「やりましたよ、ゼルガディスさん。皆の視線は釘付けです!」
小声で嬉しそうに話すアメリアさん。
しかし、この状況を心の底から気に入らない人物が一人。
言わずもがな。
ゼルガディスさんである。
彼は小さく「いやだ……」と呟き、けれど。
二言目はハッキリと嫌悪感をあらわにした。
「嫌だ! おれは帰るっ!!」
「帰るって……根無し草なのにどこに帰るんですか?」
「ぅぐ……と、とにかくおれは絶対に行かないぞ!」
私のツッコミに一瞬たじろぎはしたものの、ゼルガディスさんは断固拒否の姿勢を貫く。
この前は自ら女装しようとしてたのに……。
「まぁまぁ、ゼルちゃん。何拗ねてんのよ? 綺麗だって褒めてんのに」
「そうですよ! 自信もって下さいっ!」
フェミール王国とは逆方向に歩きだしたゼルガディスさんを止めるため、リナさんとアメリアさんが引き留めようとするのだが。
「えぇい、離せっ! こんな格好をするくらいなら死んだ方がマシだっ!!」
『離せ』。
そう言いつつも、そこはやはり男の人。
リナさん達の妨害を、さしたる抵抗も感じさせずに歩みを進める。
「ちょっと、ユウも見てないで手伝ってよ!」
「と、言われましても……」
嫌がる本人を引き留める為には説得が必要である。
さて、どう納得させたもんだか……。
そう思考を巡らしかけたその時。
「きゃあああぁっ!?」
『っ!?』
突如、響き渡った悲鳴に、一気に緊張が走った。
ガサガサと葉擦れの音がする。
その方向に視線をやったと同時に飛び出して来たのは、一人の少女だった。
「助けて! 助けて下さいっ!」
「ギャアアアっ!!」
飛び出した勢いをそのままに、助けを求めゼルガディスさんの元へと駆け寄る彼女。
その少女を追って来たモンスターは武器を振り上げ、彼女へと迫り来た。
が、ゼルガディスさんは慌てる事無く小さく肩を竦めると、ただ一言。
力ある言葉を解き放つ。
「火炎球」
その一発で、敵は呆気なく倒れてしまった。
それはもう、可哀相なくらいに。
戦いとも呼べない戦い。
しかし彼女にとってはそうではなかったらしい。
少女は助かったという安堵感からか、その場で気を失ってしまったのだ───。
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