「ちなみに、魔竜王はどうして力のある者を集めているんですか?」
「さぁて? 何かお考えあっての事でしょうが、力を必要とされていれば、そんな事は宜しいではありませんか」
「…………そうですか」
結局は分からずじまい……か。
少しは進展があるかと期待したのだけれど。
「それでいかがです?」
私が興味を持っていると思ったのか、目の前で笑みを深くするジョー。
しかしながら、私の答えは最初から変わらずノーである。
「私、下っぱ魔族に興味無いですから」
きっぱりハッキリそう告げれば、目の前の顔がぴくっと引きつった。
余裕だった表情に、焦りが混じりはじめる。
「ふふふっ、私が下っぱですって? 貴女の術を食らっても尚、わたしはここに居るというのに」
「でもあなた、本当は不死身じゃないでしょう?」
「…………何故、そう思うのです?」
それは確信にも似た直感だった。
確かに目の前の男は、烈閃槍や、高位魔法である覇王雷撃陣、海王槍破撃まで受けて無事だった。
更に言うならダメージを受けてる様子もない。
でも───違う。
彼は高位魔族とは違う。
それは攻撃の威力だったり、プレッシャーだったり。
様々な物が高位魔族としては劣っている。
これなら前に戦ったカンヅェルの方が何倍も強かったし、強力だった。
そんな高位ですらない魔族が、不死身であるはずがない。
そして何より、高位魔族ではないと決めつけた理由は……。
「計画も知らされていない様な部下が、上層部に居るだなんて思えないですから」
と言うものだった。
しかし、それもあながちハズレではなかったらしい。
彼から余裕が無くなったのが良い証拠である。
「くくくっ……折角、生かしたまま側に置いておこうかと思ったのですが……」
「それはそれは、無用な気遣い痛み入ります」
その挑発めいた理由に、笑みさえ浮かべて佇む魔族。
だが、その目は完全に冷めていた。
流石に焦りを覚え、軽口を叩きながら、私は一歩、また一歩と後退る。
いくら上位魔族ではないとは言え、魔法が効かないのは紛れもない事実。
何か……何かカラクリがあるはずなのだが……。
魔法が効かない以上、他に倒す手を考えつくまで少しでも時間を稼がなければ……。
と、その時。
───とんっ。
と小さな衝撃が背中に伝わり、もう後が無いことを嫌でも知らしめられた。
「ふふふっ、どうやら逃げ道は無くなったようですよ?」
「…………」
魔族は意地悪く笑いながら、佇んでいる。
……一か八か。
魔法が駄目なら───。
私は意を決して魔族に向かって走り出し、手にした杖を振り上げた。
───ひゅっ。
と空が切れ、次の瞬間。
パシッ!
と私の腕は身も蓋もなく魔族に捕らえられる。
……私の腕でどうこう出来るとは思っていなかったが、まぐれや万が一と言うこともある。
しかし、まさかこうもあっさり防がれるとは……。
そのパターンは考えてなかった。
「ふふふっ、気は済みましたか? お嬢さん」
悠長に思考を巡らせていた私に、ジョーは笑みを浮かべながら言う。
私は何とか離れようと腕に力を入れるが、ビクともしない。
むしろ逆に引き寄せられ、そうかと思えば私の身体は投げ飛ばされていた。
だんっ!
「っ……」
「ユウっ!!」
背中から壁にぶつかり、一瞬息が詰まる。
苦しさに涙がにじんだ。
ずるずると壁伝いに崩れ落ちながら、歪む視界のままジョーのいる方へ視線を動かし……その途中。
───ふと。
アンと呼ばれていた人形が、
笑った気がした。
「───ぇ?」
「さて、お遊びはココまでです。貴女がガーヴ様に仕える気がないのは良〜くわかりました」
男は薄笑いを浮かべながら、一歩一歩近づいてくる。
魔力の光を手のひらに生み出して。
身動きの取れない私は、ただそれを眺めていた。
「このまま生かしておけばガーヴ様の邪魔になるかもしれませんし、貴女には死んでもらいます」
「……随分と、まぁ……勝手な言い分、ですね」
仲間にしようとしたり、殺そうとしたり。
「ふふふっ、それが魔族と言うものですよ。お嬢さん」
振り回されるこっちの身にもなって欲しい。
ジョーは私の目の前でピタリと止まると、腕を振り上げる。
「これで終わりだあぁーーーっ!!」
───呪文は間に合わない。
私はただ、ジッと振り下ろされる腕を見つめた。
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