「うっひゃあ、こりゃスゲーわ」
「見事に何もないな」
アメリアさんに引き連れられやって来た場所は、一面が荒廃しきっていた。
緑はなく、ただ、地面と木炭のみがそこにある。
それは爆発の凄まじさを物語っていた。
「これじゃあ、いくら土を掘り返したところで、精々モグラのステーキしか出てこないわね」
「何を言ってるんですか、リナさん! 犯罪捜査の基本は粘りと根性! そして正義を愛する心ですっ!!」
ガッツポーズをしながら、焼けた木の上に立つアメリアさん。
そんな彼女に、額に汗しながらもリナさんは「降りといで……」と声をかけている。
「とは言っても……流石にコレじゃあなぁ」
「ちっ、無駄足か……こうしてる間にもゼロスの奴……」
言ってゼルガディスさんは炭になった木を苛立ち紛れに踏みつけた。
うーん、嫌われてるなぁ……ゼロス。
まぁ、今までの行動を考えたら仕方ない気はするけど。
「大丈夫だってゼル、出し抜かれたりなんかしないから。もしこの街の図書館とかに異界黙示録の手掛かりになる物があったって、街は今、フィルさんの事で大騒ぎ。正体不明のゼロスなんて、門前払いが精々ってとこね」
「そうです! そんな事よりも今は、父さんを襲った犯人を突き止める事の方が先決です!」
「そんな事って……お前なぁ」
意見するゼルガディスさんだが、もちろん正義に燃えた暴走娘は止まらない。
「その為にも証拠が必要なんですっ! 証拠があぁぁーーーっ!!」
その様子に、私とガウリイさんはゼルガディスさんの肩に手を乗せ、『諦めろ』と言う意味を込めて頷いた。
今の彼女には証拠が全て。
他の人に気を回すことなど出来ない。
そうこうする内にも、アメリアさんはスコップで土を掘り返し始めた。
「証拠か……結局、フィルもその証拠が欲しくて動いたとは考えられないか? リナ……」
先程のアメリアさんの言葉を水に流し、ゼルガディスさんがそう述べた、まさにその時。
私達の背後に、突如として一つの気配が生まれた。
それに気付かぬフリして、リナさんは言う。
「自ら敵に襲われやすい状況を作って、そこを押さえるつもりだった……」
「はっはぁ、まるで今のオレ達みたいだな」
「無論、また敵さんの方から現れてくれるなら願ってもない事だ」
───光よ 我が手に集いて閃光となり……───
彼女達が話を進める中、私はそっと呪文を紡錘ぐ。
後ろの敵に気付かれないように。
「ただ気になるのは、単なる暗殺者にあのフィルさんがそうそう簡単にやられちゃうかって事。この事件、裏では結構な大物が絡んでいるかも……」
呪文を唱え終わり、リナさんと視線を交わしたのは一瞬。
私達はコクンと小さく頷き合い、そして───
「火の矢っ!!」
「烈閃槍っ!!」
振り返り様に放った私達のそれは、寸分違わず上空の敵へと突き進み直撃した。
と思いきや、次の瞬間には笑い声が響き渡る。
しかし、その姿は何処にもない。
「魔族かっ!?」
「ふん、こりゃ予想以上に大物だわ」
「じゃあそう言う訳で。皆さん、色々お世話になりました」
「って、なに逃げようとしてんのよ、ユウっ!?」
「逃げるだなんてそんな、人聞きの悪い。私はただ、あの人の勝手な振る舞いに愛想が尽きただけです」
「実家に帰りたがる妻か、アンタはっ!!」
などとやってる間にも、傍若無人な彼はコチラをお構い無しに話を進めていく。
「ふっふっふっふっ、このまま大人しくセイルーンを手に入れようと思ったが、とんだ邪魔が入ったもんだ」
「そ、そんなっ!? 何故魔族がセイルーンを欲しがるんですかっ!?」
「ふ、それはあの世でゆっくり考えるんだな。これは返すぞっ!」
言って魔族は私達の背後に現れ、先程私達が放った術をコチラに向かって解き放つ。
「ほらね、人の話なんか聞いてくれないんですよ、彼ったら」
「それはもう良いってば! って、うわあぁあーっ!?」
「封気結界呪!」
襲い来るそれらに、私は唱えた風の防御呪文で対抗する。
光球は結界に阻まれ、私達まで届くことなく消え去った。
「って、驚かせるんじゃないわよっ!」
バシッ!
後頭部の衝撃とともに、リナさんの怒りの声も襲い来る。
「酷い……ちゃんと守ったのに」
「すべこべ言わず、今は集中! ……来るわよっ!!」
確かに、今はそれどころではなかった。
見上げたその先に、何体もの魔族がいたのだ。
私は直ぐ様気持ちを切り替え、次なる呪文を唱え始めた。
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