『きゃあぁーーーっ!?』
……しまった……。
話を聞く為とは言え、少し術の力を抜きすぎたか……。
後悔するも、時すでに遅し。
痛む身体を押して態勢を立て直すが、魔族の方もそれなりにダメージがあったようで、肩で息をついていた。
「そんな状態であたし達に勝てるつもりじゃ無いでしょうね?」
「そ……それは無理なようだけど……土産は貰って行くっ!」
魔族が吠えた、その途端。
瞳が不気味に輝き、長い爪の先からは紅き光が放たれた。
「っ、リナさんっ!」
叫んで私は、リナさんへと向かう光を杖で振り払う。
しかし───その瞬間。
杖に接触する前に光はバラけ、床へと突き刺さった。
……今の動きは……まさかっ。
慌てて足元を見れば、私達を中心に五紡聖が描かれている。
「何の真似っ!?」
「さぁね」
質問には答えず、意味ありげに笑った魔族は、天窓を突き破り夜空へと消え去った。
辺りに飛び散るガラスの破片。
「逃がすもんですかっ!」
その後を追わんと、リナさんは急ぎ呪文を唱える───が。
その隣で、私は嫌な予感に苛まれていた。
五紡星の結界。
六紡星が安定した力の流れであるのに対し、五紡星とは力を打ち消すもの。
力を打ち消す───すなわちそれは魔力の消失……。
その考えを裏付けるように、何度も『翔封界』を唱えるリナさんの術は発動しなかった。
常であれば風をまとい空を行く術なのに、そよ風さえ起きない。
「あれれ? レイ・ウィングっ……レイ・ウィングっ! あれ? ちょっと、ちゃんと飛んでっ!! レイ・ウィングっ!!」
何とか飛び立とうとしているリナさんの隣で、試しに私も呪文を唱えてみるが……。
「明かり」
初級魔法であるはずの術でさえ、使うことは叶わなかった。
「何やってるんですか二人ともっ!! 魔族が逃げちゃいますよっ!?」
アメリアさんが空中で急かす。
が、魔法が使えなくなってしまった今、私達に出来ることは呆然とする事ぐらい。
「どうしろって言うのよっ!?」
悲痛なリナさんの言葉は、夜の闇へと吸い込まれていった……───。
あとがき
油断大敵───。
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