センリツ(1/10)

青い空。

白い雲。

輝く太陽。

(きら)めく水面。

そして水着姿のリナさん達。



「ひゃっほ〜っ!」

「気持ち良い〜」



そんなはしゃぐ彼女達をプールサイドで傍観しつつ、私はポツリと呟いた。



「………平和ですねぇ」



───と。

聞こえてくるのはリナさん達の楽しそうな声と、水の跳ねる音。

辺りは私達以外に誰もおらず、他の人達に気兼ねなく使えるし、じりじりとした陽射も水浴びには丁度いい。

殺伐とした日々から離れ、一息つくにはもってこいの状況である。

しかし、パラソルの下でビーチチェアに腰掛けているゼルガディスさんは、そう思っていないのか、ウンザリした顔を隠そうともせずに、誰にともなく問い掛けた。



「いつまでこんな呑気に過ごしているつもりだ?」

「仕方ないだろう、取り引きの相手が現れないんだから」



その傍らで日光浴しているガウリイさんが淡々と答える。

その返答に納得いかなかったゼルガディスさんは、不機嫌を隠しもせずにリナさんへと視線を移した。



「おい、リナ! 商談はどうなってるんだ?」

「夕方からよ、夕方。それまで思いっきり楽しまなくっちゃ〜♪」



───魔族の暗躍の裏に、魔竜王ガーヴがいることを知った私達。

それに対抗出来る手段を探し求めて、西へ東へと奔走した。

そんな中。

今回、取り引き相手が呪文書の手掛かりを見つけたと告げてきたのだ。



「……一刻も早く魔族に対抗する手段を探さなきゃならんと言うのに、コレか」

「まぁまぁ、たまには休息も必要ですよ? ゼルガディスさん」

「そうは言うがな……」

「ところで、ユウは泳がないのか?」



渋るゼルガディスさんの言葉を遮り、ガウリイさんが不思議そうに私を見る。

確かに、この暑さの中泳ぐのは気持ち良さそうだけど……。



「まぁ……着替えるの面倒ですし」

「とか何とか言っちゃって〜。本当は泳げないんじゃないのぉ?」

「リナさん! そんな言い方しちゃ失礼ですよ!」

「そっか、なら仕方ないな」

「まぁ、泳げなくても生きていけるさ」



リナさんの茶々に、何故か私に同情の声が集まる。

……って言うか、カナヅチ決定なんですか……私。



「レイクドラゴンを捕まえる時や、川に投げ出された時に泳いでたじゃないですか私」

「そうだっけ?」

「そうですよ」

「じゃあユウさんも一緒に泳ぎませんか? 涼しいですよ?」

「ありがとうございます。でも私は足だけで十分なので」



微笑みながらお断りの意思を伝えると、アメリアさんは少し寂しそうな顔をした。

申し訳ないと思いつつ、泳ぐ気が無いのもまた事実。

ごめんなさい、と謝るとアメリアさんは「謝る必要はないですよ」と、元気一杯の笑顔で言ってくれた。

そして、両手いっぱいの水を私に向かってすくい上げる。



「でも、これくらいは楽しみましょう?」

「ふふっ、そうですね」



ぱしゃぱしゃと水を掛け合う私達。

するとそれを見ていたリナさんが、きらりと瞳を光らせた。



「なぁに生ぬるい事やってんのよ! こういうのは思いっきり……」

「ちょっ……リナさ……!?」



制止の言葉も何のその。

リナさんは力の限り水をすくい上げた。





ばしゃあっ!



「………………」

「リナさん! やりすぎですよっ!」

「お前なぁ……」

「良いじゃないコレ位。直ぐに乾くって」



笑いながらパタパタと手を振るリナさん。

ぴちょん……と私の髪から水滴がしたたり落ちた。



「ユウさん大丈夫ですか?」

「…… …… ……」

「ぇ?」



うつ向き呟く私に、アメリアさんが聞き返す。

私は顔を上げ、ニッコリ笑うと水面に手を付き、一言だけ告げた。

水へと力を与える言葉───すなわち『力ある言葉』を。



水竜破(シーブラスト)

「な……っ!?」





ざばぁーーーんっ!!



目の前に生み出された大波は、ものの見事にリナさんを飲み込み、彼女の姿を掻き消した。



「ユウさん……やりすぎじゃあ?」

「大丈夫ですよ、きっと」



すぐ側に居て被害を受けなかったアメリアさんに平然と答え、私は髪を絞る。

その横では起き上がったガウリイさんが、プールへと視線を移し、



「お、おい……アレ」

「ん?」



声につられそちらを見れば、肩を震わせ佇むリナさんの姿がそこにあった。

彼女は一歩一歩こちらに近づくと、突然私の足首を掴み、自分の方───つまりプールへと引き込んだ。

完全に気を抜いていた私は、その力に逆らう事が出来ず……。



「ちょっ!?」





ざばぁーーーんっ!



盛大な水しぶきを上げながら、水中へダイブ。

隣には勝ち誇ったリナさんの顔。



「あたしに逆らおうなんて何年早いと思ってんのよ!」

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