半ば死を覚悟した───その時。
どごぉん!
不意にジョーが私の目の前から消え、気づいた時には先程の私と同じ様に壁に激突していた。
と言っても、その威力は数倍違うが……。
ぶつかっただけで壁がへこみ、崩れているのだ。
その衝撃は計り知れない。
───そして。
それをやらかした本人は笑みを浮かべ、ポリポリと後ろ頭を掻きながら、謝罪を口にする。
「いやぁ、面目ない。すっかりガセネタに騙されちゃったようですね」
「そうよっ! 大体元はと言えばアンタが持ってきた情報が……」
やらかした本人───ゼロスの言葉に、ハッ!?と正気に戻るリナさん。
ヘラヘラと笑っている彼に、彼女は治癒の済んだ肩を回しながら噛みついた。
しかし、相手はあのゼロスである。
リナさんの抗議はあっさりと、いなされてしまう。
「そこでちょっと人形にされてる間に考えたんですけどね」
「って、この期に及んで何をっ!?」
「人形遣いの魔族の事です。そう言えば、以前知り合いだった魔族にいたなぁって」
「……知り合い?」
その単語に引っ掛かりを覚えたらしく、リナさんは訝しげな表情をありありと浮かべていた。
けれど、それも束の間。
「うおおぉーーーっ!!」
雄たけびを上げ襲い来る魔族に私達は視線を奪われる。
だが彼はゼロスの一薙ぎで、またも吹き飛ばされてしまった。
いとも簡単にやってのけるゼロス。
私の苦労って一体……。
ゼロスが人形にされてなかったら、もっと早く片が付いたのに……と思わずにはいられなかった。
そんな私の内心など知る由もないゼロスは、壁に激突して崩れる魔族から視線を外して言う。
「人形のフリして敵の目を欺く、姑息な奴でしてねぇ」
彼の見ている先には、アンと呼ばれていた人形。
……成る程。
こっちが本体だった訳か。
精神生命体である魔族は、力があれば自由に姿形を変えられる。
ゼロスの説明に、カラクリのバレてしまった人形は、可愛らしかった顔を豹変させ襲い来た。
しかし、そうとわかってしまえば何て事はない。
「リナさん!」
「うっしゃあ! 烈閃槍!!」
彼女の放ったそれは、人形遣いへと向かい直撃する。
───その途端。
後ろにいた本体と見せかけた男が、まるで糸を切られた操り人形の様に崩れ落ちた。
「おのれ……ゼロスめっ!」
「さぁ、リナさん。安心して一気に行きましょう!」
「オーケー!」
人形にされたガウリイさん達を抱えながら、リナさんに声をかけるゼロス。
それに彼女は笑顔で応え───そして。
「竜破斬っ!」
リナさんの放った術は、塔ごと魔族を消し去ったのだった。
あとがき
発端───それは事の始まり、糸口、起こり。
発端───それは心の底。
物語は進み、二人の距離を───……?
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