ゼルガディスさんが湖に沈んでから、しばし。
リナさん達は暖かな陽射しの下、のほほんとお茶をしていた。
そんな中、心優しいアメリアさんはポットを片手に船べりへ駆けて行き、
「ゼルガディスさん! お茶ですよぉ! 今あげますからね!」
「って、ちょっと待って! アメリアさんストップっ! 死んじゃいますってっ」
じょうごに向かってお茶を注ごうとするのを慌てて止め───と、その時。
水面から「ゴボゴボッ」というのが聞こえた。
「ん? リナさーん! ゼルガディスさんが何か言ってますぅ!」
「……何かって」
沈めといてそれはないと思うのだが……。
「何何何?」
呆れる私には構わずリナさんもこちらへと駆け寄り、船から乗り出して見たものは……。
「げっ!? 出たッ!!」
湖面の下、巨大な黒い影が船へと近づいている。
「よし! 網を投げ込めッ!!」
「うわああぁーっ!!」
「ゼルガディスさんっ!?」
アシュフォードさんの号令が掛かるが、私達が動くより先に水面からドラゴンの首が姿を表した。
しかもその口にはゼルガディスさんへと繋がっているロープが咥えられており、彼もまた、悲鳴を上げながら姿を見せる。
けれど。
「デカいーっ!!」
「こいつは大物だぁッ!!」
ドラゴンの大きさに驚いたり歓声を上げたりで、誰も彼の心配をする者はいない。
リナさんなど、ナイフとフォークを何処からともなく取りだし、「食いでありそぉっ♪」……と、こうである。
少しはゼルガディスさんの心配しましょうよ……皆さん。
そう思うが、皆の……特にリナさんの頭の中には既にドラゴン料理が占めており、彼女は竜破斬の構えを見せる。
ってそんな事をしたらゼルガディスさんが……。
「リナさん待っ……」
「いかーんっ!!」
「へ? あれ……」
私の制止の声より遥かに大きい料理長さんの声に驚き、リナさんの術は不発に終わる。
その所為で無傷のドラゴンに船のマストを折られてしまった。
まぁ、何にせよゼルガディスさんの安全にはかえられない。
「ちょっと! どうして止めんのよっ!?」
「このたわけっ!」
「そうですよ、ゼルガディスさんが……」
「魔法でドラゴンを仕留めるなど言語道断っ!!」
「ぇ?」
「そんな無粋な真似、我が先代の名にかけて断じてまかりならんっ!」
って、そう言う理由で止めたんかい。
……この人達に心配と言う言葉は無いのだろうか?
呆れて彼女達を見やるも、どうやら私自身、人の心配をしていられる状況ではなくなってしまったようだ。
何故ならドラゴンが起こした渦潮に、私達の乗る船が呑み込まれたのだ。
…………あぁ。
やはり岸へ帰るべきだった。
そんな私の呟きは、リナさん達の悲鳴に書き消された。
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