「話はそれましたけど……」
冗談はそれくらいにして話を進めようとした、その矢先。
「……そらしたのはお前だろう」
「………………」
そう茶々を入れてきたのは、ゼルガディスさん。
まぁ、事実その通りなのだが……。
素直に認めてしまうのも面白くない。
私は彼をじっと見つめ、
「それは言わないお約束ですよ、ゼルガディスさん」
人差し指を唇に当て、「ね?」と微笑んでみせる。
直後に黙るゼルガディスさん。
…………言葉を無くした、もしくは硬直したとも言う。
とにもかくにも。
沈黙した彼を見て満足した私は、再度リナさん達に話を振る。
「で、どうします?」
「もちろん決まってますっ! そこまでわかっているなら直ぐにでも正義の鉄拳を!」
私の問いかけに、アメリアさんは立ち上がり、拳を握った。
対してリナさんは面倒くさそうに頬杖をつきながら、指を振る。
「ちっちっちっ。アメリア、アンタ分かってないわね」
「は?」
「さっきあたし達が言った事は、あくまで推測に過ぎないの。事件を裏付ける証拠ってもんが何一つ無いじゃないの」
「……それはそうですけど……」
「それなのに行きなりアイツを取っ捕まえて拷問にかける気?」
「いくらなんでも、それは不味いだろう」
「あたしはそれでも構わないけどさぁ……それじゃあ、あたし達を雇ってる事になってる、フィルさんの立場ってもんが無いでしょ?」
「それもそうですね……」
現状を把握し落ち込むアメリアさんだったが、そんな彼女を見て、硬直から脱していたゼルガディスさんが珍しく理解を示した。
「アメリアが少しでも早く事件を解決したいのはわかるがな」
「急がば回れ、ですよ」
「ま、大丈夫だって! 逆に考えれば首謀者の目星はついてるんだから、証拠さえあれば、拷問にかけようが、ギロチンにかけようが、コッチの好き放題やり放題ってね♪」
意気消沈する彼女に、私達は笑顔で言った。
さすがにリナさんの発言は過激すぎてガウリイさんに咎められたが……。
それでもアメリアさんを元気付ける事には成功したようだった。
「そうですよね! そうとなったら一刻も早く証拠を掴みましょ!」
「それと、フィルさんの警護もしっかりしておかなくちゃ。まぁ、戻ってきて直ぐにはあちらさんも手を出しては来ないだろうけどね」
「厄介だな……また魔族が絡んでるとなると」
リナさんの言葉に、ゼルガディスさんが腕を組みながら言う。
「しかし、セイルーンとはよくよく騒動の多い国だな」
「っ!!」
「今回のフィル王子暗殺未遂といい、その第一王女。つまりお前の姉さんの失踪といい、どうかしている」
息を呑んだアメリアさんに気付かず、更に続ける彼。
私は慌ててゼルガディスさんのマントを引っ張った。
……けれど。
それすらも気付いていないのか、それとも気付いていながら無視をしたのか。
「聞けば第三王子ランディの謀反もあったそうじゃないか」
「……あ……」
「ちょっとゼルっ!!」
批難するリナさんの声に、ようやく事の重大さに気づいたゼルガディスさんは、うつ向くアメリアさんを見て、びくりと体を強張らせた。
その場に流れる何とも言えない空気。
「……あ、アメリア……」
しかし、それを打ち破ったのはアメリアさん本人だった。
「……だから、絶対の正義が必要なんです!」
彼女は前を見据え、声高らかに宣言する。
「どんな悪の手をもはね除ける、燃える正義がっ! 炎の正義がっ!! 最強の正義がぁーーーっ!!」
「……アメリア……」
凄いなぁ、アメリアさん。
そんな状況に置かれながらも、いつも笑顔で元気で。
チラリとゼルガディスさんを見ると、きっと居たたまれなかったのだろう。
申し訳なさそうに胸の前で人差し指を合わせていた。
それを見たガウリイさんが珍しく、彼をゲンコツで戒める。
と───その時。
「あの……リナ=インバース様は?」
そう声をかけてきたのは、一人のメイドさんだった。
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