とんだ災難に遇った……。
水で滴る服を絞りながら、私は大きく溜め息を吐く。
『人間、諦めが肝心』
けれど、ものには限度がある。
再三ドラゴンを捕まえる為、湖へと船を出すリナさん達と別れ、私は一人岸へと残った。
とてもじゃないが、これ以上は身が持たない。
それに彼女達には悪いけれど、それほどドラゴン料理を食べたい訳でもないし。
そんなこんなで、先に街へ帰ろうと歩き出し……ふと、あることを思い出して私は踵を返した。
昨夜アメリアさんと居た時に感じた視線。
その主を探しに。
───光がこぼれる森の中、辺りを散策し始めてしばしの時が流れた。
が、一向に探し人は見つからない。
場所を移動してしまったのか、はたまた私の勘違いだったのか。
これ以上の捜索は無理かと諦めかけた、その時。
「……シンプル イズ ベスト」
割と近くで聞こえた呟きに周りをキョロキョロと見渡すと、声の主は樹の枝の上で器用に寝っ転がりながら湖を眺めていた。
否───正確に言うならば、リナさんを、と言うところだろうか……。
「……ゼロス」
「おや、ユウさんではないですか」
「おや、じゃないですよ。全く」
木の下から呼び掛けた私に応えたゼロスは、いつものようにニコニコと笑いながらこちらを見下ろした。
「昨日はよくも途中で逃げてくれましたね」
「いやぁ、そんな事もありましたかねぇ」
「ボケるのにはまだ早いですよ」
「いえいえ、若く見えるかもしれませんがこれでも意外と歳はいってるんですよ」
「意外とって、何歳なんですか?」
「それは秘密です♪」
…………………………。
「あぁそーですか」
「あれ? そんな反応ですか」
「そんな反応です」
返す私に、ゼロスはつまらなそうに肩を竦める。
いちいち突っかかっても、疲れるのは目に見えている。
しかもコチラが一方的に。
それなら無駄な突込みは入れないのが吉である。
「ところで首、疲れませんか?」
…………は?
何の脈絡も無しに言われたその言葉に、私は動きを止める。
一瞬何を言われたのか分からなかった。
一体何を?
訝しげながら視線だけで説明を求めると、ゼロスは座っている木の枝をポンポンと叩きながら、
「こちらに来ませんか?」
と笑う。
ニコニコと。
私は「はぁぁぁ」っと溜息をついた。
「前々から思ってましたけど、ゼロスってマイペースですよね」
「ユウさんには言われたくないですけどねぇ……」
「…………」
まぁ、今は何も言うまい。
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