「もう、アメリア! あんたがしっかりしないでどうすんのよっ!? この国はどうなるのっ!! それに、あんただってフィルさんみたいに、いつ狙われるか分かんないのよっ!?」
「……え?」
ガッシリと肩を掴まれながら説明され、その事が思いも寄らなかったのか、アメリアさんは私へと困惑の視線を巡らす。
私は彼女へとコクンと頷き、それを見ていたリナさんは説明を続けた。
「まぁ、フィルさんは多少行き過ぎであっても根は究極な平和主義者な訳だし、人に恨みを買うような人じゃない」
……多少行き過ぎてて平和主義者……?
何か矛盾してないだろうか?
…………。
いや、まぁ……あまり深く考えないでおこう。
「それなら、フィルさんが襲われた理由として考えられるのは二つ。セイルーンを狙う敵国が、フィルさんのリーダー的存在を煩わしく思ったか、それとも……」
「……ま、まさか」
「フィルさんの持つ、第一王位継承権を欲している者の仕業。もしそうなら、突如帰ってきたフィルの娘、第二王女であるアンタも当然邪魔になる」
「もしそうだとしたら、一体誰が?」
ビシッと指を突き付けられたアメリアさんは、リナさんへと意見を求める。
リナさんは腕を組み、唸りながら答えた。
「うーん、問題はそこなのよね……」
彼女は難色を示し───とその時。
ピガシャアッ!!
雷が轟き、空に稲光が走った。
しかし問題はそこでは無い。
雷光によって、窓辺に佇む大きな黒い人影が浮かび上がったのだ。
体格から言って男と思われる不審者。
黒い全身タイツの胸の部分には大きく『X』と書かれている。
突如現れたその人物に驚き、リナさんは悲鳴を上げた。
私とアメリアさんもあまりの事に声を失い……と、そこに。
「アメリアっ!!」
「っ!?」
ゼルガディスさんが魔力を手に集めながらドアを破り部屋に入ってくる。
「ふせろ! 火の矢っ!!」
窓に向かって一直線。
ゼルガディスさんの放ったそれは、侵入者のへばり付いていた窓へと当たり、轟音を響かせた。
その騒ぎに駆け付けてきたガウリイさん。
って、彼も近くに居たはずだが……何故今このタイミングでこの場所に?
「な、何だ? どうしたんだっ!?」
「賊だ! 油断するなっ!!」
状況を問い掛ける彼にゼルガディスさんが答える。
───が、しかし。
「ダメよ……相手はもう逃げたわ」
「何?」
窓の外ではようやく兵が動き出したみたいだが、この様子じゃとても捕まえるのは無理だろう。
それより、
「ところでガウリイさん。今まで何してたんですか?」
「え? あぁ、いや、ちょっと居眠りを……」
「このクラゲッ! この大変な時に何やってんのよ!?」
「何ってだから居眠りをだな……」
「んな事聞いてんじゃないのよっ!!」
リナさんにどつかれるガウリイさんをしり目に、私は一人違和感を覚えていた。
この数週間で、記憶力はともかく、ガウリイさんの野生の勘が剣術と視力とともに桁外れに凄いことは知っていた。
そのガウリイさんが、寝ていたからと言って侵入者に気付けなかったと言うのはどう考えてもおかしい。
───……一体?
そう思う隣で、何かが吹っ切れたアメリアさんが天に向かって叫んでいる。
「自分の悪しき野望を叶える為に父さんを……っ」
「あ、アメリア?」
「絶対に許せないっ!! その悪は父さんに代わってこのわたしが! わたし自ら正義の鉄槌を下してやるーーーっ!!!!」
正義に燃えるアメリアさんの決意を聞きながら、私は額に汗をし。
そして───黒い影の消えた雨降る外へと思いを馳せたのだった。
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