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それが昼間の事。

いくら人に迷惑をかけたとは言え、たかだか落とし穴。

そんな子供のイタズラ程度で捕まるとは思えない。

まぁ、悪くて厳重注意くらいか……。

そうなると直ぐにでもマルチナさんからの嫌がらせは再開されるだろう。



「……はぁ」



本日何度目とも知れない溜め息。

すると何の前触れもなく、後ろから聞きなれた声が掛けられた。



「溜め息を吐くと幸せが逃げるそうですよ?」



見れば、部屋の中に佇む影一つ。

普段なら何とも思わないその姿も、今だけは私の心を重くする。



「こんな時間に何の用ですか? 諸悪の根元さん」



嫌味を込めたその言葉に、謎の好青年と自らが公言している彼は笑みを崩さず言う。



「色々大変みたいですねぇ」



───と。

まるで他人事のように。

関係ないとでも言う様に。



「そんな事言う為にわざわざ来たんですか?」



呆れた眼差しを向ければ、何事も無かったように微笑む彼。



「いやぁ、最近お会いできませんでしたし、暇だったので遊びに来ちゃいました」

「……そう」



会いに来たと言われ、いつもなら悪い気もしなかっただろう。

……いや、正直に言ってしまえば嬉しかったかもしれない。

でも、今は素直に喜べそうにない。



「お元気にされていましたか?」

「…………ゼロスは元気そうね」

「えぇ、お陰様で。細かい用事も済ませたので、しばらくはまたご一緒できそうです」

「……ふーん」



笑顔で報告する彼に、素っ気ない返事を返す私。

するとゼロスは首を傾げ、不思議そうに問うてきた。



「どうかしたんですか?」

「はい?」

「負の感……いえ、難しい顔をしていらっしゃるのでどうしたのかと」



そう言われ、私は無表情のまま「顔は生まれつきです」と返す。

その答えに彼は一瞬固まり、慌てたような素振りを見せた。



「あの……もしかして怒ってます?」

「……怒らせる様な事でもしたんですか?」



質問に質問で返すと、彼はぽりぽりと頬を掻き、困ったように答える。



「いえ……そんなつもりは……」

「なら怒ってないんじゃないですか」

「ですが……」



彼は言葉を濁し───そして。

何も言わない私に一言。



「……困りましたねぇ」



と小さく呟いた。

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