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「それにしても、随分タイミング良かったよね」



ゼロスの手によって地上へと降り立った私達。

一人は既に城へと運んでもらったので、今ここに居るのは私とゼロス。

そして未だ眠ったままのフィリオネルさんの3人である。

ぼそっと疑問を口にした私に対し、フィリオネルさんを地面へ寝かせ終えたゼロスは、コチラを振り向くと首を傾げてみせた。



「何の事です?」

「……フィリオネルさんを助けに入ったタイミングの事」

「あぁ、その事ですか」



納得、といった感じで頷く彼に、私は呆れながら問い掛けた。



「ずっと見てたの?」

「それは……まぁ、そんなところですね」



ポリポリと頬を掻きながら誤魔化し笑いをするゼロス。

色々助けてもらったし、あまり突っ込むのもどうかと思うけど。

でも……何と言うか。



「……ストーカーみたい……」



ひききっ。

その一言で、ゼロスの顔は面白いくらいに強張った。



「いくら謎の神官(プリースト)とは言え、陰からこっそりフィリオネルさんの事を見てるのは流石にどうかと思うんだけど」

「って、何で僕がこの人のストーカーをしなきゃなんないんですかっ!!」



ビシッと、寝ているフィリオネルさんを指差し、抗議するゼロスに、私は真顔で答える。



「だって『ずっと見てた』んでしょ? それは立派なストーカーだと思うんだけど」

「ストーカーに立派も何もありませんっ! そもそも僕が見てたのはこの人ではなくて……」

「リナさん?」

「違いますッ!」

「あぁ、あのマゼンダとか言う魔族? 何かあっちはゼロスの事を知ってたみたいだけど」

「確かにマゼンダさんとは知り合いでしたが……」

「まさか……カンヅェル?」

「ちーがーいーまーすっ!!」



涙すら浮かべて私に詰め寄る彼。

その勢いに押され、私は思わず後ずさった。



「言ったでしょう……?」



そこまで言ってゼロスは私の両肩を掴み、真剣な表情を見せる。

そこに気まぐれと言う言葉は見当たらず、それどころか逆に、思い詰めたような印象を受けた。

真摯な瞳に声を奪われ、私に許されたのはその場に立ち尽くす事くらい。

じっと見つめる先、彼は何かを決心したように短く息をつき、そして───。



「ユウさん」

「は……はい」

「僕が見てたのは、あな……」

「ぬぉ? ここは……」



けれど。

彼の言葉はフィリオネルさんの声によってかき消された。

がくぅっ、と肩を落とすゼロス。

そのあまりの落胆ぶりに心配になるが、彼は諦めた様に息を吐くと苦笑してみせ、それからフィリオネルさんへと相対した。



「わしは一体……?」

「目が覚めたみたいですね」

「何じゃお主は?」



声をかけた彼に、フィリオネルさんは訝しげな表情を浮かべる。

───そう言えば、ゼロスってフィリオネルさんと面識がなかったかも。

私は彼の事を説明しようと口を開き、



「彼はフィリオネルさんのストー……」

「わたし通りすがりの謎の神官(プリースト)、ゼロスと申します」



よほどストーカーと呼ばれるのが嫌だったのか。

私のセリフに割って入り、ずずいっと一歩前に出ると、ゼロスは片手を胸に当て自己紹介した。

───しかし、謎の神官(プリースト)もストーカーも怪しいのは変わらないと思うんだけど……。

そんなコチラの内心は気づかぬフリで、彼はこれまでの経緯を簡単に説明する。



「あなたは魔族に拐われて、今まで眠らされていた様ですね」

「おぉ! そうじゃ! わしはあの怪しげな(やから)に襲われて……あれから一体どうなったんじゃ?」

「えぇ、リナさん達が今、そいつらと戦っているはずですよ」

「何じゃとっ!? こうしちゃおれんっ!」



ゼロスの言葉を聞くや否や、フィリオネルさんは明後日な方へと走り出した。

そこに待ったをかける彼。



「あの、無理だと思いますよ? 何せリナさん達が戦っているのは、あそこですから」



言ってゼロスが差し示したのは、空に浮かぶ大地。

彼の人差し指を追って視線を巡らせたフィリオネルさんは、それを目の当たりにし、衝撃のあまり、目を見開いた。



「な、何じゃあれはっ!? アメリアは……わしの可愛いアメリアはっ!?」

「多分……リナさん達と一緒では……」



胸倉を掴みながら鬼気迫る顔を近づけるフィリオネルさんに、頬に汗しながら答えるゼロス。

───すると。

その答えを聞いたフィリオネルさんはゼロスを離し、空中庭園を見据えて一目散に走り出した。



「って、フィリオネルさんっ!?」

「スマッシングバーストジャンプーーーっ!!」



私が止めるのも聞かず……。

と言うか聞こえていなかったのかもしれないが……。

兎にも角にも、フィリオネルさんは空中庭園へと伸びる切り立った崖を踏み台にして、高々と飛び上がる。



───そして。

……まぁ、当たり前の話。

重力に逆らえなかったフィリオネルさんは、地上に真っ逆さまに落ちたのだった。

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