?」
「……何故おれに聞く……」
ってまさかリナさん、彼を代わりにするつもりじゃあ?
思う内にも彼女はゼルガディスさんを取り押さえにかかっている。
「ちょっと待て! おい! いくらなんでもそんな……よせっ! アメリアっ! 何とか言ってくれっ!!」
「可哀想なゼルガディスさん……せめて息だけは出来るようにしてあげますからね」
「え゛!?」
助けを求めたアメリアさんにまで『ホース』と『じょうご』を持ち出され、固まる彼。
───そして。
どぼぉーんっ!!
「ぜーるー! 動いちゃダメよぉーっ? あんた、いかりなんですからねぇっ!」
リナさんは船から身を乗りだし、湖の底に沈んだゼルガディスさんへと声をかけた。
それは、ドラゴン料理の為ならある程度の犠牲をいとわない事を示している。
……私はこっそり深い深い溜息を吐いた。
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