取りあえずこのまま話すのもなんだし……と、私はコチラに向かって手を伸ばすゼロスの元まで浮遊の術で浮かび上がった。
そしてそのまま出された手はスルーし、場所を空けてくれた彼の隣に腰掛け術を解く。
が、意外と不安定な状態に、思わず近くにあったゼロスのマントの端っこを掴んでしまった。
「………………」
「……あ、すみません」
無言でそれを見つめる彼に気づき慌てて手を放すと、ゼロスは笑いながら、その手を包むように上から握りしめて言う。
「こっちの方が安心できるでしょう?」
どこか楽しげな彼を邪険にすることも出来ず、私は苦笑した。
「……ありがとうございます」
「いえ」
「でももう大丈夫で……」
「あぁ、そうそう」
って、人が話している時に『そうそう』も何も無いと思うのだが……。
『何?』と視線で問えば、彼は空いている手の人差し指を私の唇に乗せ、
「敬語、やめませんか?」
と微笑んだ。
「何ですか、急に」
「いえ、前から思っていたんですよ。僕達そんな他人行儀な間柄じゃあ無いでしょう?」
「………………」
それはいつかと同じ言葉だった。
それほど遠くない過去に聞いたセリフ……。
「ってどうしてそこで黙り込みますかね?」
「いえ……と言うか私達、思いっきり他人なんですが?」
「そんなあぁ、酷いですよぉっ」
私はいつかと同じ受け答えをし、彼はいつかと同じ様に情けない声を上げる。
その事が可笑しくて───嬉しくて。
私は思わず笑ってしまう。
「ユウさん?」
「あぁ、ごめんなさい……そうね。ゼロスがそれで良いのなら」
「えぇ、構いませんよ。むしろ僕は少しくだけた感じのユウさんの方が好きです♪」
…………好きって………。
「じゃあ、やっぱり敬語のままでいこうかな」
「何でですかっ!?」
「嫌がらせに決まってるじゃない」
そう言った言葉は既に敬語ではなく。
一瞬ピシッと固まりつつも、それに気付いたゼロスは、苦笑しながら頬をポリポリと掻いた。
「ユウさんて実は悪戯好きでしょう?」
「それ……ゼロスには言われたくない……」
「おや、心外ですねぇ? 僕はいつも真面目ですよ?」
「尚更悪いってば……」
笑顔の彼に私は呆れ───とその時。
何故か突然、地面が大きく揺れだした。
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