次にやって来たのは"V"と書かれた扉の前。
階段を駆けのぼる勢いを殺さず、バン!とその扉を開けた先に待っていたものは───……タコだった。
赤く大きな頭に、うねうね動く8本足。
その姿は、どこからどう見ても普通のタコである。
ただ足の先に手袋をはめている事と、喋る事を除いては───。
「ビロ〜ンとなぁ。さぁて、第二の関門ビロビロ〜ン!」
「っく! 今度は一体何をやらせようと言うんだ!」
「ぬふふ。ここでは『ケン』で勝負だ!」
ゼルガディスさんの言葉に、タコが答える。
それを聞いたガウリイさんは不敵に笑い、ゆらりゆらりとクラゲの着ぐるみ姿を揺らしながら前へと数歩踊り出た。
「ふ、剣ならオレの出番だな!」
「ぬふふ、遠慮はしないぞ。そーりゃ!」
タコは足……いや手?
とにもかくにも、手の付いた足を振り上げ───。
「ジャンケン……」
『だぁあっ!?』
その予想外の展開に、私達は思わずひっくり返った。
まさかそんな謎々めいたオチがあろうとは……。
もしかして、この先の関門もこんな感じなんだろうか?
…………なんかそんな気がする。
私はこれからの事に一抹の不安を覚えつつ、溜め息をついた。
そんな中、いち早く立ち直ったリナさんが、よろよろと立ち上がりタコに問う。
「……ちょっと待って。『ケン』って、ジャンケンの事?」
「ふっ、読めたぜ! 大方その8本の手でグー・チョキ・パーを同時に出すつもりなんだろうっ!!」
言ってガウリイさんは、くらげの足の一本を、ビシッとタコに向かって突き付けた。
それに対しリナさんが「うわ、珍しく鋭いっ!!」と、褒める。
一方、戦法を見抜かれたタコはたじたじだった。
そこに一気に付け込むガウリイさん。
「甘いぜ! くらげの方が手の数が多いのだっ!!」
…………否、手じゃなく足でしょ、それは。
と、思うものの……。
それで勝てるなら、この際手だろうが足だろうがどちらでも良い。
ガウリイさんはさっそく手だか足だかを操り、タコへと勝負を挑んだ。
「そぉれ、ジャンケン……」
「……ジャンケン」
───しかし。
勝利を目の前にして油断したのか、調子に乗りすぎたのか。
動かし過ぎたくらげの足は絡まってしまった。
「し、しまったぁ!?」
絡まった足は丸まり床の上に、ぽとりと落ちる。
それを見たタコが嬉々として手を出した。
丸まった足をグーに見立て、ただ手のひらを。
「パー! ビロビロ〜ン! お前の負けビローン!」
「あ゛ぁ……そんなぁ……」
「くらげーーーっ!!」
見たまんまの怒声が響き……───そして。
まばゆい光が発せられた後、ガウリイさんが居た場所には、人形が落ちていた。
無論、それは姿を変えられてしまったガウリイさんである。
何故かゼロスやマルチナさんと違い、くらげの着ぐるみ姿ではあるけど。
とまぁ……それよりも。
「今の、後出しじゃないんですか?」
「う゛っ」
「そうですよ! ジャンケンで後から出すのは卑怯ですっ!!」
私の指摘に、同意したアメリアさんが星の先っぽでビシッとタコを指す。
タコはあたふたと慌てた後に開き直り、逃げるが勝ちと言わんばかりに消えてしまった。
「そんなルールは無いビローン!」
という言葉を残して。
……まぁ、次に進めるなら何でも良いけど。
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