ごごごごごごご…。
「今度は何が起こってるんじゃ?」
「さぁ?」
突如響き渡った轟音に、私達は空を仰いだ。
すると。
ゼロスの腕に自らの腕を絡ませていたマルチナさんが、何かに気付いた様で、声を上げた。
「……あれは」
「リナさん達みたいですね」
ゼロスもそれに気付き、相槌を打つが……それより。
あの空中庭園傾いて無いだろうか?
そんな私の不安を代弁するかの様に、リナさんの叫び声が届く。
「大変よーーーっ!!」
「おぉ! アメリアッ!! 皆も無事じゃったか!」
次々に地に降り立つ彼女達を見て、フィリオネルさんはリナさんの言葉を無視して親子の再会を喜んだ。
が、フィリオネルさんがアメリアさんに抱きつこうとすると、彼女はスルリとそれを躱し、焦りの色を滲ませる。
「大変なのよ父さん!」
「どうしたんじゃ、アメリア? お前達が無事出てきたという事は、魔族どもを退治したのでは?」
「魔族の事はいいんですっ! それよりあの空中庭園が落っこってくるのっ!!」
「ぇ……」
「どういう事よ?」
アメリアさんの言わんとしている事が伝わらなかったのか、マルチナさんは眉を顰めた。
それに対し、リナさんがバツが悪そうに説明を加える。
「アレを支えていた魔族を倒しちゃったもんで、もうすぐ落っこってくる訳……」
「何じゃと!?」
直接的なその言葉に、事態を飲み込めたフィリオネルさんから驚きの声が上がった。
その隣ではゼロスが、「見事にセイルーン衝突コースですねぇ」なんて呑気なことを言っていたりする。
「あぁっ!! おしまいよぉっ……あたしってば今度はセイルーンを滅ぼした女って事になるのね……」
「お前の呪文で吹っ飛ばすって訳にはいかないのかよ?」
嘆くリナさんにガウリイさんが提案する。
───しかし。
「ちょっと相手がデカ過ぎるわよ……三つに割るくらいしか出来ないわ」
「さぁ、皆でゾアメルグスターに祈りましょう!」
「ふざけないで下さいっ!」
「セイルーンの最期か……」
「他人事みたいに言うなぁっ!!」
マルチナさんが、アメリアさんが。
そしてゼルガディスさんとフィリオネルさんが、皆混乱し、慌てふためいている。
かく言う私もどうする事も出来ずに、落下しつつある空中庭園を眺めているのだが。
そんな中、やはり彼だけは一人落ちついていた。
「皆さん何をそんなに慌ててるんですか?」
「これを慌てずに何を慌てろって言うのアンタは!?」
のほほんとしたゼロスに、リナさんが怒りをぶつける。
しかし彼はお構いなしに、少し呆れたように肩を竦めてみせた。
「忘れたんですか?」
「へ?」
「リナさんの魔力は戻ったんでしょう? その『呪符』を使った竜破斬なら、何とかなるんじゃありませんか?」
「魔力増幅版の竜破斬……?」
「そうじゃ! 今となってはそれに賭けるしかあるまいっ!」
「そうですよリナさん!」
ゼロスの意見に賛同するフィリオネルさんと、アメリアさん。
しかし、威力の分からないものを、そんなあっさり使って大丈夫なんだろうか?
息巻くセイルーン親子を見ながら、不安要素について考えるが、それもゼロスの言葉で中断される。
「それにユウさんも居る事ですし……ね?」
「ぇ……?」
「あ、そっか! 確かユウも竜破斬使えたんだったわよね!?」
「いや……まぁ、一応使えますけど……」
「なら話は早いわ! 一か八か……行くわよ、ユウっ!!」
「……でも」
「お願いします! ユウさんっ!!」
「ユウ殿頼むっ!」
躊躇う私に、アメリアさんとフィリオネルさんが懇願してくる。
……まぁ、どの道このままではセイルーンの直撃は免れないのだし、ここまで言われたら断る訳にもいかない。
私は少しの不安を胸に抱いたまま、コクンと小さく頷き───そして。
黄昏よりも昏きもの
血の流れより紅きもの
時の流れに埋もれし
偉大な汝の名において
我ここに 闇に誓わん
我等が前に立ち塞がりし
すべての愚かなるものに
我と汝が力もて
等しく滅びを与えんことを───。
『竜破斬っ!』
二人同時に紡錘がれた『力あることば』。
私達の放ったそれは、赤い光を収束しながら空中庭園へと向かい───そして。
どぐぉおおおーーーんっ!!
凄まじい光と爆発の中、数瞬、空中庭園が見えなくなった。
「この際お願いしますシャブラニグドゥさん……セイルーンを助けて!」
「魔王に祈るなっ!!」
「お前巫女だろっ!?」
「ぅわ〜ん、仕方ないじゃないですかぁっ」
そんなアメリアさん達のやり取りが魔王に聞き届けられたのか。
次の瞬間には、空中庭園は跡形も無く吹き飛んでいた。
「お見事です、二人とも!」
手をかざし、その様子を見ていたゼロスは賛辞の言葉を述べる。
───が。
莫大な竜破斬のエネルギーの余波が、セイルーンの一部分をちょっぴり直撃。
あぁ、やっぱり。
『あぁーーーっ!?』
「ちょっとやり過ぎちゃったかなぁ……」
「魔王に祈るからですよ……」
卒倒するアメリアさん達。
その様子を見ながら、私とリナさんは気まずげにその場に佇んだのだった。
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