爆音、剣の触れ合う音、そして───
『ぐぁっ!』
『ぅくっ!』
ガウリイさん達の苦しむ声。
「ガウリイっ!!」
「兄上っ!!」
異空間での音が、カンヅェルによって届けられる。
全てが伝わってくる。
「どうかね? 死に行く仲間の声を聞くのは。ふっふふふふ……」
『ほう? これだけやられてまだ立ち上がるか』
『そうさ、オレ達がこれ位で音を上げちゃあ、リナに会わせる顔ないからな!』
……私にならあるんですか。
カッコ良い台詞を言ってるガウリイさんに、そう問いたいところではあるが……。
続けて聞こえてきた爆発の音と皆の叫び声に、無意識に手を握りしめる。
チラリと隣に居るリナさんへと視線をやれば、彼女は怒りに耐えるように、うつ向いていた。
それは先刻、ルーン山で私が感じた無力感と同じものだろう。
「そう、その苦しみ。その悲しみ。それこそが我が最大の悦びだ!」
魔族の力の源は、生きとし生けるもの達の負の感情。
嬉々としたカンヅェルの声に、けれどそれ故に。
私はなるべく明るい声で、リナさんに話しかけた。
これ以上、カンヅェルに力を与えない為に───。
「全く。悪趣味にも程がありますよね。どうせプレゼントを貰うなら、離婚届が良かったです私」
「……って、アンタはいつまでそのネタを引っ張るつもりなのよ」
「この人が居なくなるまで……ですかね?」
呆れるリナさんに、私は微笑んでみせる。
すると、私の意図に気づいてか、リナさんもまた口角を上げた。
そう、今は悲観してる時では無いのだ。
私は彼女に、ある提案を囁いた。
「リナさん……こうなったらダメもとです」
「そうね……まだ不完全だけど……コントロール出来るか分からないけど……」
───やらずに後悔するよりマシよ。
そこまで言って、リナさんはキッと女神像を見据えた。
「一瞬の魔力とあたしの運に賭けるっ!!」
「ふっはははっ! 今のお前に一体何が出来ると言うのだ?」
完全に馬鹿にした様子のカンヅェル。
でも、バカを見るのはどちらか。
それは、今からリナさんが唱える呪文を知っているからこそ、確信を持って言える。
人間を甘く見すぎた、カンヅェルの方であると───。
天空の戒め解き放たれし
凍れる黒き虚無の刃よ
我が力 我が身となりて
共に滅びの道を歩まん
「何だその呪文はっ!?」
驚きを隠せないカンヅェルの声。
ある程度の魔族なら、この術が誰の力を源にしたものかの察しはつくだろう。
……そう。
これこそ、世界を産み出せし混沌。
『金色の魔王』の力を借りた、究極魔法の一つ。
「神々の魂すらも打ち砕き───」
「そ、それはっ!?」
リナさんの手の中に、魔力が集中していく。
───そして。
「神滅斬っ!」
力ある言葉を皮切りに、漆黒の……闇の刃が生まれた。
言葉通り、神をも切り裂く暗黒の剣。
けれど、強力であるが故に、扱うのは至難の業である。
ましてや、今のリナさんは魔力を封じられているのだ。
振り下ろした闇の力は安定せず、女神像の上の壁を切り裂いた。
───しかし。
「ふっふっふっふっ……脅かしおって」
「……やっぱり、まだ上手くコントロール出来ないか……」
術を解除し、悔しそうに肩で息をつくリナさん。
私は彼女のそばに駆け寄り、女神像を仰ぎ見た。
「いえ……成功ですよ、リナさん」
「え?」
私の声に、リナさんは顔を上げる。
その、次の瞬間。
───ピシっ。
広間に、希望の音が伝わった。
女神像の首はグラリと傾き……───床にあたって砕け散る。
それと同時に床に描かれた魔方陣が光だし、異空間へ閉じ込められていた4人が、その上に現れた。
「も、戻ったのか?」
辺りを見回すフィリオネルさん。
良かった。
怪我を負っているものの、皆無事だったようである。
───そして。
ALICE+