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……コンコンコン。

部屋の扉をノックしてみるが、やはりと言うか何と言うか……中からの返事は返ってこなかった。

私は隣で心配そうにしているリナさんに「大丈夫ですよ」と伝え、部屋の主の了解も無いままに、ドアノブを静かに回す。

カチャ……と言う小さな音がして、扉は容易に開かれた。

どうやら鍵は掛かっていなかったらしい。

私はひとつ息を吐くと、そっと、部屋の中へと足を踏み入れた……───。
















「ねぇ、ユウ。どうしたら良いと思う?」



そうリナさんに問われたのは夜も更けた頃。

この国に着いたのはまだ陽の高かった時間だったので、大分時間が過ぎていた事をあらわしていた。

リナさんは私に問い掛けつつ、ある扉の前でウロウロと忙しなく行ったり来たりを繰り返していた。



「リナさん、取り敢えず落ち着いてください。出産を心配する父親のようですよ?」

「そんな事言ったって、アメリアが……っ!!」



そこまで言ってリナさんは、ハッとしたように口をつぐむ。

そう、ここはアメリアさんが(こも)って出て来なくなった書室の前。

中にはアメリアさんが居るのだ。



「ゴメン。あんたに当たったってしょうがないんだけど……」

「いえ、それだけアメリアさんを心配してるって事ですよ」



何でも無いと言うように微笑み、そして他の二人へと視線を移す。

他の二人───もちろん、心配したガウリイさんとゼルガディスさんへと。

アメリアさんが聖堂を駆けて出ていってから早、数時間。

彼女はここに籠ったきり、一歩も外へと出てきていない。

食事も取らず、ずっと塞ぎ込んでいるのだ。



「で、どうしたら良いと思う? いっその事、お酒でも飲ませて忘れさせちゃうとかどう? なんだったらガウリイに忘却する術を伝授してもらうって手もあるわね!」



って、もしもし……?



「だが、仮に成功したとしてもその後はどうする。ガウリイ並の記憶力になりかねんぞ?」

「いやぁ、それほどでも」



褒めてないですって。

テレるガウリイさんに内心突っ込みつつ、私は苦笑した。



「あ、殴って記憶喪失にしちゃうとか!」



うーん、混乱してるなぁ。

忘れさせる事では何の解決にもならないだろうに……。

しかしゼルガディスさんまで動揺するとは珍しい。

そして何故もっとシンプルに、尚かつ素直に『慰める』と言う選択肢が出てこないのか……。

その事を尋ねると、リナさんは困った様に鼻の頭を掻き、



「……それはまぁ、そうなんだけど……」

「何か理由でもあるんですか?」

「……ガラじゃ無いってのも勿論あるけど、苦手なのよね……」



まぁ、確かに。

リナさんに慰められると言うのも、それはそれで怖いものがある。

そう思いつつゼルガディスさんへと視線を移すが、彼もまた、こう言う事には不向きだろう。

ガウリイさんは…………考えるまでもない。

私はやれやれと嘆息すると、彼女達に困った様に笑って見せた。



「それで、リナさん達は私に様子を見て来いって言いたい訳ですね?」

「ほら、ユウって何か安らぎイオンとか出してるじゃない? 近くに居ると何かどうでも良くなるって言うか、何とかなるかなぁと思えると言うか」

「…………一応、褒め言葉として受け取っておきます」

「悩んでいるのが馬鹿らしくなる事は確かだな」

「そんな……人を見てるだけで和む癒し系グッズの様に言われても……」



それじゃあまるで私が考え無しのように聞こえる。

しかし余程せっぱ詰まっているのだろう。

リナさん達はすまなさそうな顔をし、コチラを見ていた。

……やれやれ。



「仕方ないですね」

「それじゃあ!」

「私もアメリアさんが気になるのは確かですし。それに、あまり一人にしておくのも……」



彼女の父親が狙われた。

となるとその彼女の身も安全とは言いがたい。

重い空気の中、頷くリナさんに、私はなるべくやわらかく笑い……───そして部屋の扉を叩いたのだった。

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