事の始まりはアルテメ塔。
リナさんが竜破斬を放ち、魔族を倒した後まで遡る。
「ま……これで、めでたしめでたしですよね♪」
「めでたしってどこがっ!? 散々馬鹿やらされて、全部アンタの責任なんだよっ!?」
えぐれた大地のその上で。
人形にされていたガウリイさん達も無事に元に戻り、一件落着。
……かと思いきや。
それで治まらなかったのはリナさんである。
彼女はゼロスと向き合い、怒りをぶつけるように声を荒げていた。
対して、ゼロスは反省の『は』の字も無く笑っている。
「いやぁ〜。ですから、ちゃんとリナさん達のピンチには駆けつけたじゃ無いですか」
「一番わからないのはそこだわっ! 何でアンタだけ敵の魔法から抜け出せたのっ!? それに何で魔族に知り合いがいんのよっ!?」
納得いかないとばかりにリナさんが食ってかかると、ゼロスは困ったように眉尻を下げ、「ん〜…」と考える素振りを見せた。
そして───次の瞬間。
「まとめて……」
ちゅ。
「お・わ・び♪」
リナさんの頬にキスをして楽しそうに笑うゼロス。
周りの空気は一瞬にして凍りついた。
やれやれと呆れながら、私はその様子を眺める。
予想だにしなかった彼の行動に、顔を真っ赤に染め動かないリナさん。
それに黙っていなかったのがマルチナさんである。
放心しているリナさんに詰め寄り、眉を吊り上げ何事か叫んでいた。
そんな中。
「おれは自らに問う。おれの存在意義とは何だ? リナの便利なアイテムか? いや、残酷な剣士のはずだ。ちょっと暗い過去があるクールな二枚目で、ちょっぴりお茶目で憎めなくて、そうかと思えば……」
「大丈夫ですって。次はきっと良いことがありますよ、ゼルガディスさん」
騒動に巻き込まれたくなかった私は、今回の傷心者ランキング第一位───ゼルガディスさんの側に歩みより、その肩を叩く。
彼は私の顔を見ると、じっと見つめ、
「ユウ……
お前には言われたくない」
「ひどっ!?」
「酷いのはどっちだ。あっさり見捨てたくせに」
「あれは仕方なかったんですよ。きっと試練か何かだったんです」
「んな訳があるか」
私の言葉に、ゼルガディスさんから即ツッコミが返ってくる。
まぁ、この分なら直ぐに立ち直れるだろう。
私は誤魔化し笑いをしながら、パタパタと手を振った。
「あはは……まぁ、皆無事だったんですし良いじゃないですか」
「お前……いい性格してるよな」
「お誉めに預り光栄です」
「褒めてないんだが」
「私は褒め言葉として受け取りました」
「…………はぁ」
こうなってしまえば居直ったもん勝ちである。
ゼルガディスさんは言葉も無く、溜め息をついた。
私は項垂れる彼から何となく視線を外し……その先に。
コチラを見て佇むゼロスが視界に入る。
その彼の笑顔が、一瞬歪んだ様な気がした。
───しかし。
それは私の思い違いだったのかもしれない。
「ユウさん」
リナさん達から離れ、私に声を掛けてきたゼロスは笑みを浮かべていたのだ。
気のせいだったのだろうか?
そう思う内にも、隣にいたゼルガディスさんの顔は忌々しそうに顰められた。
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