「あんたの欲しがっている情報はココにある」
時は夕刻。
目の前に座った取り引き相手は、丸めた紙を懐から取り出しながらそう言った。
あの後、散々遊び倒した私達。
結局水浸しになって水着を着るはめになってしまったが、その分楽しめたし、それはそれで良しとする。
そして今。
私達は取り引き相手と向き合い、交渉の最中。
まぁ、もっぱら交渉するのはリナさんで、私達はただ見ているだけだが……。
「さすがね、ミスター・ボーデン。闇のマーケットを取り仕切るボスだけの事はあるわ。それで? 中身は?」
取り出された紙を見て、不敵に微笑むリナさん。
ボーデンと呼ばれた男は、彼女の問いにスラスラと答え始めた。
「その昔栄えた、幻の古代王朝の遺跡の在りかが印されている地図。聖なる加護の力を得る究極呪文がここに隠されている」
「で? どんな呪文なの?」
「おれの仕事はここまでさ。宝探しは商売じゃない」
言われてリナさんは肩を竦める。
まぁ、情報が入ってきただけでも重畳と言うところだろう。
「ま、いいわ。仕方ないからそれで我慢しておく」
「なら、即金で10万だ」
「ぁあっ!? 冗談でしょっ!? まず1万! 呪文書が本当にあったら、残りの9万払ってあげるわ!」
「ふざけるなっ! こっちは元手が掛かってるんだ。即金で10万払ってもらうぞっ!!」
ボーデンの言葉にいきり立つリナさんだったが、だてにボスと呼ばれている訳じゃないらしく、男も負けていなかった。
怒気をはらんで凄んでみせるボーデン。
けれど、相手はあのリナさんである。
それくらいで怯むはずが無い。
リナさんはボーデンの脅しを意に介さず、ちっちっちっと指を振ってみせた。
「呪文書が無ければ、そんな紙っきれ一文の価値も無いじゃない! 1万出してあげるって言ってんだから、さっさと寄越しなさいよ『タ・コ・お・じ』!」
「うぬぬ……このボーデン様にあんまり舐めた口を叩くなよっ!?」
怒りのその言葉を合図に、彼の取り巻き達が私達へと詰め寄ってくる。
それを見たリナさんは笑みすら浮かべ、
「ほほぅ? 良いわよ。そっちがそのつもりならねぇ……?」
そして次の瞬間。
瞳の奥に危ない光が過った。
「火炎球っ!!」
どごぉーん!
彼女の放った光球は、狙い違わずボーデンとその他複数を黒焦げにした。
ピクピクしているボーデン達。
リナさんは地図を手にすると、代わりと言うようにボーデンの上にお金の入った革袋を放り投る。
「はい、地図の代金。全額で1万」
その言葉を聞いて、ボーデンはガバッと飛び起きた。
「ぜ、全額っ!? 前金じゃあ……」
「ぜ・ん・が・く!」
「ぎゃあぁあああっ!! わかりましたぁっ!!」
闇を取り仕切る男も、『ドラまた』には敵わないらしい。
鬼の形相のリナさんに、ピシャリと言い放たれたミスター・ボーデンは、あえなく引き下がる事になったのだった。
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