───翌朝の街外れ。
リナさん達はぞろぞろと……否。
ダラダラと、道を歩いていた。
私はと言えば、あまりの眠たさに歩くのも億劫で浮遊で浮かびつつ、ふわふわと彼らの後を付いて来ていたりする。
確かに昨夜『私に出来ることなら力になる』と言ったものの、さすがにこんな早朝から駆り出されるとは思いもよらなかった。
それは彼女達も同じようで……。
「ふわぁあぁ……夕べの怪人騒ぎですっかり寝不足……」
「おいアメリア〜。こんな朝っぱらから、一体どこ行こうってんだよぉ?」
「決まってるじゃないですか! 現場検証ですっ!!」
「げ、現場ぁ?」
「検証……?」
アメリアさんの言葉に、ガウリイさんとゼルガディスさんは疲れた声を出す。
それに対し、先頭を歩いていたアメリアさんはくるりと振り向き、張り切った様子で力強く答えた。
「父さんの襲われた所に行って、もう一度洗い直すんです!」
「んなまどろっこしい事しなくたってさぁ、怪しい奴片っ端から締め上げれば良いじゃん」
「例えば、あのクリストファとか言う奴……」
「うーん。ま、一応セイルーンの第二王位継承者だしぃ、確かに真っ先に疑わしいのが……」
「とにかく! これは王宮内に関わる大問題です! 迂濶な行動は出来ません!」
「ちっ、夕べの怪人さえ取り逃がさなければ……」
「ぼやいていても始まりませんよ! 例え、どんなに手強い敵が襲ってこようとも、わたし達正義の仲良し5人組が力を合わせればっ! 恐いものなんか無いですっ!!」
「……そう言う呼び方は止めろ」
「って、あれ?」
「そう言えば……ゼロスの奴、どこ行った?」
「ちょっとユウ、あんたゼロスがどこ行ったか知らない?」
「……………………」
「……ユウ?」
「リナさんリナさん、ユウさんてば立ったまま寝てるみたいですよ?」
「さっきまで浮いてたのになぁ」
「遂に力尽きたか……」
「って、起きろーーーっ!!」
スパァーンッ!!
その衝撃は、私の頭を襲った。
「……い、痛い……」
「寝てるアンタが悪いのよ」
「ぅ〜、目ぇ瞑ってただけで寝てませんよ……話しは全部聞いてました」
見ればリナさんの手には愛用のスリッパが握られている。
どうやらアレで叩かれたらしい。
そして涙目になりつつ反論する私に、リナさんはジト目でこちらを見やり、
「じゃあ何であたしの問いに答えなかったのよ?」
「眠くて面倒だったので」
「尚更悪いわっ!!」
私の頭に第二波が襲ったのは言うまでもない。
「……えーと、ゼロスさんの事なら知りませんよ? いつもの様に気付いたら居なくなってました」
「本当でしょうね?」
「嘘言って私に何のメリットがあるんですか」
「……それもそうか」
どうやらそれで納得してくれたようで、リナさんは後ろ頭をポリポリと掻いた。
「と、それから昨日の怪人Xの事ですが」
「……何よ、その『X』ってのは?」
「だって胸の所に大きく書いてあったじゃないですか、『X』って」
「いや、何でも良いけど……それで、他に気付いたことでもあるの?」
彼女の問いにコクンと頷き、そして私はアメリアさんへと視線をやり、意見を述べる。
「あの怪人、本当にアメリアさんを狙ったんでしょうか?」
「どう言う事よ?」
「あの怪人には殺気がなかったみたいなんです」
「そりゃあ、プロの暗殺者なら殺気ぐらい消せるでしょ」
そう、現に私達は怪人が目の前に現れるまで気付く事が出来なかった。
それに気付いたのはゼルガディスさんのみ。
───けれど。
私は、今度は隣に居たガウリイさんへと目をやり、
「でもコチラには、気配探知機と言っても過言ではない、ガウリイさんが居たんですよ? 殺気をころしていたとしても、彼に気付かれずに部屋に近づけるとは到底思えません」
「……それもそうね? とすると昨日の怪人は何の為に……」
「とにかく!」
と、そこに割り込んできたのはアメリアさん。
「今は昨日の怪人よりも証拠です! 証拠さえあれば、おのずと道は開かれますっ!!」
彼女は自分の身より、お父さんを襲った犯人を見つける方が先だと息巻いていた。
……はぁ。
「これは何を言っても無駄なようね」
「ですね」
「だな」
「うん」
拳を振り上げ、明後日の方に熱き誓いを立てるアメリアさんの後ろで、私達は深い深い溜め息を吐いたのだった。
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