「……時間はあるんですか?」
「え?」
「他に用事は無いのかと聞いてるんです」
「あ……はい」
私の問いに戸惑いながら答える彼。
その様子を可笑しく思いながらも緩む口許は引き締めたまま、私は部屋に備え付けのテーブルへ向かい、彼に座るように促した。
「あの……?」
「本当は何か話があったんでしょう?」
そう問うと、彼は少し迷ったように視線を巡らし、やがて「えぇ、まぁ」とコクンと一つ頷く。
「……立ち話もなんですから座ってください」
「でも……」
「て言うか目障りだから座りなさい」
「………………はい」
言われるまま椅子に座り、今度は本当に困った顔でコチラを見るゼロス。
対して私は不機嫌を装いながら香茶を入れ、彼の前とその向かい側にカップを置いてから椅子に腰かけた。
「もう少し時間が早ければ下の食堂でミルクを温めてもらえたんですけど」
「あ……いえ、お構いなく……」
「言外にもっと早く来やがれと言ってるんですが」
「…………すみません」
思いのほか素直に謝る彼。
私の口元は歪んだ。
───笑みの形に。
それを隠すようにカップを傾け、「話って何?」と、ゼロスに視線で先を促す。
すると彼は居たたまれなくなったのか、はたまた心の準備が出来ていなかったのか、うつ向き、そして黙り込んでしまった。
私はそれを見て溜め息を吐く。
「何を言いたかったのかは知らないですけど、言えないんだったら……」
「あ……っ」
他の話でもしようかと言う前に、ゼロスは顔を上げ、焦ったように言葉を紡錘ぐ。
それは思いもよらない質問で───。
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