「それよりお前はいつまでそこに座っている気だ?」
「ぇ……? あぁ、何か意表を衝かれて力が抜けちゃって」
ゼルガディスさんに言われ、私は自分が座り込んでいた事に初めて意識が向いた。
そんな間抜けな状態を誤魔化すように笑えば、「……たく」と呆れた視線と右手が差し出される。
「……ほら、つかまれ」
「あ、ありがとうございます」
お言葉に甘え、ゼルガディスさんに支えられながら立ち上がり、
「怪我は無いな?」
「はい、大丈夫です」
微笑んだ後、何だか誤魔化したのがお見通しと言わんばかりのその行為に、ちょっぴり照れくさくなり、火照る顔を隠すように服に付いた砂を払い落とした。
すると突然。
今度は思わぬ方向からグイッと腕を引かれ、私は体勢を崩してしまう。
何とか脚に力を入れて踏みとどまり元凶をたどれば、そこには何とも形容しにくい表情のゼロスの姿。
「……何か?」
「え? あ、いえ……その、今すぐ誤解を解く方法を思いつきまして」
「はぁ、そうですか」
何だかんだ言いつつ私の事を心配してくれたのだろうか?
そう思いつつゼロスに「どんな方法ですか?」と尋ねれば、なぜか胡散臭い笑顔で「試してみます?」と聞き返された。
質問に質問で返すゼロス。
その姿がどうにも信用出来ない。
「……まぁ、誤解が解けるのであれば早いに越した事は無いですけど……」
「どうなさいます?」
「だから、どういった方法なんですか?」
「それは秘密です♪」
「…………」
胡散臭すぎる。
「ま、物は試しでやってみませんか?」
「それをゼロスさんが言いますか」
「手遅れになる前に誤解を解く事をお勧めしますが」
「だから、それを、ゼロスさんが言っちゃうんですか」
呆れつつも、ゼロスが言っている事に一理ある事を認めざるをえない。
どうしようか悩むうち、「決めかねているのなら僕に身を任せてみてはいかがです?」とゼロスがニッコリ微笑んだ。
「ぇ?」
それからの彼の行動は早かった。
私に考える時間を与えぬように肩を掴んできたかと思うと、空いた方の手で顎を持ち上げる。
その突然の行動に私が対応しきれない間に、彼の顔が近づき───次の瞬間。
唇に冷たく柔らかいそれが押し付けられていた。
驚く周りをよそに、彼は私から離れると一言。
「誤解を真実にしちゃえば、誤解じゃなくなりますよ」
そう言って、実に楽しげに笑ってみせたのだった。
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