ヤサシサ(1/6)

先の戦いで、魔法の使えなくなった私とリナさん。

魔族が事件に絡んでる今、戦力を失う事はかなりの痛手だった。

───そんな訳で。

早急に力を取り戻すべく私達二人が向かったのは、ルーン山に住む『ルナン』と言う魔法医の家。

何でもそのルナンさん、『あらゆる呪いを解く事が出来る、超偉大な魔法医』なんだとか。

今はいつフィリオネルさんが狙われるとも知れないので、ガウリイさん達にはお城に残ってもらい、引き続き護衛の仕事をお願いした。

まぁ、それがこれまでの経緯。

そして。



「いらっしゃい、いらっしゃい!」



今から向かう山の(ふもと)の街。

その方向から聞きなれた声がして、私とリナさんは顔を見合わせた。



「……この声は……」

「まさか、そんな……ねぇ?」



ヒシヒシ感じる嫌な予感。

それでも進む事しか出来ない現状に、私達は足を進める。

……そして見たものは。

予想通りの人物と光景だった。


















「さぁ、いらっしゃーい! 安いよ安いよっ! 銀貨一枚あなたの呪いは思うままよっ!!」

「ま、マルチナさん。もうこれ位にしませんか?」

「ゼロス様、わたくし悟りましたの。世の中お金ですわっ! 復讐をするのも、愛しいゼロス様とお茶をするのも。全て先立つ物はお金。だからこうしてコツコツと……」



街の一角で。

何やら怪しげな商売をしていたのは、愛と執念の人、マルチナさん。

まぁ、そこまでは予想していたのだけど。

何故かゼロスの姿まであり、リナさんは驚きの声を上げた。



「あーっ!? や、やっぱりマルチナっ! それにゼロスッ!!」

「やっと来ましたね、お二方」



こちらの反応はお見通しだったのか、いつもの様に笑顔で対応するゼロス。

対して、マルチナさんは面食らったように彼を振り仰いだ。



「お二方、って……ゼロス様がお待ちになっていた方って」

「あれ? リナさんとユウさんですよ? 言いませんでしたっけ?」

「えぇーっ!?」



いけしゃあしゃあと言われ、マルチナさんは絶叫する。

まぁ……マルチナさんにとってリナさんは天敵だし、ゼロスとしては面白半分で黙っていたのだろう。

そんな事は微塵も顔に出さず、さくさくと話を進める彼は流石としか言いようがない。



「いやぁ、この度は災難でしたねぇ。魔術を封じられるなんて」

「ずっと居なかった割りに情報が早いじゃない……で? ココで何してる訳?」

「魔法医の所までご一緒しようかと思いまして、待ってたんです。マルチナさんと」

「マルチナさんとって……」

「………………」



ジト目で問い掛けるリナさんに、ゼロスはさらりとそんな事を言ってのけた。

見るとマルチナさんは、きょとんとしながらゼロスを見上げている。

それに気付いているのか、いないのか。

ゼロスは構わず続けた。



「2、3日前にマルチナさんが盗賊に襲われてるのをお助けして、お知り合いになりましてね。僕と一緒に行くと言われるので……いけませんか?」

「いけませんかって……あのね」

「まぁ、ゼロスさん達の事です。ついて来るなと言っても無駄なんでしょうね……きっと」

「……って、アンタは何やってんのよ? ユウ」



話の片手間にマルチナさんから呪いグッズを買い取る私に、リナさんからツッコミが入る。



「ん? 何って……一種のボランティア、ですかね?」

「アンタねぇ……」



正直に告げる私に、何故かリナさんは深々と項垂れた。

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