「好きだな」
「えっ……?」
ポツリと述べた言葉に、ゼロスは目を見開き固まった。
それを見ながら私は言葉を紡ぐ。
「やっぱりいつものゼロスが好きだな、私」
「……あの、その……」
「今の格好にはその話し方の方が良いのかもしれないけど」
「……あ……あぁ。話し方……話し方、ですか……」
「?」
拍子抜け。
その言葉がピッタリくるほどゼロスは脱力していた。
───そんな中。
「ゼロス様ー?」
聞こえてきたマルチナさんの声に、私達は意識をそちらに飛ばす。
声のする方を見れば通りの向こう側に彼女の姿が見てとれた。
「さてと。そろそろ情報集めに戻らなきゃね」
「……あの、一緒に探しませんか?」
「んー? 遠慮しておく。マルチナさんに怨まれたくないから」
今ここで二人きりだったと知れたら、また何をされるか分かったものじゃない。
流石にそれは御免こうむりたい。
「……ですが」
「それともゼロスが私を守ってくれるの?」
言う内にも、彼女がゼロスを探す声が近づいて来ている。
私は困ったように笑いながら、解りきった答えを言った。
「無理でしょ?」
「……あなたが望むなら、僕はユウさんを守りますよ?」
「無理だよ。だってゼロスは今の状況を楽しんでるもの」
「…………」
「出来ないんじゃなくて、しない。だから無理……でしょ?」
「そんな事は……」
「それに……」
乗り気じゃなかったゼルガディスさんの事も気になるしね。
そう言って微笑むと、ゼロスは何も言わず俯いた。
「ゼロス様ーっ?」
「……それじゃあ」
段々近づいてくるマルチナさんから逃げるように、私はゼロスの返事を待たず「またあとでね」と身を翻す。
───が。
踏み出した足は、前に進むことが出来ず後戻りする。
ゼロスに腕を捕まれたのだ。
私は訝しげながら彼を見た。
俯いているゼロスの瞳は窺えないが、その口許は弧を描き、
「ゼロス?」
不審に思った私はそっと彼の名を呼ぶ。
すると、
「そこまで言われちゃあ、僕としても放って置けませんね」
「ぇ……?」
ゼロスはくすっと笑うと、私の手を取ったまま強引に裏路地へと引っ張って行く。
「ちょっ、ゼロス!?」
「しっ」
急な展開について行けず声を上げると、ゼロスは私の唇に人差し指を乗せ言葉を制した。
そしてそれだけでは飽き足らず、壁に押し付け私の行動すらも封じに掛かる。
「ゼロ……」
「静かに……」
「でも……んんっ!?」
反論しかけた言葉。
けれどそれは、ゼロスからの強引な口づけによって吸い込まれ───……。
消えてしまった。
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