「な、何ッ!?」
攻撃が打ち消されたことにか、それとも急に現れた彼になのか。
余裕の笑みを浮かべていたカンヅェルは、驚きの声を上げた。
対して、いつもの調子で笑みを浮かべている彼は、緊張感の欠片も無く「いやぁ、どうも」などと言ってのける。
それを見て、皆から歓喜の声が上がった。
「ゼロス!」
「ゼロスさんっ!!」
「だぁ! ナイスだねお兄ちゃんッ!! 良いところに♪」
リナさん……その呼び掛けはいかがなもんかと。
嬉しいのは分かりますけどね。
一方、彼の事を知っていたのか、マゼンダが驚愕の声を漏らす。
「貴様はッ!?」
「いけませんねぇ? 魔族ともあろうお方が、人質を取るなんてみっともない真似をするなんて。もっとプライドを持たなければ」
「何だと?」
馬鹿にされたと思ったのか、カンヅェルは怒りを滲ませゼロスを睨み付けた。
しかし、カンヅェルが何かを仕掛けるより先に、マゼンダが彼へと敵意をぶつける。
「おのれ、何故こんな所にッ!?」
「それは秘密です♪」
いつもの胡散臭い笑顔に、いつもの台詞。
それがこんなにも安心感をもたらす日が来るとは、思ってもみなかった。
まぁ、カンヅェル達にしてみれば、腹立たしいだけなのだろうけど。
「リナさん。この人の面倒は見ますから、皆さんは思う存分やっちゃって下さい」
ゼロスの言葉に力を得、これから魔族と命のやり取りをすると言うのに、リナさん達は笑顔で言葉を交わす。
「うっしゃあ! そうとなれば遠慮は要らないわね!!」
「おう! あとはアイツ等を叩きのめすのみだ!!」
「行くわよッ!!」
「はい! 振動弾っ!!」
リナさんの声に応え、先に動いていたカンヅェル達の後を追う為に、アメリアさんが壁を破壊した。
皆が外へと続く中、私も遅れぬようにと足を踏み出し、
「はい、ユウさんはコッチです」
「ちょ……っ!?」
いきなりフードを捕まれ、私は後ろに仰け反った。
それを見たリナさんは、まなじりを吊り上げ憤怒する。
「ちょっと何じゃれてんのよアンタ達ッ!」
「じゃれてませんっ! ゼロスさんが急に……」
私は悪くないと主張してみると、ゼロスは真面目な顔で痛い所をついてきた。
「今のユウさんが一緒に行ったところで、足手まといなだけですよ」
「それは……」
確かに私はリナさんと違って全く魔術が使えないけど。
それでも、何か出来る事はあるかもしれない。
そう反論しようとしたのに、納得したようにリナさんが頷いた。
「そうね」
「そうねって、リナさんまで……」
「あぁ、違うのよ。ユウが役立たずとかじゃなくて」
グサッ。
「そうだな。軽口叩いて狙われでもしたらことだしな」
グサグサグサッ。
「とにかく今は時間がないわ。あたし達はアイツ等を追うから、ユウにはフィルさんの事を頼むわ。ゼロス一人だけだと不安だし」
言われて私は隣に佇むゼロスをチラリと見て、コクンと頷いた。
まぁ、そういう事なら仕方ない。
「……そうですね。分かりました」
「ユウさん酷いですよぉっ!」
「お互い様です」
嘆くゼロスに淡々と告げ、リナさん達を見やる。
「じゃあ頼んだわよっ!」
「ユウさん、父さんをお願いします」
「はい」
言って彼女達はカンヅェル達の後を追って行った。
その後ろ姿を、私はリナさん達を祈るような気持ちで見送る。
「さて、僕達は一足先に地上へ戻りましょうか」
「……ん」
「リナさん達なら大丈夫です。きっと無事に戻ってきますよ」
「…………」
その言葉に───私は小さく微笑した。
それは私を気遣っての優しい言葉だったから。
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