(5/10)

「な、何ッ!?」



攻撃が打ち消されたことにか、それとも急に現れた彼になのか。

余裕の笑みを浮かべていたカンヅェルは、驚きの声を上げた。

対して、いつもの調子で笑みを浮かべている彼は、緊張感の欠片も無く「いやぁ、どうも」などと言ってのける。

それを見て、皆から歓喜の声が上がった。



「ゼロス!」

「ゼロスさんっ!!」

「だぁ! ナイスだねお兄ちゃんッ!! 良いところに♪」



リナさん……その呼び掛けはいかがなもんかと。

嬉しいのは分かりますけどね。

一方、彼の事を知っていたのか、マゼンダが驚愕の声を漏らす。



「貴様はッ!?」

「いけませんねぇ? 魔族ともあろうお方が、人質を取るなんてみっともない真似をするなんて。もっとプライドを持たなければ」

「何だと?」



馬鹿にされたと思ったのか、カンヅェルは怒りを滲ませゼロスを睨み付けた。

しかし、カンヅェルが何かを仕掛けるより先に、マゼンダが彼へと敵意をぶつける。



「おのれ、何故こんな所にッ!?」

「それは秘密です♪」



いつもの胡散臭い笑顔に、いつもの台詞。

それがこんなにも安心感をもたらす日が来るとは、思ってもみなかった。

まぁ、カンヅェル達にしてみれば、腹立たしいだけなのだろうけど。



「リナさん。この人の面倒は見ますから、皆さんは思う存分やっちゃって下さい」



ゼロスの言葉に力を得、これから魔族と命のやり取りをすると言うのに、リナさん達は笑顔で言葉を交わす。



「うっしゃあ! そうとなれば遠慮は要らないわね!!」

「おう! あとはアイツ等を叩きのめすのみだ!!」

「行くわよッ!!」

「はい! 振動弾(ダム・ブラス)っ!!」



リナさんの声に応え、先に動いていたカンヅェル達の後を追う為に、アメリアさんが壁を破壊した。

皆が外へと続く中、私も遅れぬようにと足を踏み出し、



「はい、ユウさんはコッチです」

「ちょ……っ!?」



いきなりフードを捕まれ、私は後ろに仰け反った。

それを見たリナさんは、まなじりを吊り上げ憤怒する。



「ちょっと何じゃれてんのよアンタ達ッ!」

「じゃれてませんっ! ゼロスさんが急に……」



私は悪くないと主張してみると、ゼロスは真面目な顔で痛い所をついてきた。



「今のユウさんが一緒に行ったところで、足手まといなだけですよ」

「それは……」



確かに私はリナさんと違って全く魔術が使えないけど。

それでも、何か出来る事はあるかもしれない。

そう反論しようとしたのに、納得したようにリナさんが頷いた。



「そうね」

「そうねって、リナさんまで……」

「あぁ、違うのよ。ユウが役立たずとかじゃなくて」



グサッ。



「そうだな。軽口叩いて狙われでもしたらことだしな」



グサグサグサッ。



「とにかく今は時間がないわ。あたし達はアイツ等を追うから、ユウにはフィルさんの事を頼むわ。ゼロス一人だけだと不安だし」



言われて私は隣に佇むゼロスをチラリと見て、コクンと頷いた。

まぁ、そういう事なら仕方ない。



「……そうですね。分かりました」

「ユウさん酷いですよぉっ!」

「お互い様です」



嘆くゼロスに淡々と告げ、リナさん達を見やる。



「じゃあ頼んだわよっ!」

「ユウさん、父さんをお願いします」

「はい」



言って彼女達はカンヅェル達の後を追って行った。

その後ろ姿を、私はリナさん達を祈るような気持ちで見送る。



「さて、僕達は一足先に地上へ戻りましょうか」

「……ん」

「リナさん達なら大丈夫です。きっと無事に戻ってきますよ」

「…………」



その言葉に───私は小さく微笑した。

それは私を気遣っての優しい言葉だったから。

<<>>
[ 戻る ]


ALICE+