『この男は預かった。助けたければ我々の前からけして逃げるなよ』
そう言い残し、カンヅェルは私達の前から消えた……───。
言った本人が逃げてどーする。
とも思うが、異空間での戦いでガウリイさん達が怪我を負っていたのも、また事実。
マゼンダとかいう、もう一人の魔族もいつの間にか姿を消しており、態勢を整えるのが先と考えた私達は、あてがわれた部屋の一室で傷の手当てをする事になった。
───そんな中。
「おい、リナ。さっき言ってた事は本当か?」
「奴らがあたしを狙ってるって事?」
「あぁ」
ゼルガディスさんは一つ頷き、リナさんに答えを求めた。
それに対し、彼女は真剣な面持ちでそれを肯定する。
「どうやら間違いないわ。カンヅェルの口ぶりといい、あたしの命を狙って魔族が襲ってきたりしたところを見ると」
「お前、魔族に色々恨み買ってるからなぁ」
「色々って、あのセイグラムとか言う魔族とかですか?」
ガウリイさんの呟きに尋ねると、何故か三人は顔を見合わせる。
「あぁ、ユウには言ってなかったな……」
「はい?」
「まぁ、言ってどーなるもんでもなかったしね」
「…………はぁ」
彼女達の言わんとしている事がわからず、私は曖昧な相槌を打つ。
するとガウリイさんがあっさりと。
それはそれは、清々しいまでにあっさりと。
「コイツ、シャブなんとかって魔族の親玉倒してんだよ」
と、リナさんを指し示した。
「…………………………………………は?」
「ま、当然の反応だな」
「その頃に出会ったのよね、あたし達。あ、アメリアは少し後だけど」
「お前には相当ふっかけられたっけな」
「あははははは♪ まあ、そんな事もあったっけねぇ」
パタパタと楽しそうに手を振るリナさん。
思い出話しに花が咲いている。
「……て、いやいやいや。魔族の親玉って魔王って事ですよね?」
「だな」
「魔王って、あの有名な魔王シャブラニグドゥ?」
「7分の1だけどね」
「………………」
簡単に言ってのけるリナさんに、私は言葉を失った。
スゴいとは思っていたけど、まさかこれ程までとは……。
「ま、そんな訳で魔族には色々恨まれてるんだろうけど……でも、ただそれだけで狙ってるとも思えないのよねぇ」
「どういう事だ?」
「あたしにもさっぱり分かんないけど、カンヅェル達はハッキリと目的があって動いてるみたいだわ。そして、それにあたしが絡んでる」
ガウリイさんの治療を終えた彼女は、ソファーに座り、そう説明する。
「どっちにしろ戦いは避けられないか」
「次こそは遅れはとらん」
そんなやり取りをしているところに、バタンッと、勢いよく扉を開けて入ってきたのは、アメリアさんだった。
「リナさん! 大変ですっ!」
「どうしたのっ!? クリストファの様子探ってきた?」
先に治療の済んでいたアメリアさんには、この後クリストファさんがどう動くのか、様子見してもらっていたのだが……。
───しかし。
「それどころじゃありません! クリストファおじさんが王位継承権を放棄したんですっ!!」
「何だとっ!?」
「それってフィルさんに万が一の事があっても、跡を継が無いってことだろ?」
「そうなんです。自分が雇った魔道士が引き起こした事件の責任をとるって……」
「どういう事だ? この事件の裏にいるのはクリストファじゃないって事なのか?」
「……やっぱり何か」
まだ裏に何かがあるのだろうか。
私達が見過ごしてる何かが……。
「ん?」
「どうかした? ユウ」
「……おかしくありませんか?」
「何が?」
先日、手紙で呼び出されたリナさんがアルフレッドさんから聞いたのは、彼の父親───つまりクリストファさんが首謀者だという事だったらしい。
もしそれが本当なら、王位継承権を放棄するとは考えにくい。
暗殺騒ぎは、王位を欲して起きた事件のはずなのだから。
「そうね」
「もしかしたら……」
「とにかく、もう一回アルフレッドに話を聞いてみる必要がありそうね」
リナさんの言葉に、私達はコクンと頷いた。
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