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それから、数刻後。

私達は立派な佇まいの屋敷の前にいた。

と言うのも、アルフレッドさんに話を聞こうと王宮内を探したのだが、どこにも見当たらず───。



「居ないっ!? アルフレッドが?」

「えぇ……屋敷の中はもちろんの事、どうも王宮の敷地の中には居ないみたいです」

「なら一体……?」

「この状況で逃げたとは考えにくいですしね……」



そんな事をすれば、自分が怪しいと宣言している様なものだ。



「確か街の外れに別宅があるはずです。ひょっとしたら……」



そんなこんなで他に手がかりも無かった私達は、アメリアさんのその言葉を頼りに、この場所へとやって来た───と言う訳である。

まぁ、ここに居なかったら、私達は完全にお手上げ状態。

居る事を願いつつ、屋敷の扉を開けると、リナさんは早々に彼の名を連呼し始めた。



「やっほー♪ アルフレッドー? アールフレッドー?」



日中だと言うのに屋敷内は薄暗く、人の気配も無い。



「……返事がありませんね……」

「行くわよ」



宣言と共に、リナさんは奥に続く扉に近づき、手をかけた。

カチャリ……と、すんなり回る取っ手。

部屋の中を覗けば、わずかな陽の光が差す薄暗い闇の中───彼は居た。

コチラに背を向け、椅子に腰掛けた状態で。



「……アルフレッド?」

「ようこそ皆さん」



呼び掛けに、彼は嫌な感じの笑みを浮かべて振り向いた。

例えて言うなら、私達を見下している……そんな笑みを。



「いらっしゃる頃だと思ってましたよ」

「って事は、クリストファさんが王位継承権を放棄した事、聞いたみたいね」

「えぇ、聞きました」



リナさんの問いかけに、彼は鷹揚に頷いてみせる。

その仕草一つ一つが演技がかって見え、私の中に確信めいた物が生まれた。



「どう言うことなの? クリストファさんが一連の事件の首謀者だって話が本当だとすれば、あり得ない事だと思うんだけど?」



リナさんの言及に、彼は一つ息を吐く。

疲れたような、そんな溜め息を。



「そうですねぇ。まったく、父にも呆れたものですよ。折角この僕があれだけなりたがっていた国王にしてあげようって言うのに……子の心、親は知らず……と言ったところですかねぇ?」

「何ですって!?」



いけしゃあしゃあと告げられ、アメリアさんは声を荒げる。

しかし、彼は気にしない素振りで、更に言葉を重ねた。



「あなた達さえやって来なかったら、もっと上手く事が運ぶはずだったんだけどね」

「……と、言うことは……あなたがセイルーンの王位に就く為に、一連の事件を引き起こした……」

「そういう事に、なりますか?」



投げやりな調子で───けれど。

そこはかとなく馬鹿にしながら、彼はリナさんの質問に答える。

それを彼女は鼻で笑い飛ばした。



「ふっ……なぁんか変だとは思ってたけど、まんまと騙されたわ。アンタのあの(しん)に迫った、くっさい芝居にねっ!!」

「ふっふふふっ、それもこれも将来、僕が王位に就く為の事。この僕こそがセイルーンの王位に相応しい! 僕が王位に就けば、セイルーンはより強大な国になるっ! それこそ、世界を支配する事もっ!!」

「っ!? おのれの欲望の為に世界を支配しようなんて言語道断ですっ!!」



ビシッと指を突き付け、正論を述べるアメリアさん。

けれど権力に目が(くら)んだ彼には通じない。

まるで哀れだという様な目でコチラを見て、アレフレッドは肩を竦めた。



「それがこの世の為でもあるんですけどねぇ……? 愚かな者にはそこが分からないのでしょう」

「ふざけやがって!」



流石に腹を据えかねたのか。

彼の物言いに、珍しく怒りを露にしたのはガウリイさん。

そんなガウリイさんに、私は言う。



「ガウリイさん、彼はふざけてなんかいませんよ」



それに先に反応したのはアルフレッドの方だった。



「ほぅ? どうやら事の本質を分かってる方もいるみたいですね。あなたとは話が合いそうだ、ユウさん」



私の言葉にご満悦の彼は、言って笑みを浮かべる。

それは先ほどとは違い、とても満ち足りたているものだった。

それを見ていたリナさんは、怒ったように私に詰め寄ってくる。



「ちょっと! アンタ本気でそう思ってんのっ!?」

「思ってますよ? 彼はこれっぽっちもふざけてなんかいない。ましてや軽口や冗談でもないでしょう。ただ、正気の沙汰じゃないだけで」

「なっ……!?」



そう、彼『は』ふざけているつもりは無いのだ。

私達からすると戯言にしか聞こえないだけで。



「まぁ、こんな平常の判断力を欠いた典型的な自己陶酔型人間が、王位に就いたところで失脚するのは目に見えてますけどね」

『……………』



鼻白むそのアルフレッドに更に追い撃ちをかけ、リナさん達を見やると、彼女達は目を点にして固まっている。

その様子に。

───私はいつもの様に微笑んでみせた。

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