「材料は揃った。待っておれ、今から最高のドラゴン料理を作ってやる」
リナさん達と合流し、街の食堂へと戻ってきた私達。
アシュフォードさんは早速料理へと取り掛かっていた。
その表情はとても嬉しそう。
そしてもう一人、料理が出来るのを心待ちにしているリナさんも、とても嬉しそうだった。
「で、まずは何を食べさせてくれるのかしら?」
「まずは、ドラゴンのワイン蒸しだ!」
「おぉっ♪」
「肉の旨味を引き出す為、特上のワインを入れ、圧力釜で煮込むこと二週間!」
「二週間っ!? ……ま、まぁ良いわ。それ位なら待っちゃうわ」
「……待つんですか?」
「だってドラゴン料理なのよっ!? 最高級の幻の料理なのよっ!?」
呆れる私の声に、リナさんはそう主張する。
が、しかし。
「そこから更に特製ソースを作り、盛り付け終えるのに一ヶ月!」
「い、い……一ヶ月っ!?」
「腐りませんか? そんなことして……」
アメリアさんの至極真っ当なツッコミ。
しかしこれはまだまだ序の口だった。
「ドラゴンの生命力はそんなにやわでは無い。素材が新鮮なればこそ、半年間もの料理に耐えうるのだ!」
『半年ぃっ!?』
流石にこれには皆の声が揃った。
かく言う私は言葉もない。
「極限のドラゴン料理だからな! 作る側も食べる側も真剣勝負だ!」
「そんなには待てんぞ……」
「諦めた方が良さそうですね」
「オレ、オークの肉で良い……」
口々に諦めの言葉を紡ぎ……けれど、諦め切れない者が一人。
言わずと知れたリナさんである。
「ヒレのスープは?」
「煮込んで出汁を取るのに二ヶ月かかる」
「……じゃあ、しゃぶしゃぶ!」
「熱で煮える様になるまで三ヶ月寝かさなきゃならん」
「……じゃあ、ドラ刺し!! お刺身なら直ぐ食べれるでしょっ? ちゃちゃちゃっと」
「三ヶ月、土の中に埋めて毒を抜かないと、死ぬ」
あーあー……。
上げる料理名のことごとくを一刀両断され、遂にリナさんがキレれた。
死んでも良いからと生肉にかじり付き、それに気付いたアシュフォードさんが止めにかかる。
ガウリイさん達はその様子を見て、仕方がないと頷きあい、リナさんを捕獲しにかかった。
「誠にもって残念だが……」
「先を急ぐのでな」
「正義の為に旅を続けなければならないのです」
「ああっ! あたしの正義はドラゴン料理を食べる事なのっ!!」
「さて、僕達も行きましょうか、ユウさん」
「……そうね」
食べたいと駄々をこねるリナさんを眺めながら、私はゼロスの言葉に従う。
そして彼はペンダントを───リナさん達にそっくりな、アシュフォードさんの家族写真が入ったペンダントを。
そっと戸棚の前に置き、私達はその場を後にした。
「……アシュフォードさんの言ってたことはデタラメじゃなかったのね」
「本当にそっくりでしたねぇ」
「あんた達だって食べたいでしょっ!? だったら食べようよっ」
そして、先を行くリナさんの声を聞きながら、私達は次の目的地へと旅を続ける。
「あたしの……あたしのドラゴン料理ぃ〜〜っ!!」
静かな湖のほとりにある街を背にして───……。
あとがき
捕らえ所の無いアナタ。
それでも、マントの端っこ位は掴む事が出来たでしょうか───?
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