(5/7)

「それ位でやられるものですかあぁぁっ!!」



吠えてリナさんの後ろへと回り込み、腕で首を締め上げるジョー。

───速いっ!?


 
「わたしは並みの魔族と違ってねぇ……不死身なんですよっ!!」



思った以上の俊敏な動きに、気づいてフォーローする間もなく、ごきりと鈍い音がした。



「ぅあぁあっ!!」



リナさんの悲鳴が響く。

ジョーがリナさんの肩を外したのか、はたまた腕を折ったのか。

どちらにせよ、ぼけっとしている場合じゃない。

彼女を投げ飛ばし、痛がるリナさんを見て楽しんでいる魔族の前に立ち塞がり、私は杖を構えた。

チラリと後ろを窺えば、リナさんは自ら呪文を唱え、治療にあたっている。

───ならば。

するべき事は、ただ一つ。

私は時間稼ぎをする為に、目の前の男を睨み牽制した。



「おや、今度は貴女がわたしの相手をして下さるのですか?」



今は一分一秒でも長く、時間を引き延ばさなくては。

馬鹿にした様な言葉を聞きつつ、私の思考は目まぐるしく脳内を行き交う。



「良いでしょう。果たして、その強気がいつまで続くか見届けて差し上げましょう!」



どこまでも上から目線の魔族は、言って先程と同じ攻撃を仕掛けてきた。

コチラに向かって飛び来る、魔力を帯びた2つの光球。

座り込んでいるリナさんを背にしている以上、この場を離れる訳にはいかない。

そんな事をしたら後でリナさんに、何を言われるか。

考えただけでも溜め息ものである。

そんな事を思っている内にも、もちろん攻撃は迫り来て……。

それを防ぐ為に、私は構えてあった杖をクルリと一回転させた。

その動作でまずは一つ目の魔力球を拡散させ、次いで時間差をつけてきた攻撃は、スッと杖先で描いた見えない線で防ぐ。

音もなく虚空にかき消える2つの攻撃。

その瞬間を待って、攻防の合間に唱えておいた術を、ジョーに向かって解き放つ。



覇王雷撃陣(ダイナスト・ブラス)!」



ばぢぃっ!



「やった!」



五芒星の頂点に稲妻が着弾し、ビクンッと身体を震わせるジョーを見て、リナさんから歓声が上がる。

───しかし。



「ふっふっふっ。言ったでしょう? わたしは不死身なんですよ」

「……っ」



術を放つと同時に、私は場所を移動しながら次の呪文を唱え始めた。

ターゲットがリナさんから私に移っている今なら彼女から離れても大丈夫だろうし、その方が防御の面でも都合が良い。

私は男の言葉に耳を貸さず、更に攻撃を重ねた。



海王槍破撃(ダルフ・ストラッシュ)!」



槍の様な衝撃波がジョーを襲い───。



「なるほど。その物怖じしない強い意思は、多大な魔力によって成り立っているのですね」



けれど、ダメージを与えることは叶わなかった。

魔族は訳知り顔で頷くと、コチラに向かって歩み寄る。

あの不気味な笑顔を携えて。



「くっくっくっくっくっ。面白い、実に面白い。益々貴女をわたしの物にしたくなりましたよ」



ぇ゛。

あれって冗談じゃなかったのか。

思った時には、既にジョーは掻き消えていた。



「しま───っ!?」

「ユウっ!!」



そして、次の瞬間。

彼は空間を渡り、出現した。

私の───目の前に。

ジョーはアンと言う人形にしたのと同じように、私のあごに指を掛けると強引に引き寄せ、耳許で囁く。



「どうです? ゼロスなんかやめて、わたしの元へ来ませんか?」



ぞわわっ。

その言葉に、身の毛がよだった。

嫌悪から顔を顰めるも、ジョーは気にせず語り続ける。



「それに人間とは言え、貴女程の力があれば、ガーヴ様もお喜びになるでしょう」

「……魔竜王?」



……そう言えば。

いつかもガーヴはリナさんを仲間にしようと画策した事があったが……。

一体何の為に、力のある者を集めているのだろうか。

仲間になる気は毛頭ないが、その辺の事情は気になるところである。

私は今後の対策も兼ねて探りを入れようと、口を開いた。

<<>>
[ 戻る ]


ALICE+