リナさん達の所に戻り、その日は暗くなってきたからと野宿をする事になった。
食料を調達し終えたゼロスも追い付き、4人は思い思いの場所で横になる。
私はリナさんの隣に。
マルチナさんはゼロスの隣に。
マントを毛布がわりに寝転がり、しばしの時。
すると眠れなかったのか。
不意に、リナさんから声を掛けられた。
「……ユウ、起きてる?」
「どうかしましたか?」
「いや……考えたらさ、ユウと二人きりで話す機会って、無かったなぁと思って」
「そう言えば、そうですね」
マルチナさんは疲れからか既に寝息をたてているし、ゼロスもまた目を瞑っている。
「ユウってさ、巫女なのよね?」
「まぁ、そんな様なものです」
「家族は?」
「……さぁ?」
「さぁ……って、アンタまで秘密主義って訳じゃないでしょーね?」
小さくなってきた、たき火の明かりがリナさんの呆れた顔を照らす。
私は苦笑しながら起き上がり、薪を火にくべた。
「違いますよ。物心ついた時から家族は居なかったんです」
「え?」
「でも周りの人達には良くしてもらってました。まぁ……その代わり、あまり自由はありませんでしたけどね」
「……ご、ごめん」
「謝らないで下さい。今はこうしてリナさん達と旅が出来て、楽しいですし。感謝してるんです」
面倒な事もしょっちゅうありますけど。
そう言って笑えば、彼女は「悪かったわね」と一瞬コチラを睨み、けれど次の瞬間には笑顔を見せてくれた。
「リナさんのご家族は?」
「ん? あたしん家は父ちゃんと母ちゃん、それに姉ちゃんが一人」
「へぇ、お姉さんがいるんですか」
「うん……まぁね」
「…………もしかして、あまり聞かない方が良いですか?」
「ん、いや。良い姉ちゃんではあるんだけどね……尊敬もしてるし。でもその、何て言うか、苦手でもあるのよね……」
歯切れの悪いリナさんに問うと、彼女は視線を遠くに飛ばし、そう答えてくれた。
何となくこの話題には触れない方が良いかな……。
そう思って違う話題を探していると、突然リナさんが声を上げた。
「流れ星!」
言われて見上げるが、そこには最早ただの星空が広がるだけ。
「もう一回流れませんかね?」
「何、願い事でもするの?」
「いえ、星に願ったところでどうなる物でもないですし」
「……アンタって妙に現実的なところがあるわよね……」
いつの間にか起き上がっていたリナさんにそう言われ、私は再度夜空を見上げて言った。
「昔はしたんですけどね───願い事」
でも、ただ一つの願い事も叶わなかった。
聞き届けてはくれなかった。
今はその願いが何だったのか忘れてしまう程の小さな願いではあったが───。
「それに、願うより自分で動いた方が早いと思いませんか?」
「ま、確かにそうよね。あたしもグダグダ言ってるより先に体が動いちゃうもの」
「それに達成感もありますしね」
「そうそう、自分の力で新しい魔術が使えるようになった時なんて、連打しちゃう位嬉しいわよね♪」
……何故だろう。
リナさんに言われると微妙に同意しかねるのは。
「……ちなみにそれ、竜破斬でやったりしてませんよね?」
「……アンタ、あたしを何だと思ってるのよ。人を三度の飯より魔法好きな呪文馬鹿のように」
ジトンと半眼で見られ、私は誤魔化し笑いを浮かべる。
「ま、まぁ……それも今のままじゃ出来ないですし、早く魔力を取り戻さないといけませんね」
「…………そうよね。裏で絡んでるのが魔族となると、一刻も早く魔力を戻してセイルーンに帰りたいところだけど……」
話のすり替えに、リナさんは突っ込んでくるかと思いきや、真面目な表情をして、チラッとゼロスとマルチナさんを見る。
「この二人が邪魔してこなけりゃ良いんだけど……っとに、魔術さえ使えればこんな苦労しなくて済んだのに」
「まぁ、なっちゃったものは仕方ないですし、なるようになりますよ。きっと」
「……そうね」
言って、リナさんはぐぐっと腕を伸ばすと、ゴロンと地に寝転がった。
「やっぱりユウと話してると、なんとかなるって気がしてくるわ」
「そうですか?」
「それと同じ位、どうでも良くなるけど」
「あはは……それじゃあどうでも良くなったところで、明日に備えて眠りましょうか」
「そうね。夜更かしは美容の大敵だし?」
言って私達は笑い合い、
「……おやすみ、ユウ」
「おやすみなさい」
そして私達は眠りに就いた。
先程から向けられている意識を、気付かなかった事にして───。
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