「さてと、無用なお喋りはこの辺にして。フィリオネルさんを返してもらいましょうか」
「……はっ! そうよっ!! 父さんは何処にいるのっ!?」
私の言葉で正気に戻ったアメリアさんが、アレフレッドを問い詰める。
───が、彼の答えは意外なものだった。
「それですよ。僕もそれが知りたい」
「……どういう事?」
「……カンヅェル」
訝るリナさんには答えず、変わりに彼は諸悪の根源を呼び寄せた。
怒り出すかと思っていたのだが、意外に冷静である。
取り乱してくれた方が隙が作れると思ったんだけど……。
「……お呼びですか?」
虚空から現れたのは、冷笑を浮かべたカンヅェル。
そして私とリナさんの魔力を封じ、ガウリイさん達と異空間で戦っていた魔族───マゼンダだった。
「……どういうつもりだ? 僕はフィリオネルを殺せと命じたはずだが」
「確かに、あなたから受けた命令はあの男を殺せというものでしたが、こちらにも都合が出来ましてね」
「都合だと?」
「えぇ」
「貴様らの都合など僕の知った事か!」
言うなり彼はコチラを指し示し、勝手なことを言ってくれる。
「コイツ等もろともフィリオネルを殺すんだ! どうせコイツ等も邪魔な存在だからなっ!!」
「……どうしても?」
「当たり前だっ! 絶対の服従を誓う、それが取り交わした契約のはずだっ!!」
声を荒げ、命令を下すアルフレッド。
どうやら彼、私にどうこう言われた事より、魔族に歯向われた事の方が腹立たしかったようだ。
───しかし。
魔族がただで人間に服従を誓うことなど、ありえるのだろうか?
答えは───否。
「確かに……では仕方ありませんね」
言葉だけは丁寧に、しかしカンヅェルは冷笑を嘲りに変えた。
その隣に佇んでいたマゼンダが、アルフレッドに向けて、スッ───と手をかざす。
その手には鈍く光る魔力球。
私達がその事に気付き、声を上げるより先に───彼は……アルフレッドは魔力球に貫かれていた。
『───っ!?』
「アルフレッドっ!!」
「ば、馬鹿な……お前達は契約に従うはずじゃ……」
契約により忠実な部下だと思い込んでいた者に攻撃され、彼は力無く問いかける。
するとマゼンダは、皮肉る様に説明してくれた。
「勘違いしたようねぇ? あなたと契約を交わしたのはカンヅェルのみ」
『ふっふふふふっ』
魔族達はおかしそうに笑い声を上げていた。
まるで計画通りとでも言うように。
「ぼ……僕を裏切るのか……?」
カンヅェル達はきっと、こうなる事を見越していたのだろう。
見越していて、アルフレッドが邪魔になった時は殺せるようにと段取りをつけていた───。
マゼンダと契約を交わさなかった事で、彼女はアルフレッドの命令に背く事が出来る。
否───そもそもマゼンダは、初めから彼の命令を受ける義理は無かったのだ。
今まで従っていたのは、アルフレッドに信用を植え付けるため。
それらを裏付けるように、マゼンダ達は嘲笑っていた。
「ふっ……裏切る?」
「初めからこうなる計画だったんだよ」
「お前ごときが我ら魔族を従えられると、本気で思ったのか?」
「な……何だと……?」
苦しそうに声を発するアルフレッド。
───……まずい。
アルフレッドの答える声に力が無くなってきている。
……何とかして治療を施したいのだが、カンヅェル達が黙って見逃してくれるハズがない。
試しに近づこうと足を動かそうとしただけで、視線で牽制される。
そうこうしている内にもアルフレッドから徐々に力が抜け───。
「所詮、お前は我らの手の中で踊っていたに過ぎんのさ」
カンヅェルがそう告げた時。
ことん、と手から力が抜け、アルフレッドは遂に動かなくなった───。
「アルフレッドっ!」
「卑劣な真似を……っ!!」
「一体何のつもりよっ!? アンタ達の目的はこのセイルーンを操る事じゃ無かったのッ!?」
カンヅェル達のやり方に怒りを覚え、リナさん達は敵意をぶつける。
───すると。
彼らはそれすらも楽しんでいるかのように、含み笑いを浮かべてみせた。
「確かに我々の目的はその男を王位に就かせ、それを裏から操る事だった」
「……だが、それもリナ=インバース、貴様がこのセイルーンにやって来るまでの事!」
カンヅェルがそう言うやいなや。
突如として地面が揺れ動いた。
「な、何ッ!?」
「地震!?」
「まさか奴らがっ!?」
「何をしたのよっ!?」
リナさんが問うが、彼らは笑っているだけで何も答えない。
「聞くだけ無駄でしょう。取り敢えず外へ!」
「そうねっ!」
言って私達は玄関へと駆け出し───そこで、とんでもない事態に直面する事となる。
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