ハグルマ(1/9)

「ぇえっ、もう薬は作れないッ!? どど、どういう事よっ!?」

「さっきの爆発で材料がみんな燃えちゃいました」



リナさんを狙った魔族をゼロスが倒してくれた後。

さっそく魔術の回復を試みようとしたのだが、返ってきたのは無情なキラちゃんの言葉。



「……ボーゼンジシツ……」

「まぁ、仕方ありませんね」



造ってくれたキラちゃんには悪いけど、あの液体を飲まずに済んだのは良かったかも。

そんな事を思っていると、魔族を倒し終えた彼がコチラに近づいてきた。



「いやぁ、危ないところでしたねぇ」



まるで先ほどの私達のやり取りなど無かったかのように。

いつもの笑顔を浮かべ。



「ゼロス……一応お礼は言っとくわ」



そんな彼に対し、リナさんは笑みを浮かべた。



「……でもって……」



そう……不敵な笑みを。



「その『呪符(タリスマン)』売って!」

「は?」



勢いよく差し出された手に、間抜けな声を出すゼロス。



「首から下げたのと、ベルトのやつと、そして両手首のブレスレットに()め込まれたやつ! その四つを使って魔力の魔力容量(キャパシティ)を増幅している」

「さ〜すが、見破られちゃいましたね」

「最初に唱えた呪文の内容は魔力の拡大だったもんね〜。呪文だけで拡大するんなら苦労はしないわ」

「なんでも魔血玉(デモンブラッド)とか言う石で、それぞれが『赤眼の魔王(ルビーアイ)』『闇を撒くもの(ダーク・スター)』『蒼穹の王(カオティックブルー)』『白霧(デス・フォッグ)』……この世界と、他の世界の魔王四体を表しているとか」

「異世界の魔王ッ!? うわぁ、話がデカイっ! なーおーさーら! そのタリスマン売って!」

「だ、ダメです! これは恩ある高貴な御方から頂いたもので……」



満面の笑みで交渉するリナさんに、ゼロスは困り顔で手を横に振る。

………………それにしても。

ゼロスでも恩を感じる事あるんだ……。



「ユウさん……一体僕を何だと……」



あ、聞こえてた。

胸の内で呟いたつもりでいたが、どうやら声に出してしまっていたようだ。

けれど私が何か返そうとした時には、すでにリナさんがゼロスに詰め寄っている。



「200! いや、思いきって300出しちゃうッ!! おぉ〜!? 太っ腹だね〜リナちゃん!」

「……ですからぁ」



リナさんの迫力に押され、ゼロスは後ずさる。



「えーい、400!」

「え゛」



更にその背後から、マルチナさんまでもが飛び出し、流石の彼も驚きに目を見開いた。



「何でアンタが参加すんのよ」

「ゼロス様、リナにやるくらいならこのマルチナに譲って! 出世払い、分割、利息無し!」



どうやらマルチナさん、呪符(タリスマン)と言うよりは、ゼロスの持ち物が欲しいみたいである。

……それはそうとして。

この呪符(タリスマン)、『魔力容量(キャパシティ)』を増幅させると言うことは、今の私でも魔術が使えるようになるのだろうか?

………ふむ。

まぁ、物は試し。

私は、この即席オークションに参加することにした。



「じゃあ、私は450出します」

「って、ユウさんまで……」

「あの薬を飲むよりは現実的かなと」

「じゃあ、460!」

「そうはいくか、500!」

「……いえ、その……」

「510!」

「ですから……」

「520!」

「530!」

「540」



お互いに一歩も引かず、値段は徐々につり上がって行く。

それに疲れたように答えるゼロス。



「ダメなものはダメなんです」



だが、リナさんは聞いちゃいなかった。

手をパーにして突き出すと、満面の笑みを浮かべてみせる。



「でぇ〜い、550! これでどぉだッ!!」



すると、いつまで経っても引き下がらない私達に、いい加減しびれを切らしたのだろう。

ゼロスは小さな笑みを浮かべると、とんでもなく無茶な数字を提示した。



「550『万』なら」

「よーし、買った!!」

「ぇえっ!?」



しかし、上には上がいるようだ。

諦めさせようと無茶な値段を提示したのに、さらに上を行く無茶な返答。

リナさんの言葉に、さすがのゼロスも顔色を変えた。

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