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「……どうやら行ったみたいですね」

「……そう……ね」



安堵感から、はぁ……っと深い溜め息を吐くと、ようやく緊張から解放され、正常な思考判断能力が戻ってくる。



「まったく……窒息死するかと思いましたよ」

「……………」



イヤミを込めてゼロスを見上げると、私の顔の両脇に手をついている彼はジッとコチラを見下ろしたまま動かない。

無言のゼロス。

身動きが取れない私は、依然として解かれる事のない腕の檻を不審に思い、そっと彼の名を呼んだ。



「ゼロス……?」



その呼びかけに、ようやく彼は動き出した。

肘を曲げて更に顔を近づけると、瞳を開け、真っ正面から私を見て言う。



「……ユウさんは……」

「……?」

「……ユウさんは僕をどう思ってるんですか?」



───と。

睫毛の長さがわかる程の距離で、真剣な眼差しで。

しかし。

何て答えたら良いかわからず黙っていると、ゼロスは短く息を吐き、「質問をかえましょうか」と言って私に触れるだけのキスをした。



「以前も今回も、キスをした事に対しては、何も言わなかったですよね? どうしてです?」

「どうしてって……」



その事が不思議と言わんばかりに尋ねて来るゼロス。

が、私にしてみればそんな事を聞くゼロスの方が不思議だった。



「だって……挨拶みたいなものでしょう?」

「今回のも挨拶程度だと言うんですか?」

「ぇ、違うの……?」

「…………………………」



私の答えに目の前で固まるゼロス。

それに対し私は自分がおかしな事を言ったのかと、首を傾げた。



「普段から挨拶としてされてたんだけど……」

「……普段から?」

「起きれない朝の習慣でしょ?」

「は?」



呆気に取られた様子のゼロスを見て、私は気まずさに目を反らした。



「この辺では無いのかな? そういう習慣……」

「無いですよね、普通。そんな習慣」

「……そう、なの?」

「はい」

「でも……嘘じゃないよ?」

「えぇ、そうでしょうね」



何だか喋る度にゼロスの声が低くなってる気がするが……。

きっと気のせいではないだろう。

そしてボソリと、



「無性にユウさんを泣かせてやりたいです」

「ぇ゛……」



そんな事を言うゼロスに、私はビクッと身を強張らせたのだった。





















あとがき

口づけの意味。
唇(愛情)=心から大切に想う、あたたかい気持ち。

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