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塔に着いたのは陽が上り、辺りが明るくなった頃だった。



「はぁ……やっと着いたぁー」

「結局朝になっちゃいましたね」

「しょうがないでしょ。夜中に来ようったって、あの三人がアレじゃあ……」



先に塔にたどり着いたリナさんとゼロスの声を聞きながら、私は眠たい目を擦り、浮遊(レビテーション)でふわふわと浮きながら頂上を目指す。

ちなみにアメリアさんとマルチナさんは、疲れからその場にへたり込んでいた。



「って……どうしてわたしだけこんな大荷物持たなければいけないんですかっ!?」



不満をもらすアメリアさん。

普段の彼女ならば、この斜面でもリナさん達について歩けただろう。

それが何故、出来なかったのか。

それは彼女が持っている大きな荷物が問題だった。

宿屋で塔に向かう話をしていると、何故か宿屋のおじさんが持たせてくれたのだ。



「そうよっ! わたし達はあんたと違って普通の女の子なんだからぁっ!!」

「誰がじゃっ!!」



マルチナさんの言葉に、リナさんがツノを出す。

だが、次の瞬間には「ま、いいか」と切り替え、彼女は塔の扉へと手を掛けていた。



「まさか朝っぱらから幽霊でもあるまいし。ぱっぱと行ってぱっぱと写本を探してくる! それなら、文句はないでしょう!」



ギギギギ……っと軋む音がして、扉が開かれる。

そこで私達が見たものは……。

───所狭しと並べられた、数々の人形だった。



「ほぉ……? これはまた……」

「流石に不気味ね」



辺りを見渡せば普通の小さな物から、人間大の物まで大小様々な人形が置かれている。

薄暗い中、その人形達がコチラを見てカタカタと揺れ動く光景は、まさに異様だった。



「おや、恐いんですか?」

「……ま、まさか」



そんな状況を面白がり、ゼロスはリナさんにからかいの言葉を掛ける。

そう言われれば強がってしまうのが彼女の性格で。



「でも……鳥肌が♪」



楽しむように笑みを深くしたゼロスは、つつつ……っと、リナさんの首筋を指でなぞった。

───その瞬間。



「ひっ!? いやぁああぁーーーっ!!」

『きゃあぁあああっ!?』

「うわあぁああぁっ!?」



リナさんが悲鳴を上げた事により、アメリアさんとマルチナさんが驚き、更にその声に驚いたガウリイさんまでもが叫び、一目散に塔を飛び出していく。

そんな驚きの連鎖を目の当たりにして、私はやれやれと息をついた。

取り敢えずは、これからの事を考えねばなるまい。

後を追い、私がリナさん達のもとへとたどり着くと、彼女達は地面に手をつき、肩でしている息を整えているところだった。



「……皆さん元気ですねぇ」

「ぜぇ……はぁ……ユウさんは……怖くないんですか?」

「まぁ、一人なら怖かったでしょうけど……」



私以上に怖がるリナさん達を見ると、何故か落ち着いてしまったのだ。

まぁ、眠たくて感覚が鈍くなっている、と言うのもあるかもしれない。



「ちょっとゼロス! アンタが言ってた言い伝えって、一体いつの話よっ!?」

「さて……もう何百年も昔の話かと」



リナさんに引っ張ってココに連れて来られたゼロスは、涼しげにそう答えてみせる。



「それで今なお、あの効果か。考えようによっては当たりかもしれんぞ!」

「それだけ呪いの増幅システムが強力だって事だもんね」



嬉々としたゼルガディスさんにリナさんが頷き、それを聞いていたガウリイさんが珍しく意見を口にする。



「でもよー、それなら塔に入った人間が人形にされるって言う言い伝えもいきてるって事だろう?」

「あぁ、そう言えばそんな話もありましたね」



ゼロス曰く『塔に入った人間が、全てアンを取り返しに来た敵に見えるんでしょうね』との事。

それで人間は人形に替えられてしまうんだとか。



「そう言えば宿屋のおじさんが生きて帰れないとも言ってましたよね……どうします? これから」

「って、アンタ淡々と話を進め過ぎじゃない? ユウ」

「早く帰って寝たいんですよ」

『………………』



私の言葉に固まる一同。

そんな中、ゼルガディスさんが額に汗しつつも、考えを巡らせ、



「も、問題はどうやって人形達に怪しまれずに塔の中で写本を探すかだな」

「それで宿屋のおじさん、こんなもの持たせたのかなぁ?」



彼の言葉にアメリアさんが荷物をといて"ある物"を広げる。

それは数ある中の一つ。

うさぎの着ぐるみだった……───。

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