「ぇえっ、もう薬は作れないッ!? どど、どういう事よっ!?」
「さっきの爆発で材料がみんな燃えちゃいました」
リナさんを狙った魔族をゼロスが倒してくれた後。
さっそく魔術の回復を試みようとしたのだが、返ってきたのは無情なキラちゃんの言葉。
「……ボーゼンジシツ……」
「まぁ、仕方ありませんね」
造ってくれたキラちゃんには悪いけど、あの液体を飲まずに済んだのは良かったかも。
そんな事を思っていると、魔族を倒し終えた彼がコチラに近づいてきた。
「いやぁ、危ないところでしたねぇ」
まるで先ほどの私達のやり取りなど無かったかのように。
いつもの笑顔を浮かべ。
「ゼロス……一応お礼は言っとくわ」
そんな彼に対し、リナさんは笑みを浮かべた。
「……でもって……」
そう……不敵な笑みを。
「その『呪符』売って!」
「は?」
勢いよく差し出された手に、間抜けな声を出すゼロス。
「首から下げたのと、ベルトのやつと、そして両手首のブレスレットに嵌め込まれたやつ! その四つを使って魔力の魔力容量を増幅している」
「さ〜すが、見破られちゃいましたね」
「最初に唱えた呪文の内容は魔力の拡大だったもんね〜。呪文だけで拡大するんなら苦労はしないわ」
「なんでも魔血玉とか言う石で、それぞれが『赤眼の魔王』『闇を撒くもの』『蒼穹の王』『白霧』……この世界と、他の世界の魔王四体を表しているとか」
「異世界の魔王ッ!? うわぁ、話がデカイっ! なーおーさーら! そのタリスマン売って!」
「だ、ダメです! これは恩ある高貴な御方から頂いたもので……」
満面の笑みで交渉するリナさんに、ゼロスは困り顔で手を横に振る。
………………それにしても。
ゼロスでも恩を感じる事あるんだ……。
「ユウさん……一体僕を何だと……」
あ、聞こえてた。
胸の内で呟いたつもりでいたが、どうやら声に出してしまっていたようだ。
けれど私が何か返そうとした時には、すでにリナさんがゼロスに詰め寄っている。
「200! いや、思いきって300出しちゃうッ!! おぉ〜!? 太っ腹だね〜リナちゃん!」
「……ですからぁ」
リナさんの迫力に押され、ゼロスは後ずさる。
「えーい、400!」
「え゛」
更にその背後から、マルチナさんまでもが飛び出し、流石の彼も驚きに目を見開いた。
「何でアンタが参加すんのよ」
「ゼロス様、リナにやるくらいならこのマルチナに譲って! 出世払い、分割、利息無し!」
どうやらマルチナさん、呪符と言うよりは、ゼロスの持ち物が欲しいみたいである。
……それはそうとして。
この呪符、『魔力容量』を増幅させると言うことは、今の私でも魔術が使えるようになるのだろうか?
………ふむ。
まぁ、物は試し。
私は、この即席オークションに参加することにした。
「じゃあ、私は450出します」
「って、ユウさんまで……」
「あの薬を飲むよりは現実的かなと」
「じゃあ、460!」
「そうはいくか、500!」
「……いえ、その……」
「510!」
「ですから……」
「520!」
「530!」
「540」
お互いに一歩も引かず、値段は徐々につり上がって行く。
それに疲れたように答えるゼロス。
「ダメなものはダメなんです」
だが、リナさんは聞いちゃいなかった。
手をパーにして突き出すと、満面の笑みを浮かべてみせる。
「でぇ〜い、550! これでどぉだッ!!」
すると、いつまで経っても引き下がらない私達に、いい加減しびれを切らしたのだろう。
ゼロスは小さな笑みを浮かべると、とんでもなく無茶な数字を提示した。
「550『万』なら」
「よーし、買った!!」
「ぇえっ!?」
しかし、上には上がいるようだ。
諦めさせようと無茶な値段を提示したのに、さらに上を行く無茶な返答。
リナさんの言葉に、さすがのゼロスも顔色を変えた。
ALICE+