緑が生い茂る森の中。
木々の間から差す光を浴びながら、見知らぬ彼は現れた。
『とぉっ!!』
掛け声一つ、周りの敵を蹴散らかす青年。
あるいは手にした杖で。
あるいは体術で。
───そして数分後。
盗賊達が倒れた中、一人佇む彼は『ふっ』と小さく笑みを溢し、マルチナさんに向かいキラリと白い歯を見せた───。
「……寒」
「ちょっ、どういう意味ですか、ユウさんっ!?」
「そうよ! 盗賊を倒した時のゼロス様の、それはもう凛々しかったこと」
「だって振り向き様に白い歯を光らせるって……三流吟遊詩人が書いた登場シーンじゃないんですから……」
「そうよねぇ」
オープン・カフェへと移動した後、ゼロスとの出会いをマルチナさんから聞き、私は思わず自身の腕を擦った。
すると、快く賛同してくれたリナさんに対し、何故かゼロスは慌てて顔の前で手を振って、否定し始める。
「違います! それはマルチナさんの見た幻です! 僕がそんな事するハズないでしょうっ!?」
「あー、はいはい。そう言うことにしといてあげましょーか」
「そうですね。何か必死みたいですし」
「と、とにかく! そう言う訳でマルチナさんにすっかり気に入られてしまいまして」
「そう言う問題じゃないでしょう」
呆れるリナさんに、ゼロスは淡々と語る。
「でもいい人ですよ? マルチナさんは。復讐すると決めたらテコでも動かない。手段も選ばない。その為にこつこつアルバイトまでする。その執念と意思の強さにはもう本当、敬服しちゃいます……あれ?」
「ど、どこが『いい人』な訳?」
話を聞いて、テーブルの上に崩れるリナさん。
一方───余程ゼロスに好意を寄せているのだろう。
マルチナさんは話の間中ゼロスを見つめ、そしてウットリとした眼差しを向けると彼の肩へと、しな垂れた。
「ゼロス様……あぁ♡」
そんなやり取りを見つつ、私はカップへと口付ける。
何を考えているか分からない、そんな彼に注意を向けながら。
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