青い空。
白い雲。
輝く太陽。
煌めく水面。
そして水着姿のリナさん達。
「ひゃっほ〜っ!」
「気持ち良い〜」
そんなはしゃぐ彼女達をプールサイドで傍観しつつ、私はポツリと呟いた。
「………平和ですねぇ」
───と。
聞こえてくるのはリナさん達の楽しそうな声と、水の跳ねる音。
辺りは私達以外に誰もおらず、他の人達に気兼ねなく使えるし、じりじりとした陽射も水浴びには丁度いい。
殺伐とした日々から離れ、一息つくにはもってこいの状況である。
しかし、パラソルの下でビーチチェアに腰掛けているゼルガディスさんは、そう思っていないのか、ウンザリした顔を隠そうともせずに、誰にともなく問い掛けた。
「いつまでこんな呑気に過ごしているつもりだ?」
「仕方ないだろう、取り引きの相手が現れないんだから」
その傍らで日光浴しているガウリイさんが淡々と答える。
その返答に納得いかなかったゼルガディスさんは、不機嫌を隠しもせずにリナさんへと視線を移した。
「おい、リナ! 商談はどうなってるんだ?」
「夕方からよ、夕方。それまで思いっきり楽しまなくっちゃ〜♪」
───魔族の暗躍の裏に、魔竜王ガーヴがいることを知った私達。
それに対抗出来る手段を探し求めて、西へ東へと奔走した。
そんな中。
今回、取り引き相手が呪文書の手掛かりを見つけたと告げてきたのだ。
「……一刻も早く魔族に対抗する手段を探さなきゃならんと言うのに、コレか」
「まぁまぁ、たまには休息も必要ですよ? ゼルガディスさん」
「そうは言うがな……」
「ところで、ユウは泳がないのか?」
渋るゼルガディスさんの言葉を遮り、ガウリイさんが不思議そうに私を見る。
確かに、この暑さの中泳ぐのは気持ち良さそうだけど……。
「まぁ……着替えるの面倒ですし」
「とか何とか言っちゃって〜。本当は泳げないんじゃないのぉ?」
「リナさん! そんな言い方しちゃ失礼ですよ!」
「そっか、なら仕方ないな」
「まぁ、泳げなくても生きていけるさ」
リナさんの茶々に、何故か私に同情の声が集まる。
……って言うか、カナヅチ決定なんですか……私。
「レイクドラゴンを捕まえる時や、川に投げ出された時に泳いでたじゃないですか私」
「そうだっけ?」
「そうですよ」
「じゃあユウさんも一緒に泳ぎませんか? 涼しいですよ?」
「ありがとうございます。でも私は足だけで十分なので」
微笑みながらお断りの意思を伝えると、アメリアさんは少し寂しそうな顔をした。
申し訳ないと思いつつ、泳ぐ気が無いのもまた事実。
ごめんなさい、と謝るとアメリアさんは「謝る必要はないですよ」と、元気一杯の笑顔で言ってくれた。
そして、両手いっぱいの水を私に向かってすくい上げる。
「でも、これくらいは楽しみましょう?」
「ふふっ、そうですね」
ぱしゃぱしゃと水を掛け合う私達。
するとそれを見ていたリナさんが、きらりと瞳を光らせた。
「なぁに生ぬるい事やってんのよ! こういうのは思いっきり……」
「ちょっ……リナさ……!?」
制止の言葉も何のその。
リナさんは力の限り水をすくい上げた。
ばしゃあっ!
「………………」
「リナさん! やりすぎですよっ!」
「お前なぁ……」
「良いじゃないコレ位。直ぐに乾くって」
笑いながらパタパタと手を振るリナさん。
ぴちょん……と私の髪から水滴がしたたり落ちた。
「ユウさん大丈夫ですか?」
「…… …… ……」
「ぇ?」
うつ向き呟く私に、アメリアさんが聞き返す。
私は顔を上げ、ニッコリ笑うと水面に手を付き、一言だけ告げた。
水へと力を与える言葉───すなわち『力ある言葉』を。
「水竜破」
「な……っ!?」
ざばぁーーーんっ!!
目の前に生み出された大波は、ものの見事にリナさんを飲み込み、彼女の姿を掻き消した。
「ユウさん……やりすぎじゃあ?」
「大丈夫ですよ、きっと」
すぐ側に居て被害を受けなかったアメリアさんに平然と答え、私は髪を絞る。
その横では起き上がったガウリイさんが、プールへと視線を移し、
「お、おい……アレ」
「ん?」
声につられそちらを見れば、肩を震わせ佇むリナさんの姿がそこにあった。
彼女は一歩一歩こちらに近づくと、突然私の足首を掴み、自分の方───つまりプールへと引き込んだ。
完全に気を抜いていた私は、その力に逆らう事が出来ず……。
「ちょっ!?」
ざばぁーーーんっ!
盛大な水しぶきを上げながら、水中へダイブ。
隣には勝ち誇ったリナさんの顔。
「あたしに逆らおうなんて何年早いと思ってんのよ!」
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